老後は年金だけで暮らすもの、というイメージがあるかもしれません。実際には、年金が総所得のすべてを占める高齢者世帯は41.3%で、半数に届きません。

本記事では、高齢者世帯が年金以外にどのような収入を得ているのかを確認したうえで、厚生年金・国民年金の平均受給額と受給額の分布を見ていきます。

徳田 椋
老後を支える年金は大きな柱ですが、実際に暮らしている世帯の約6割は、年金以外の収入も持っています。働いて得る収入、企業年金、個人年金、資産からの収入など様々です。この柱を何本持てるかが、老後の安定を左右します。データを見ながら考えていきましょう。

1. 来月支給日の公的年金は「国民年金と厚生年金」の2階建て

日本の公的年金制度は「2階建て」1/4

厚生年金と国民年金の仕組み

出所:日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」等を参考にLIMO編集部作成

1.1 国民年金(1階部分)

  • 加入対象:原則として、日本に住む20歳以上から60歳未満の全員
  • 年金保険料:全員一律(※1)
  • 老後の受給額:40年間(480カ月)欠かさず納めれば満額受給(※2)
  • 被保険者:第1号~第3号(※3)

※1 国民年金保険料の月額:2026年度 1万7920円
※2 国民年金(老齢基礎年金)の月額:2026年度 7万608円
※3 第1号被保険者は農業者・自営業者・学生・無職の人など、第2号被保険者は厚生年金の加入者、第3号被保険者は、第2号被保険者に扶養されている配偶者

1.2 厚生年金(2階部分)

  • 加入対象:会社員や公務員、またパート・アルバイトで特定適用事業所(※4)で働き一定要件を満たした人が、国民年金に上乗せで加入
  • 年金保険料:収入に応じて決まる報酬比例制(※5)
  • 老後の受給額:年金加入期間や納付済保険料によって、個人差が出る
  • 被保険者:第1号~第4号(※6)

※4 特定適用事業所:1年のうち6カ月間以上、適用事業所の厚生年金保険の被保険者(短時間労働者は含まない、共済組合員を含む)の総数が51人以上となることが見込まれる企業など
※5 保険料額は標準報酬月額(上限65万円)、標準賞与額(上限150万円)に保険料率をかけて計算される

国民年金の保険料は全員一律ですが、厚生年金は収入に応じて決まります。この違いが、老後に受け取る金額の個人差につながります。

2. 年金収入のみで暮らす高齢者世帯は4割以上?

厚生労働省「2025(令和7)年 国民生活基礎調査の概況」によると、公的年金・恩給が総所得の100%を占める世帯は41.3%でした。裏を返せば、残りの58.7%は年金以外の収入も得ながら暮らしていることになります。

公的年金・恩給が総所得に占める割合の内訳を見ると、「80〜100%未満」が17.1%、「60〜80%未満」が14.1%、「40〜60%未満」が13.6%、「20〜40%未満」が9.7%、「20%未満」が4.2%です。

年金以外の収入としては、働いて得る収入のほか、企業年金や個人年金、資産運用による収入などが挙げられます。公的年金を軸としながら、複数の収入源を組み合わせて暮らしている世帯が約6割を占めているということです。

老後の生活を考えるときに、年金の平均受給額だけを見ても足りない理由がここにあります。年金以外の収入と、毎月の支出まで含めて確認する必要があります。

3. 厚生年金の平均は15万289円、国民年金は5万9310円

では、公的年金を受け取っている人は実際にどれくらいの金額を受給しているのでしょうか。厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」から確認します。

※この記事で紹介する厚生年金額は、会社員など民間企業に勤務していた人が受け取る「厚生年金保険(第1号)」で、国民年金(老齢基礎年金)を含んだ金額です。

厚生年金・国民年金の平均年金月額(2024年度末現在)3/4

厚生年金・国民年金の平均年金月額

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」

3.1 厚生年金の平均年金月額

  • 男女全体:15万289円
  • 男性:16万9967円
  • 女性:11万1413円

3.2 国民年金の平均年金月額

  • 男女全体:5万9310円
  • 男性:6万1595円
  • 女性:5万7582円

国民年金は保険料が一律のため、受給額の差も小さく、男性が6万円台、女性が5万円台にとどまります。この制度だけで月10万円以上を受け取ることは、現実的にはほとんどありません。

一方の厚生年金は、加入期間と現役時代の収入で保険料が決まるため、受給額にも大きな個人差が生まれます。世帯のなかに月20万円以上を受け取る人がいれば生活費の多くをまかなえる可能性がありますが、国民年金のみの場合は難しいケースが少なくありません。