4. 今後の投資論点と潜むリスク
一方で、株価が期待先行で上昇しているからこそ、投資家が冷静に見極めるべき論点やリスクも存在します。最大の中長期的な論点は「製品ミックス(販売する製品の構成比率)の変化」です。
泉田氏は、光半導体の売上が伸びること自体はポジティブに評価しつつも、それが利益にどう結びつくかを注視すべきだと警鐘を鳴らします。
「成長はするけど利益あんまり出ませんってなると、今はこの瞬間開発中のものとかあったんでいいんだけど、時間経った時に既存の事業と同じように収益性出ますかっていうのは株主に聞かれると思う」
現在、同社が高い利益を出せているのは、既存製品で圧倒的なシェアを持っているからです。今後、光半導体が事業の柱へと育っていく過程で、既存事業と同じような高い利益率を維持できるのか。
「株主がチェックするとしたら、光半導体のシェアが増えるとともにこの利益率が減ってないかっていうところは要チェックポイントになるわけです」
売上の成長だけでなく、利益率の推移を確認し続けることが投資判断の鍵となります。
4.1 既存事業の成長懸念とEV向けの下方修正
また、光半導体以外の事業にも懸念材料があります。スマートフォンやノートPC向け製品は、市場の成熟により今後の大幅な需要増は見込みづらい状況です。
さらに見逃せないのが、自動車向け事業の下方修正です。中期経営計画の見直しにおいて、自動車向け事業の2028年度売上目標は、当初の300億円から245億円へと引き下げられました。これは世界的なEV(電気自動車)シフトの鈍化が影響しています。
光半導体への大型成長投資による先行負担もあり、2027年3月期は当期純利益で減益が予想されています。
もしデータセンター向けの成長シナリオという前提が崩れた場合、株価が大きく下振れするリスクがあることは常に意識しておく必要があります。
4.2 投資家が意識すべき「連想ゲーム」
こうしたEV鈍化による下方修正のニュースに触れた際、泉田氏は投資家としての重要な思考法を提示します。
「株式投資って、どっかが数字をバーンって出したらその企業だけを調べるんじゃなくて、ここで影響あったことは他にどこに影響があるんだって見つけに行く。その連想ゲームをするっていうのがすごい大事」
例えば、自動車メーカーがEV計画を見直したというニュースがあれば、それは自動車メーカーの株価だけでなく、そこに部品を供給しているデクセリアルズのような企業の業績計画にも波及します。
逆に、AIやデータセンター関連の投資が拡大しているというニュースがあれば、サーバー用の部品を作る他の電子部品メーカーにも恩恵が及ぶと想像を広げることができます。
デクセリアルズの決算と株価の動きは、目の前の数字だけでなく、社会の構造変化やサプライチェーン全体を見渡す「連想ゲーム」の重要性を私たちに教えてくれています。
※本記事は決算資料および動画内の解説をもとにした情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資に関する最終的な判断は、ご自身の責任において行ってください。
参考資料
- デクセリアルズ株式会社「2026年3月期 決算短信」
- デクセリアルズ株式会社「2026年3月期 決算説明会資料」
- デクセリアルズ株式会社「2026年3月期 決算説明会」(2026年5月14日)
- デクセリアルズ株式会社「中期経営計画『進化の実現』リフレッシュ」(2026年5月13日)
- YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
著者
金融・経済YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
「イズミダイズム」は、株式会社モニクルリサーチが運営する金融・経済YouTubeチャンネルです。フィデリティ投信や日本生命でポートフォリオマネージャーや証券アナリストとしての勤務経験のある元機関投資家の泉田良輔が、プロの視点で金融や経済に関する様々なニュースの解説や、資産形成に役立つトピックをお届けします。新NISAの開始やインフレを背景に、個人の資産運用への関心が高まる中、機関投資家と個人投資家の「視点の違い」や、経済ニュースの裏側にある「構造」をロジカルに解説します。(最新更新日:2026年1月30日)
監修者
株式会社モニクルリサーチ
代表取締役/日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。その他に株式会社モニクル取締役COO、株式会社モニクルフィナンシャル取締役COOも務める。LIMO&ファイナンス編集長。東京科学大学大学院非常勤講師。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了(同研究科最優秀賞受賞)
1. 経歴
2013年に株式会社ナビゲータープラットフォーム(現:株式会社モニクルリサーチ)を原田慎司(現同社取締役)らとともに共同創業。2013年に個人投資家向け金融経済メディア「Longine(ロンジン)」を立ち上げ、編集長に就任。Longineの立ち上げの経緯はBloombergにおいて「体力勝負アナリスト辞めます、元外資マン個人に長期投資指南」として掲載され大きな反響を呼ぶ。投資情報のサブスクモデルを確立する。その後、株初心者向けネットメディア「株1」、2015年にはくらしとお金の経済メディア「LIMO」の前身となる「投信1」を立ち上げる。2026年6月に専門家と実務家が情報発信をする金融経済ニュースサイト「LIMO&ファイナンス」を立ち上げ編集長に就任。
それ以前は、日本生命・国際投資部で外国株式ファンドマネージャー、フィデリティ投信・調査部や運用部にて10年に渡ってインターネット、電機(半導体・民生・産業エレクトロニクス)、機械(ロボットやセンサー企業中心)といったテクノロジーセクターの証券アナリストや中小型株ファンドのアシスタント・ポートフォリオ・マネージャー(最年少で就任)として従事。
2. 専門・研究領域
慶応義塾大学商学部卒業。国際金融及びコーポレート・ガバナンスを専攻。アジア通貨危機、昭和金融恐慌などの金融パニックのメカニズムを金融政策や金融機関への規制の観点から研究。それらの内容は「昭和金融恐慌からの教訓 平成恐慌になにをどう生かすべきか」(三田商学研究学生論文集)として発表。
3. 著書
・『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資』(ダイヤモンド社)
・『テクノロジーがすべてを塗り変える産業地図』(クロスメディア・パブリッシング)
・『銀行はこれからどうなるのか』(クロスメディア・パブリッシング)
・『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』(KADOKAWA)
・『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』(日本経済新聞出版社)
4. 寄稿や講演他
「日経BizGate」での連載「泉田良輔の新・産業鳥瞰図」や「現代ビジネス」、「東洋経済オンライン」、「プレジデント」などへの寄稿や対談も多数。対談記事例としては「【未来予想】ブロックチェーン革命が、「半沢直樹」の世界に終わりを告げる」や「【未来予想】アマゾンとビットコインが、次世代の「銀行」になる理由」(いずれもNewsPicks)、「米独に遅れる日本の自動運転、自動車も電機の二の舞に?」(週刊ダイヤモンド)。海外ジャーナリストからインタビューされることも多く、Financial TimesやThe Economist、Bloombergにおいて自動車や金融業界についての国内外産業動向コメントも発信している。
講演会や動画での情報発信も盛んに行っており、NewsPicksのTHE UPDATE、日経ビジネススクール、慶應丸の内キャンパス、慶應義塾SDM、アカデミーヒルズなどでも講義を行う。またNewsPicksのNewSchoolではプロジェクトリーダーとして「本当に初心者のための資産運用」を開催。
最終更新日:2026年6月26日