3. 雇用保険改正により退職者が続出する理由
今回の雇用保険改正による問題点として「中途退職者の増加」が挙げられます。
今回の雇用保険改正では、自己都合離職者の給付制限期間の緩和や教育訓練給付の拡充などに重きを置いているためです。
教育訓練給付の拡充などにより、労働者は雇用保険による公的支援を受けながら転職でのキャリアアップを実現できます。
しかし、企業にとっては転職者が出るたびに人員補充を考えなければなりません。
特に、今回の雇用保険改正では基本手当の給付制限の緩和による影響は必至です。
基本手当が支給されるまでの期間が短くなれば、従業員は会社を辞めても生活が破綻しにくくなります。失業時の不安感が幾分か和らぐため、退職を実行に移しやすくなるのです。
厚生労働省の「令和2年転職者実態調査」によれば、調査に回答した9149事業所のうち、33%の事業所に転職者がいるとの結果が出ています。
また、転職者5530人のうち、53.4%が転職先に満足していると回答しています。自分の望むキャリアを目指すための退職は、今後も増加すると考えられるでしょう。
企業としては、雇用保険の適用拡大による保険料の負担増に加えて、転職による退職者の人員補充も考慮する必要があります。
雇用保険改正までは、1〜4年の猶予があるため、施行までに対策を練っておく必要があるでしょう。
4. まとめにかえて
今回の雇用保険の改正は、より時代に即した内容となりました。
より多くの人が基本手当を受けられるようになったり、雇用保険の加入対象となったりすることが予想されます。
一方で、保険料の負担増加や盛んな転職による退職者の増加など、企業にとっては多くの課題が与えられる改正になりました。
改正法が施行されるまでの間で、十分な対策を考えておきたいところです。
多くの人が自分の望むキャリアやライフプランを歩めるよう、雇用保険は今後も重要な役割を担うこととなるでしょう。
改正法施行後の加入者数や転職者数は、今後も注視していく必要がありそうです。
参考資料
- 厚生労働省「雇用保険法等の一部を改正する法律(令和6年法律第26号)の概要」
- 厚生労働省「令和4年度「能力開発基本調査」の結果を公表します」
- 厚生労働省「令和4年度「能力開発基本調査」 調査結果の概要」
- 厚生労働省「「令和4年度雇用均等基本調査」結果を公表します~女性の管理職割合や育児休業取得率などに関する状況の公表~」
- 厚生労働省「育児休業給付の内容と支給申請手続」
- 厚生労働省「令和2年転職者実態調査の概況」
- 厚生労働省「令和2年転職者実態調査の概況 転職者の状況」
- 厚生労働省「令和2年転職者実態調査の概況 転職について」
石上 ユウキ