通帳に記帳して、前回と年金振込額が違っていることに戸惑った経験はないでしょうか。

2026年の次の年金支給日は10月15日(木)です。10月は、年金から差し引かれる税金や保険料の計算方法が入れ替わる月にあたります。

この記事では、10月に振込額が動く理由を2つに分けて整理したうえで、厚生労働省の最新統計から60歳代から90歳以上までの平均月額を見ていきます。

※本記事は一部「【2026年最新版】老齢年金一覧表「60歳代・70歳代・80歳代・90歳以上」の平均年金月額はいくら?手取りのリアルと5つの公的給付金」を引用のもと執筆しています。

1. 10月から変わる「年金の手取り額」この記事の3つのポイント

  •  10月15日の支給分では、住民税や社会保険料の天引きが「仮徴収」から「本徴収」へ移り、差し引かれる金額が動く
  •  65歳以上70歳未満で働く人は在職定時改定の対象になるが、増えた分が口座に入るのは12月15日
  •  令和6年度の平均月額は、65歳以降の厚生年金が14万円台から16万円台、国民年金は5万円台から6万円台

2. 10月から「年金の手取り額」が増えるのはこんな人

年度替わりでも年明けでもない10月に、振込額が動くのはなぜでしょうか。

10月15日の支給分で入れ替わるのは、年金から差し引かれる税金と保険料の金額です。まずはその計算方法から見ていきましょう。

2.1 10月15日の支給分から天引き額が「本徴収」に切り替わります

公的年金からは、個人住民税、国民健康保険料、後期高齢者医療保険料、介護保険料が差し引かれています。この仕組みを特別徴収と呼びます。

差し引かれる金額は年度を通じて一定だと思われがちですが、実際には年度の前半と後半で別の計算方法が使われています。

年金天引きの仮徴収と本徴収のしくみ1/10

年金天引きの仮徴収と本徴収のしくみ

出所:厚生労働省「保険料(税)の特別徴収」

前提として、住民税も社会保険料も前年の所得を計算のもとにします。ところが、その年額が固まるのは6月から7月ごろです。

年度前半にあたる4月・6月・8月の支給分は、まだ年額が出そろっていません。そこで前年度2月と同じ額をとりあえず差し引いているのです。これが仮徴収です。

年額が固まったあとは、そこから仮徴収で先に引いた分を除き、残りを年度後半の支給回数に割り振ります。こちらが本徴収です。

多くの自治体では10月の支給分から本徴収が始まるので、通帳を見て変化に気づく人が出てきます。

なお、仮徴収の額をならして年間の負担を平準化する自治体もありますので、切り替わり方は住んでいる地域によって違うこともあります。

2.2 手取りが増えるのは前年より所得が下がった人です

本徴収に移ったときに差し引かれる額が軽くなるのは、前年の所得が前々年を下回っていた人です。

前々年に退職金を受け取った方や、不動産を手放して大きな所得が立った方が、前年は年金収入だけに戻ったというケースなども該当するでしょう。

なお、仮徴収の合計が確定した年額を上回っていた場合は、本徴収での天引きはありません。納めすぎた分は過誤納金として、あとから還付の対象になります。

もちろん逆の動きもあります。前年の所得が伸びていれば10月から差し引かれる額は重くなりますので、手取りが増える人ばかりではありません。

3. 働きながら年金を受け取る人は「年金額そのもの」が10月分から増えます

ここまでは年金から差し引かれる側の話でした。年金の額面そのものが上がる仕組みも、10月には用意されています。

ただし口座に振り込まれるタイミングがずれますので、そこを取り違えないようにしましょう。

3.1 在職定時改定による増額は12月15日の支給分に反映

額面が上がる代表例が、令和4年4月にスタートした在職定時改定です。

在職定時改定制度のイメージ2/10

在職定時改定制度のイメージ

出所:日本年金機構「令和4年4月から在職定時改定制度が導入されました」

対象になるのは、65歳以上70歳未満で厚生年金に加入しながら老齢厚生年金を受け取っている人です。

毎年9月1日を基準日とし、前年9月から当年8月までの被保険者期間を年金額に足したうえで、10月分の年金から改定されます。

退職を待たずに、働いた成果を早めに年金額へ反映させることがこの制度のねらいです。

気をつけたいのが支給される月です。年金は偶数月に前2カ月分をまとめて受け取りますので、10月分が口座に入るのは12月15日になります。

つまり10月15日の振込額には、在職定時改定による増額はまだ乗っていません。

