5. 「年金はまだ先の話」と考えがちな40代。備えに動き出すきっかけとは|ファイナンシャルアドバイザー・橋本優理が解説
老後資金の話題でよく挙がるのが、受け取れる年金額が分からないまま、備えを始める踏ん切りがつかないという悩みです。ここでは、40代に多いとされるお悩みの一般的な例をもとに、不安を備えに変えていくための整理の仕方を考えていきます。
5.1 「年金がいくら受け取れるか分からない」――40代に多いお悩み
40代は仕事も生活も忙しく、老後はまだ先の話に感じられる年代です。勤務先の企業型DC(企業型確定拠出年金)や個人年金保険に加入していても、将来受け取れる金額まで把握している方は多くないといわれます。たとえば、次のような声が挙げられます。

ライフプランのシミュレーションで老後資金の不足が見込まれると分かり、資産運用や保険の必要性を改めて感じたという流れは、一般によく聞かれるものです。試算は前提の置き方によって結果が変わりますが、不足額が金額として目に見えることが、備えに動き出す契機になりやすいといえます。
5.2 【ファイナンシャルアドバイザー・橋本優理が回答】不安を「備え」に変える、着手の順番
今から計画的に、老後のための資産準備を始めておくことが必要な年代です。
まずは受け取れる年金額の概算を把握したうえで、将来かかる生活費との差額を算出してみましょう。
また、40代以降は病気やケガのリスクも高くなっていきます。
思わぬ大病を患ったことで資産運用に影響が出ることがないよう、医療保障やがん保障も最低限準備しておく必要があるかもしれません。
5.3 ポイント1:受け取れる年金と将来の収支を一覧にして把握する
老後の備えは、意気込みよりも着手する順番で決まります。最初に取り組みたいのは、現状の見える化です。公的年金に加えて、勤務先の企業型DCや加入中の個人年金保険が将来いくらになるのかを一覧に整理し、シミュレーションで老後の収支を並べてみます。不足額が数字として見えると、必要な備えの大きさの見当がつきます。なお、公的年金の見込額や企業型DCの取り扱いは、加入期間や働き方によって一人ひとり異なります。金額や要件を思い込みで判断せず、ねんきん定期便やねんきんネット、年金事務所などの公的窓口、勤務先の担当部署で必ずご自身の状況を確認してください。
5.4 ポイント2:制度と商品を使い分け、置き場所を分散させる
次に、資産の置き場所を分けて考えます。資産は、層を重ねる「ミルフィーユ」のようにイメージすると整理しやすくなります。企業型DCやNISAで長期の積立を担い、債券や投資信託を組み合わせて、株式だけに偏らない配分にしておく。目的と使う時期ごとに置き場所を分けるのが要点です。どの制度や商品がふさわしいかは、必要な保障の内容や資金を使う時期によって変わるため、誰にでも当てはまる一つの正解があるわけではありません。制度ごとの利用条件や税制上の取り扱いは改正されることもあるため、最新の内容は公的窓口や専門家にご確認ください。
5.5 ポイント3:積立を止めないための保障を確認する
最後に、積立を続けられる状態を保つことです。働けない期間が生じると、生活費の確保と積立が同時に止まってしまいます。医療保険に加えて就業不能保険まで確認し、収入が途絶えても生活と積立を続けられる状態にしておくと、長期の運用計画が崩れにくくなります。公的な保障でどこまで補えるかは、加入している健康保険や年金の状況によって異なります。まずは公的窓口や専門家に確認して補える範囲を把握し、そのうえで不足する部分を民間の保障で補うという順序で考えると整理しやすくなります。
なお、投資信託や変額保険を活用した運用には値動きがあり、元本割れの可能性があります。シミュレーションの結果も将来の受取額を保証するものではありません。まずは一覧で現状を把握し、無理のない金額から始めて、年に一度は見直すという進め方が現実的です。
ここでご紹介したのは一般的な考え方の一例であり、必要な備えの金額も前提条件も、家族構成や収入、加入している制度によって一人ひとり異なります。年金・税制・保険にかかわる制度は改正されることがあり、要件・金額・期限はご自身の状況で変わります。実際の判断にあたっては、公的窓口で最新の情報をご確認のうえ、契約内容や解約条件も踏まえて、専門家に個別にご相談ください。
6. まとめにかえて|平均と比べるより、自分の見込額から逆算する
2025年成立の年金制度改正法には、社会保険の適用拡大やiDeCoの加入年齢引き上げなど、40代・50代の働き方と積立に関わる項目が含まれています。「年金改正はシニアの話」と考えていた方も、現役世代の選択に直結する内容だとお分かりいただけたのではないでしょうか。
2026年度の年金額は4年連続のプラス改定となり、国民年金は満額で月7万608円になりました。ただし実際の平均受給額は、国民年金が月5万9310円、厚生年金が月15万289円。厚生年金では男性16万9967円・女性11万1413円と、月5万8554円の差があります。
今回の試算では、この差が20年間で約1405万円にのぼり、40代から自分で用意するなら毎月およそ4万2800円が必要という結果になりました。
大切なのは、平均額と自分を比べることではありません。まずは「ねんきんネット」でご自身の年金見込額を確認し、将来の生活費との差額を出してみること。そこから逆算すれば、必要な積立額も、これからの働き方の選択肢も、具体的に検討できるようになります。
参考資料
- 厚生労働省「年金制度改正法が成立しました」
- 日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」
- 日本年金機構「厚生年金保険の保険料」
- 日本年金機構「国民年金保険料」
- 日本年金機構「令和8年4月分からの年金額等について」
- 日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」
- 厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- LIMO「来月6月支給分より【老齢基礎年金は月7万608円へ】国民年金・厚生年金《60歳~90歳以上》いまどきシニアの平均はいくら?男女別年金グラフつき」
橋本 優理
