2026年度(令和8年度)の公的年金は、物価や賃金の変動を反映し、4年連続のプラス改定となりました。国民年金(満額)は月額7万円を突破し、標準的な夫婦の厚生年金モデル額は約23万7000円と示されています。
一方で、最新の調査によると高齢者世帯の収入のうち年金が占める割合は約6割にとどまり、不足分を仕事による「稼働所得」で補っているのが実情です。
さらに、2025年6月成立の「年金制度改正法」によって、社会保険の適用拡大や在職老齢年金の基準緩和など、長く働くシニアを後押しする制度が本格的に動き出しました。
本記事では、2026年度の最新年金額やシニア世帯のリアルな懐事情を紐解きながら、法改正を味方につける「人生100年時代」の新しい年金戦略についてわかりやすく解説します。
1. 2025年成立「年金制度改正法」の全体像と主なポイント
2025年6月13日、「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案」が参議院本会議で可決され、法律として成立しました。
この改正は多様化する働き方や家族構成、ライフスタイルを踏まえた年金制度を目指すものです。また、私的年金制度の拡充や所得再分配の強化などによって、シニアの暮らしの安定に繋げることなども大切な狙いです。
今回の改正の全体像を見ておきましょう。
1.1 主な改正内容
社会保険の加入対象の拡大
- 中小企業において短時間で働く人などが、厚生年金や健康保険に加入し、年金増額などのメリットを受けられるようにする
在職老齢年金の見直し
- 年金を受け取りながら働くシニアが、年金を減額されにくくなり、より多く働けるようにする
遺族年金の見直し
- 遺族厚生年金の男女差を解消。子どもが遺族基礎年金を受給しやすくする
保険料や年金額の計算に使う賃金の上限の引き上げ
- 月収が一定以上となる人が、賃金に応じた年金保険料を負担し、現役時代の賃金に見合った年金を受給しやすくする
その他の見直し
- 子どもの加算などの見直し、脱退一時金の見直し
- 私的年金の見直し:iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)加入年齢の上限引き上げなど
上記の改正内容からも、公的年金は「老後の受給額」だけの話ではなく、現役世代からの人生設計とも深い関わりを持つことが分かります。
「人生100年時代」と呼ばれる長寿時代。若いうちから公的年金のしくみに関心を持っておきたいものです。
2. まずはおさらい!日本の公的年金「2階建て」のしくみ
日本の公的年金制度は「2階建て」構造といわれています。
2.1 1階部分《国民年金》
公的年金の1階部分にあたるのは「国民年金」です。原則として日本に住む20歳以上から60歳未満のすべての人が加入します。職業や国籍は問いません。
- 年金保険料:2026年度は月額1万7920円で全員一律
- 老後の受給額:40年間欠かさず保険料を納付すると、65歳以降に満額(2026年度は月額7万608円)が受け取れる
なお、保険料の未納期間がある場合は、その月数に応じて満額から差し引かれます。
2.2 2階部分《厚生年金》
2階部分にあたるのが「厚生年金」です。会社員や公務員、パート等で特定適用事業所(※1)に働き一定要件を満たした方が、国民年金に上乗せで加入します。
- 年金保険料:個人の収入に応じて決まる(※2)
- 老後の受給額:加入期間や納めた保険料により決まるため、個人差がある(上限あり)
上記のように、現役時代の働き方が年金額に反映される仕組みとなっています。
※1 1年のうち6カ月間以上、適用事業所の厚生年金保険の被保険者(短時間労働者は含まない、共済組合員を含む)の総数が51人以上となることが見込まれる企業など
※2 保険料額は標準報酬月額(上限65万円)、標準賞与額(上限150万円)に保険料率をかけて計算される
3. 2026年度の年金額はどうなった?4年連続のプラス改定
厚生労働省によると、2026年度の年金額の例は次のとおり決定されました。
- 国民年金(老齢基礎年金(満額)):7万608円(1人分※1)
- 厚生年金:23万7279円(夫婦2人分※)
※1昭和31年4月1日以前生まれの方の老齢基礎年金(満額1人分)は、月額7万408円(対前年度比+1300円)です。このように年齢により受給額が異なります。
※2男性の平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)45万5000円)で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準です。
厚生年金の23万7279円は、夫婦の合計額です。
上記の注釈があるとおり、「40年間会社員として月額45万5000円を稼いだ夫の厚生年金と国民年金」と「40年間第3号被保険者(もしくは自営業など)だった妻の国民年金」が想定されています。