また、額面が上がれば所得税や翌年度の住民税、保険料の計算にも響くことがあります。増えた分がそのまま手元に残るとは限りません。

3.2 2026年度から在職老齢年金の「支給停止調整額」は65万円に

働きながら受け取る人には、2026年度にもうひとつ変更がありました。

在職老齢年金は、老齢厚生年金の基本月額と総報酬月額相当額を足した額が基準を超えると、年金の一部あるいは全部が止まる仕組みです。

その基準となる支給停止調整額が、令和8年4月から月51万円より「65万円」へ引き上げられました。

日本年金機構は、働き続けたい高齢者の活躍を後押しし、より働きやすい仕組みにすることが今回の見直しのねらいだと説明しています。

これまで支給が止まっていた人のなかには、2026年度から受け取れるようになった方もいます。

ただし年金と給与を合わせた収入が増えれば、翌年度の税額や保険料も上がることがあります。手取りで見たときにどうなるかを合わせて確かめておきましょう。

太田 彩子
10月15日に動くのは差し引かれる金額、12月15日に動くのは年金額そのものです。窓口でも混同されやすいところでしたので、切り分けて見ておくと振込額の変化を追いやすくなります。

4. 【厚生年金】60歳代・70歳代・80歳代・90歳以上「年金の平均月額一覧表」

では、いまのシニアはどれくらいの年金を受け取っているのでしょうか。

厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」から、60歳から90歳以上までの平均年金月額を年齢ごとに追っていきます。

先に厚生年金です。なお、ここでの金額には国民年金部分も含まれます。

4.1 【厚生年金一覧表】60歳代

60歳代は、前半と後半で水準がはっきり分かれます。

60歳から64歳までは特別支給の老齢厚生年金や繰上げ受給の人が中心となるため、10万円前後にとどまります。

【厚生年金】60歳代(60〜69歳)の平均年金月額3/10

【厚生年金】60歳代の年金額

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

  • 60歳:厚生年金9万9664円
  • 61歳:厚生年金10万4455円
  • 62歳:厚生年金10万9323円
  • 63歳:厚生年金6万8758円
  • 64歳:厚生年金8万3901円
  • 65歳:厚生年金14万9862円
  • 66歳:厚生年金15万2378円
  • 67歳:厚生年金15万2356円
  • 68歳:厚生年金15万2709円
  • 69歳:厚生年金15万1284円

65歳を境に15万円前後へ上がり、そこから69歳までは大きな動きがありません。

4.2 【厚生年金一覧表】70歳代

70歳代に入っても、水準は60歳代後半とほとんど変わりません。

【厚生年金】70歳代(70〜79歳)の平均年金月額4/10

【厚生年金】70歳代の年金額

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

  • 70歳:厚生年金15万455円
  • 71歳:厚生年金14万8371円
  • 72歳:厚生年金14万6858円
  • 73歳:厚生年金14万5583円
  • 74歳:厚生年金14万7774円
  • 75歳:厚生年金15万1410円
  • 76歳:厚生年金15万1241円
  • 77歳:厚生年金15万962円
  • 78歳:厚生年金15万862円
  • 79歳:厚生年金15万3115円

14万円台から15万円台の間を行き来しており、目立った増減は見当たりません。落ち着いた金額が続く年代といえるでしょう。

4.3 【厚生年金一覧表】80歳代

80歳代は、年齢が上がるほど金額も上がっていきます。

【厚生年金】80歳代(80〜89歳)の平均年金月額5/10

【厚生年金】80歳代の年金額

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

  • 80歳:厚生年金15万3729円
  • 81歳:厚生年金15万5460円
  • 82歳:厚生年金15万7744円
  • 83歳:厚生年金15万9994円
  • 84歳:厚生年金16万2555円
  • 85歳:厚生年金16万3947円
  • 86歳:厚生年金16万5577円
  • 87歳:厚生年金16万5557円
  • 88歳:厚生年金16万6200円
  • 89歳:厚生年金16万6767円

