2025年6月に年金制度改正法が成立し、2026年度の年金額も4年連続のプラス改定となりました。ニュースで目にする機会は増えたものの、「自分の年金がいくらになるのか」までは把握していないという方も多いのではないでしょうか。

この記事では、2025年成立の年金制度改正法の全体像と公的年金のしくみを確認したうえで、実際の平均受給額とその男女差を見ていきます。

橋本 優理
40代のうちは、公的年金の受給見込額まで把握している方は多くないものです。この記事では、厚生年金の平均受給額に見られる男女差が生涯でどれだけの金額になるのかを試算し、40代から備える場合の目安を確認していきます。

なお、年金制度改正法の全体像・公的年金のしくみ・2026年度の年金額・平均受給額のデータについては、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。

来月6月支給分より【老齢基礎年金は月7万608円へ】国民年金・厚生年金《60歳~90歳以上》いまどきシニアの平均はいくら?男女別年金グラフつき
来月6月支給分より【老齢基礎年金は月7万608円へ】国民年金・厚生年金《60歳~90歳以上》いまどきシニアの平均はいくら?男女別年金グラフつき
ココがポイント
  • 2025年6月に年金制度改正法が成立。社会保険の適用拡大や在職老齢年金の見直しなど、現役世代にも関わる内容が並ぶ
  • 2026年度の年金額は4年連続のプラス改定。国民年金は満額で月7万608円に
  • 厚生年金の平均は男性16万9967円・女性11万1413円。差額は20年間で約1405万円にのぼる

1. 2025年成立「年金制度改正法」の全体像

2025年6月13日、「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案」が参議院本会議で可決され、法律として成立しました。

この改正は多様化する働き方や家族構成、ライフスタイルを踏まえた年金制度を目指すものです。また、私的年金制度の拡充や所得再分配の強化などによって、シニアの暮らしの安定につなげることなども大切な狙いです。

1.1 主な改正内容

社会保険の加入対象の拡大

  • 中小企業において短時間で働く人などが、厚生年金や健康保険に加入し、年金増額などのメリットを受けられるようにする

在職老齢年金の見直し

  • 年金を受け取りながら働くシニアが、年金を減額されにくくなり、より多く働けるようにする

遺族年金の見直し

  • 遺族厚生年金の男女差を解消。子どもが遺族基礎年金を受給しやすくする

保険料や年金額の計算に使う賃金の上限の引き上げ

  • 月収が一定以上となる人が、賃金に応じた年金保険料を負担し、現役時代の賃金に見合った年金を受給しやすくする

その他の見直し

  • 子どもの加算などの見直し、脱退一時金の見直し
  • 私的年金の見直し:iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)加入年齢の上限引き上げなど

上記の改正内容からも、公的年金は「老後の受給額」だけの話ではなく、現役世代からの人生設計とも深い関わりを持つことが分かります。

とくに社会保険の適用拡大やiDeCoの加入年齢引き上げは、40代・50代の働き方や積立の選択肢に直接影響します。「人生100年時代」と呼ばれる長寿時代、若いうちから公的年金のしくみに関心を持っておきたいものです。

2. おさらい:公的年金「2階建て」のしくみ

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厚生年金と国民年金の仕組み

出所:日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」等を参考にLIMO編集部作成

日本の公的年金制度は「2階建て」構造といわれています。

2.1 1階部分《国民年金》

公的年金の1階部分にあたるのは「国民年金」です。原則として日本に住む20歳以上から60歳未満のすべての人が加入します。職業や国籍は問いません。

  • 年金保険料:2026年度は月額1万7920円で全員一律
  • 老後の受給額:40年間欠かさず保険料を納付すると、65歳以降に満額(2026年度は月額7万608円)が受け取れる

2.2 2階部分《厚生年金》

2階部分にあたるのが「厚生年金」です。会社員や公務員、パート等で特定適用事業所(※1)に勤め一定要件を満たした方が、国民年金に上乗せで加入します。

  • 年金保険料:個人の収入に応じて決まる(※2)
  • 老後の受給額:加入期間や納めた保険料により決まるため、個人差がある(上限あり)

なお、国民年金は保険料の未納期間がある場合、その月数に応じて満額から差し引かれます。厚生年金は上記のように、現役時代の働き方が年金額に反映される仕組みとなっています。

※1 1年のうち6カ月間以上、適用事業所の厚生年金保険の被保険者(短時間労働者は含まない、共済組合員を含む)の総数が51人以上となることが見込まれる企業など
※2 保険料額は標準報酬月額(上限65万円)、標準賞与額(上限150万円)に保険料率をかけて計算される

3. 2026年度の年金額|4年連続のプラス改定

厚生労働省によると、2026年度の年金額の例は次のとおり決定されました。

令和8年4月分(6月15日(月曜)支払分)からの年金額3/5

令和8年4月分(6月15日(月曜)支払分)からの年金額

出所:日本年金機構「令和8年4月分からの年金額等について」

  • 国民年金(老齢基礎年金(満額)):7万608円(1人分※1
  • 厚生年金:23万7279円(夫婦2人分※2

※1 昭和31年4月1日以前生まれの方の老齢基礎年金(満額1人分)は、月額7万408円(対前年度比+1300円)です。このように年齢により受給額が異なります。
※2 男性の平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)45万5000円)で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準です。