現代では共働き世帯や単身世帯、自営業の方などライフスタイルは多岐にわたります。この金額はあくまで一つの指標であり、実際の受給額はこれまでの加入状況によって一人ひとり大きく異なる点に留意が必要です。
2026年度は増額改定となりましたが、物価上昇率には追い付けていない点は留意しておく必要があります。
将来いくら年金がもらえるのか、まずは自分自身の年金加入状況や今後の働き方などを踏まえて年金見込額を試算してみましょう。日本年金機構の「ねんきんネット」でシミュレーションすることができるので、ぜひ活用してみてください。
4. 【国民年金・厚生年金】60歳~90歳以上「いまどきシニアの平均月額はいくら?」
厚生労働省が2025年12月公表の「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」より、60歳~90歳以上のすべての受給権者における「平均年金月額」と「受給額分布」についても見ていきます。
4.1 国民年金(老齢基礎年金)の平均受給額
- 〈全体〉平均年金月額:5万9310円
- 〈男性〉平均年金月額:6万1595円
- 〈女性〉平均年金月額:5万7582円
4.2 厚生年金(老齢厚生年金)の平均受給額
- 〈全体〉平均年金月額:15万289円
- 〈男性〉平均年金月額:16万9967円
- 〈女性〉平均年金月額:11万1413円
※国民年金の金額を含む
国民年金(老齢基礎年金)の平均受給額は、男女ともに月5万円台となっています。一方で、厚生年金(老齢厚生年金)は全体の平均が15万円台ですが、男女の平均額にはおよそ6万円ほどの差が見られます。
この違いは、厚生年金の受給額が、現役時代の賃金水準や加入期間に応じて決まる仕組みによるものです。厚生年金は、収入に比例して保険料を納める制度であるため、働き方や就業期間の違いが、将来の年金額に反映されやすい特徴があります。
とくに現在のシニア世代では、女性が出産や育児、家族の事情などをきっかけに就業形態を変えたり、仕事を離れたりするケースが少なくありません。その結果、厚生年金の加入期間や賃金水準に差が生じ、平均受給額にも男女差として表れています。
5. 高齢者世帯のリアルな収入事情。年金以外の所得構成をチェック
厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」から、高齢者世帯(※)の「1世帯あたりの平均所得金額」を見ていきましょう。
※高齢者世帯:65歳以上の者のみで構成するか、又はこれに18歳未満の者が加わった世帯
5.1 高齢者世帯の平均所得金額
(カッコ内は総所得に占める割合)
総所得:314万8000円 (100.0%)
【内訳】
- 稼働所得:79万7000円(25.3%)
- うち雇用者所得(※):66万5000円(21.1%)
- 公的年金・恩給:200万円(63.5%)
- 財産所得:14万4000円 (4.6%)
- 公的年金・恩給以外の社会保障給付金:1万8000円 (0.6%)
- 仕送り・企業年金・個人年金等・その他の所得18万9000円(6.0%)
高齢者世帯の平均総所得は年314万8000円、月額に換算すると約26万円です。
主な内訳は、所得の3分の2を占める月額約16万6000円の「公的年金」と、約2割を占める月額約5万5000円の「雇用者所得」です。
この所得構成からは、高齢者世帯の生計が公的年金をベースとしながら、主に仕事による収入で補われている様子がうかがえます。
※雇用者所得:世帯員が勤め先から支払いを受けた給料・賃金・賞与の合計金額で、税金や社会保険料を含む
6. まとめ:制度改正を活かし、老後のキャリアプランを描き直そう
今回は、2026年度の最新年金額や高齢者世帯の所得事情、2025年成立の年金制度改正法のポイントについて解説しました。
4年連続の年金増額はポジティブなニュースですが、高齢者世帯の平均所得の約25%を「労働による収入」が占めている通り、年金と就労を組み合わせたハイブリッドな家計戦略が現代のスタンダードになりつつあります。
こうした中での法改正は、働きながらでも年金が減額されにくい仕組みや、厚生年金に加入しやすくなる環境が整うなど、長く働く人に有利な制度へと大きくシフトしています。また、遺族厚生年金の見直しなど、多様化する家族のあり方に合わせた変更も見逃せません。
物価高が続く今、まずは「ねんきんネット」等でご自身の将来の受給見込額をチェックしてみましょう。制度のメリットを最大限に活かし、自分らしい老後のキャリアプランを描くきっかけにしてみてください。
参考資料
- 厚生労働省「年金制度改正法が成立しました」
- 厚生労働省「令和8年4月分からの年金額等について」
- 日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」
- 厚生労働省年金局「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」
- 厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」用語の説明
マネー編集部年金班