80歳の15万円台から、89歳では16万円台後半まで届きます。現役時代の賃金水準や加入期間の違いが、世代ごとの差として表れているとみられます。

4.4 【厚生年金一覧表】90歳以上

90歳以上をひとまとめにすると、80歳代後半と近い水準に落ち着きます。

【厚生年金】90歳以上の平均年金月額6/10

【厚生年金】90歳以上の年金額

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

  • 90歳以上:厚生年金16万4027円

※65歳未満の厚生年金受給者には、特別支給の老齢厚生年金の定額部分について支給開始年齢が引き上げられた影響で、報酬比例部分だけを受け取っている人も含まれます。

老齢年金を受け取り始めるのは原則65歳からです。その65歳以降で区切ると、厚生年金の平均月額は14万円台から16万円台に収まっていました。

5. 【国民年金】60歳代・70歳代・80歳代・90歳以上「年金の平均月額一覧表」

次は国民年金です。同じ厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」から確認していきましょう。

5.1 【国民年金一覧表】60歳代

厚生年金と同じように、65歳の前後で段差が生まれます。

60歳から64歳までは繰上げ受給を選んだ人だけが対象となるため、4万円台後半にとどまります。

【国民年金】60歳代(60〜69歳)の平均年金月額7/10

【国民年金】60歳代の年金額

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

  • 60歳:国民年金4万5186円
  • 61歳:国民年金4万6371円
  • 62歳:国民年金4万7784円
  • 63歳:国民年金4万7258円
  • 64歳:国民年金4万7896円
  • 65歳:国民年金6万1240円
  • 66歳:国民年金6万1369円
  • 67歳:国民年金6万1345円
  • 68歳:国民年金6万1293円
  • 69歳:国民年金6万978円

65歳になると6万円台へ乗り、69歳までほぼ横ばいで推移します。

5.2 【国民年金一覧表】70歳代

70歳代は、年齢が上がるにつれて金額がじわじわと下がります。

【国民年金】70歳代(70〜79歳)の平均年金月額8/10

【国民年金】70歳代の年金額

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

  • 70歳:国民年金6万1011円
  • 71歳:国民年金6万770円
  • 72歳:国民年金6万234円
  • 73歳:国民年金6万32円
  • 74歳:国民年金5万9813円
  • 75歳:国民年金5万9659円
  • 76歳:国民年金5万9555円
  • 77歳:国民年金5万9349円
  • 78歳:国民年金5万9124円
  • 79歳:国民年金5万8676円

70歳の6万円台前半から、79歳では5万円台後半まで下がります。とはいえ1年ごとの差はわずかで、急に落ち込むわけではありません。

5.3 【国民年金一覧表】80歳代

80歳代は5万円台後半に固まり、年代を通してほとんど動きません。

【国民年金】80歳代(80〜89歳)の平均年金月額9/10

【国民年金】80歳代の年金額

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

  • 80歳:国民年金5万8623円
  • 81歳:国民年金5万8269円
  • 82歳:国民年金5万8003円
  • 83歳:国民年金5万7857円
  • 84歳:国民年金5万9675円
  • 85歳:国民年金5万9425円
  • 86歳:国民年金5万9228円
  • 87歳:国民年金5万9204円
  • 88歳:国民年金5万8756円
  • 89歳:国民年金5万8572円

84歳のあたりで少し持ち直しますが、全体としては横ばいとみてよいでしょう。

5.4 【国民年金一覧表】90歳以上

90歳以上は5万円台半ばとなり、80歳代よりわずかに低くなります。

【国民年金】90歳以上の平均年金月額10/10

【国民年金】90歳以上の年金額

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

  • 90歳以上:国民年金5万5633円

※65歳未満で国民年金を受け取っている人は、繰上げ受給を選んだ人です。

65歳以降の国民年金は、どの年齢でも5万円台から6万円台に収まりました。20歳から60歳までの40年間すべて保険料を納めて満額となる仕組みですので、免除や未納の期間があるとその分だけ下がります。

太田 彩子
一覧表の金額は全国を平らにならした数字です。同じ年齢でも加入していた期間や働き方で差が出ますので、自分の金額は「ねんきん定期便」やねんきんネットで確かめておきましょう。