厚生年金の23万7279円は、夫婦の合計額です。上記の注釈があるとおり、「40年間会社員として月額45万5000円を稼いだ夫の厚生年金と国民年金」と「40年間第3号被保険者(もしくは自営業など)だった妻の国民年金」が想定されています。

現代では共働き世帯や単身世帯、自営業の方などライフスタイルは多岐にわたります。この金額はあくまで一つの指標であり、実際の受給額はこれまでの加入状況によって一人ひとり大きく異なる点に留意が必要です。

また、2026年度は増額改定となりましたが、物価上昇率には追い付けていない点も押さえておく必要があります。

4. 国民年金・厚生年金の平均年金月額と男女差

厚生労働省が2025年12月公表の「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」より、60歳〜90歳以上のすべての受給権者における「平均年金月額」と「受給額分布」についても見ていきます。

4.1 国民年金(老齢基礎年金)の平均受給額

国民年金の平均額(全年齢)4/5

国民年金の平均額(全年齢)

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

  • 〈全体〉平均年金月額:5万9310円
  • 〈男性〉平均年金月額:6万1595円
  • 〈女性〉平均年金月額:5万7582円

4.2 厚生年金(老齢厚生年金)の平均受給額

厚生年金の平均額(全年齢)5/5

厚生年金の平均額(全年齢)

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

  • 〈全体〉平均年金月額:15万289円
  • 〈男性〉平均年金月額:16万9967円
  • 〈女性〉平均年金月額:11万1413円

※国民年金の金額を含む

国民年金(老齢基礎年金)の平均受給額は、男女ともに月5〜6万円台となっています。一方で、厚生年金(老齢厚生年金)は全体の平均が15万円台ですが、男女の平均額にはおよそ6万円ほどの差が見られます。

この違いは、厚生年金の受給額が、現役時代の賃金水準や加入期間に応じて決まる仕組みによるものです。厚生年金は、収入に比例して保険料を納める制度であるため、働き方や就業期間の違いが、将来の年金額に反映されやすい特徴があります。

とくに現在のシニア世代では、女性が出産や育児、家族の事情などをきっかけに就業形態を変えたり、仕事を離れたりするケースが少なくありません。その結果、厚生年金の加入期間や賃金水準に差が生じ、平均受給額にも男女差として表れています。

4.3 男女差5万8554円、20年間受け取るといくらの差になる?

では、この男女差は生涯で見るとどれくらいの金額になるのでしょうか。厚生年金の男性平均16万9967円と女性平均11万1413円の差額をもとに、65歳から20年間(85歳まで)受け取った場合の総額を試算してみます。

【月額の差】
16万9967円 - 11万1413円 = 5万8554円

【年額の差】
5万8554円 × 12カ月 = 70万2648円

【20年間の差】
70万2648円 × 20年 = 約1405万円

月額では約5万9000円の差ですが、20年間の累計では約1405万円という金額になります。現役時代の働き方の違いが、老後の受け取り総額にこれだけの開きを生むということです。

なお、これは全年齢の受給権者の平均額をもとにした試算であり、個々の受給額は加入期間や賃金水準によって異なります。

4.4 40代から備えるなら、月いくらの積立が必要?

では、この約1405万円という差を、40代から自分で積み立てて用意する場合、毎月いくら必要になるのでしょうか。45歳から65歳までの20年間、年利3%で運用しながら積み立てると仮定して計算します。

【目標額】1405万円
【積立期間】20年(45歳〜65歳)
【想定利回り】年3%(複利・毎月積立)

→ 必要な積立額:毎月およそ4万2800円
(うち元本は約1027万円、運用益は約378万円)

運用をせず預貯金だけで1405万円を用意する場合、毎月約5万8500円が必要になります。年3%で運用できれば毎月の負担は約1万5700円軽くなる計算です。

ただし、これは一定の利回りが続くと仮定した試算です。投資信託などの運用には値動きがあり、元本割れの可能性があります。実際の受取額を保証するものではありませんので、あくまで目安としてご覧ください。

橋本 優理
毎月4万円台という数字を見ると、負担が重いと感じられる方も少なくないでしょう。ただ、これは平均額の差をまるごと埋めようとした場合の金額です。実際に必要な金額は人によって異なりますので、まずはご自身の年金見込額を確認し、埋めるべき差額がいくらなのかを出すところから始めていただければと思います。

監修者コメント

中本 智恵

今回の年金制度改正では、社会保険の適用拡大やiDeCoの加入年齢引き上げなど、40代・50代の働き方や積立の選択肢に直接関わる項目が並んでいます。「年金改正=シニアの話」と受け止められがちですが、実際には現役世代のほうが影響を受ける場面は多いといえます。

記事中の試算では、厚生年金の男女平均の差5万8554円が20年間で約1405万円になるという結果でした。ここで大切なのは、金額の大きさに驚くことではなく、「働き方の違いが年金額に反映される制度である」という点を早い段階で知っておくことだと考えています。育児や介護で働き方を変える時期がある方は、厚生年金に加入できる形を選べるかどうかで、将来の受給額が変わってきます。

平均額と比べるのではなく、ご自身の見込額と将来の生活費の差を出す。そこから逆算すれば、必要な積立額も、働き方の選択肢も、具体的に検討できるようになります。なお、公的年金の見込額や加入要件はご自身の加入状況によって異なりますので、正確な金額は年金事務所などの公的窓口でご確認ください。