4. 【背景】地方公共団体の基幹業務システムの統一・標準化が進んでいる
ここからは、なぜシステム更改が年金の審査に関わるのかを見ていきます。
日本年金機構の公表文は、システム更改の背景として地方公共団体の基幹業務システムの統一・標準化を挙げています。全国の市区町村がそれぞれ独自に構築してきたシステムを、共通の仕様にそろえていく取り組みです。
4.1 標準化の対象は20事務。住民基本台帳と個人住民税を含む
対象になる業務は政令で決められています。
デジタル庁によると、標準化対象事務は現時点で20の事務が政令で指定されています。その中に住民基本台帳と個人住民税が含まれており、ほかに固定資産税、国民健康保険、後期高齢者医療、介護保険、児童手当なども対象です。
住民基本台帳は住民票情報、個人住民税は所得情報に対応します。今回の公表で名前が挙がった2つの情報が、どちらも標準化の対象業務にあたるということです。
4.2 原則2025年度までの移行が目標とされた
移行の時期にも目標が置かれていました。
デジタル庁は、地方公共団体は原則として2025年度(令和7年度)までに標準準拠システムへの円滑かつ安全な移行を目指すとしています。つまり本来は前年度までに一巡している想定でした。
5. 【進捗】3万4366システムのうち1万13システムが「特定移行支援システム」
実際の進み方は、目標どおりにはなっていません。
デジタル庁の示す2026年3月末時点の状況では、対象3万4366システムのうち1万13システムが「特定移行支援システム」に該当しています。割合にすると29.1%で、およそ3割です。
特定移行支援システムとは、2025年度までに標準準拠システムへ移行できず、引き続き支援が必要とされたものを指します。つまり移行は令和8年度以降になります。
5.1 「移行困難システム」から呼び方が改められた
呼び方も変わっています。
従来の「移行困難システム」は「特定移行支援システム」に改められました。令和8年度以降の移行となる場合でも、概ね5年以内に標準準拠システムへ移行できるよう積極的に支援するとされています。
およそ3割が令和8年度以降の移行にあたるという状況を踏まえると、システム更改は今年度も各地で続くことになります。日本年金機構が「順次行われる」としているのは、こうした状況が背景にあるとみられます。
6. 【見通し】年金生活者支援給付金への影響がいつまで続くのかは示されていない
気になるのは、この状態がいつまで続くのかという点です。
日本年金機構の公表文には終期が書かれていません。デジタル庁の側では概ね5年以内の移行支援という枠が示されていますが、これは全国の移行完了までの見込みで、個別の市区町村がいつ更改するかを示すものではありません。
つまり、ご自身の住んでいる市区町村がいつシステムを更改するかによって、影響を受けるかどうかは変わります。今年度に請求する人がすべて待たされるという話ではありません。
7. 年金生活者支援給付金の請求は、早めに出しておくと待ち時間を吸収しやすい
ここまで、8月31日に公表された内容と、その背景にあるシステムの標準化を見てきました。
年金請求書等の審査に必要な住民票情報・所得情報の確認に時間を要する場合があり、処理期間は通常より1〜2週間程度要することが考えられるとされています。老齢年金生活者支援給付金は3つの要件のうち2つが市区町村から取得する情報に頼っているため、同じ情報の確認を経ることになります。
9月1日から請求書が順次届きますので、手元に来たら早めに出しておくと、こうした待ち時間を吸収しやすくなります。給付金は原則として請求した月の翌月分からの支給なので、請求そのものが遅れた分はさかのぼって受け取れません。
一方で、請求さえ済んでいれば、審査に時間がかかっても受け取れる額が減ることはありません。遅れるのはあくまで結果が出るまでの期間です。
対象書類の範囲や個別の遅れの有無は、公表文からは読み取れません。判断に迷う場合は、給付金の請求や支給の状況については年金事務所や給付金専用ダイヤル、世帯の課税状況については市区町村の窓口に確認しておくと安心です。
参考資料
- 日本年金機構「各地方公共団体のシステム更改等に伴う年金請求書等の審査への影響について」
- 日本年金機構「老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金の概要」
- 日本年金機構「年金を受けている方が誕生月を迎えたとき」
- デジタル庁「地方公共団体の基幹業務システムの統一・標準化」
中本 智恵