7. 50歳代に多い「示された将来の金額は高すぎないか」というご相談。ファイナンシャルアドバイザー・徳田 椋が伝えたいこと

まとまった資金の運用を考え始めた方から、示された将来の金額をどう受け止めればよいかというご質問をいただくことがあります。よくあるご相談のひとつとして、一般的な形で紹介します。

7.1 50歳代に多いお悩み相談は「示された将来の金額が高すぎるのではないか」

50歳代(ご相談者)
まとまった資金が入る見込みがあり、その運用を考えています。以前に示していただいた将来の金額を見ると、正直なところ高すぎるのではないかと感じています。本当にそこまで増えるものなのか判断がつきませんし、その数字をもとに置いた目標額のほうも、今のうちに考え直したほうがよいのか迷っています。

50歳代の方から、こうしたご相談をいただくことは少なくありません。示された数字そのものを疑っているというより、その数字がどんな前提の上に成り立っているのかを確かめる手立てがない、という状態です。

7.2 【ファイナンシャルアドバイザー・徳田 椋が回答】数字の大きさより、前提の置き方を確かめる

徳田 椋
私がお客様との相談の中で、資産運用をする「目的」を明確にすることが大切だと必ずお伝えしています。将来の必要額を数字で確認し、現状から逆算して考えることで必要な金額や相性の良い金融商品が自ずと分かってきます。お客様一人一人、お考えや資産状況は異なります。「金額が高すぎる」と数字だけで見るのではなく、何故この数字になったのかの前提条件を確認してみることで、より現実的な数字に見直してあげるのもいいかもしれませんね。

7.3 ポイント1:示された将来の金額は、前提の置き方で大きく動く

将来の金額は、想定した利回り・積み立てる期間・毎月の金額といった前提から計算された見通しです。前提のどれかひとつが変わるだけで、示される金額は大きく動きます。ですから、金額の大小だけを見比べても、それが自分にとって現実的かどうかの判断はつきません。相談の場では、まず「その数字はどの前提から出ているのか」を一緒に確かめるところから始めることが少なくありません。前提を書き出してみると、大きく見えていた金額の理由が見えてきます。

7.4 ポイント2:高すぎる利回りの前提は、現実的とはいえない

将来の金額が実際より大きく見えるときは、想定した利回りが高めに置かれていることがあります。運用には価格変動リスクがあり、途中で積立元本を下回る期間が生じることもあります。長い年月にわたって高い利回りが続くという置き方は、現実的とはいいにくい面があります。落ち着いた水準の利回りに置き直して同じ条件で計算し直すと、見通しの金額は下がります。それでも、高い前提のまま進めるより、そちらのほうが途中で計画そのものが揺らぎにくいと感じています。

7.5 ポイント3:現実的な水準に置き直せば、目標額のほうも見直せる

前提を置き直した結果、当初の目標額に届かない見通しになることもあります。そのときは、目標額を見直すか、期間を延ばすか、毎月の金額を調整するか、といった選択肢が出てきます。どれを選ぶかはご事情によりますし、複数を組み合わせる形もあります。目標額を動かすこと自体は、これまでの計画のつくり方が誤っていたことを意味しません。目標額はもともと、そのときの前提から逆算した数字です。前提を確かめて置き直した数字のほうが、続けやすい計画になります。まとまった資金の扱いについても、一度にすべてを同じ形にしなければならないわけではなく、元本の安定を優先する部分と、値動きを受け入れる部分に分けて考える方法もあります。

必要な金額も、無理のない進め方も、一人ひとりの状況によって変わります。判断に迷う場面では、置かれている前提を書き出したうえで専門家に相談するという進め方もあります。

8. まとめにかえて

2026年度に65歳になる人のライフコース別の年金月額は、最も低い類型で月6万円台、最も高い類型で月17万円台でした。すでに受け取っている人の平均は、厚生年金が月15万円台、国民年金が月5万円台です。同じ制度のなかでも、加入期間と現役時代の収入によって金額が広い範囲に散らばっています。

一覧表は、老後の収入の土台がどのあたりにあるかを教えてくれます。そして、その土台の高さも、年金額の改定や働き方の変化によって年単位で動いていきます。土台が動けば、上に載せる目標額も動くのが自然です。

記事のなかで示した試算は、想定利回りを一定と置いた目安です。運用の成果は市場環境によって変動し、積立元本を下回ることもあります。10年目に毎月の金額を1万円変えた場合の差が約226万円という数字も、前提が変われば違う結果になります。数字そのものより、毎月の金額・期間・目標額の3つがどう連動しているかの見取り図として使っていただければと思います。

必要な金額は、住まいの形、働き方、健康面の備えによって一人ひとり異なります。まずはねんきん定期便やねんきんネットでご自身の見込み額を確認するところから始めて、判断に迷う場面では専門家に相談するという進め方もあります。なお、制度や税制の取り扱いは改定されることがあるため、手続きに関わる部分は関連する窓口に確認のうえで進めてください。

参考資料

徳田 椋