厳しい暑さが続くなか、食料品の値上げが家計に重くのしかかっています。
2026年7月30日、高市首相は飲食料品の消費税を2027年4月から2年間1%に引き下げる方針を表明しました。この会見では「飲食料品にかかる消費税の実質ゼロ化」という言葉も使われています。
ただし、この「実質ゼロ」はすべての人に当てはまるものではありません。
この記事では、2026年7月末に示された内容を国の資料から整理し、対象になる人とならない人を確認します。給付付き税額控除とは、所得に応じて税金を軽くし、引ききれない分を現金で給付する仕組みを指します。あわせて、2年間の減税で食費の負担がどれだけ軽くなるのかも試算しました。
なお、制度はまだ検討段階にあります。給付額や対象となる所得の基準は決まっていないため、今後変更される可能性があります。
なお、給付付き税額控除の基本的な仕組みと「給付一本化」への方針転換に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。
1. この記事の3つのポイント
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飲食料品の消費税が「実質ゼロ」になるのは、働いて一定の税金・社会保険料を負担している中低所得の人に限られる -
対象になる所得の基準も負担額の基準も、給付額もまだ決まっていない -
消費税減税で65歳以上の夫婦のみの無職世帯は2年間で約10万6300円の負担が軽くなる
2. 消費税が「実質ゼロ」になるのは「働いて一定の税金・社会保険料を負担している中低所得の人」
2.1 「実質ゼロ」は減税と現金給付を合わせた結果を指す
まず押さえておきたいのは、「実質ゼロ」が減税だけで実現するものではないという点です。
飲食料品の消費税率が8%から1%に下がるのは、2027年4月からの2年間で、これはすべての人に適用されます。そのうえで、2027年度に始まる先行給付では、飲食料品にかかる消費税1%相当分の範囲内で、中低所得の勤労者に現金給付を行います。
つまり、減税と現金給付の両方を受けて初めて「実質ゼロ」になるという設計です。レジで支払う消費税そのものがゼロになるわけではありません。
0%ではなく1%とされたのは、事業者のシステム改修に必要な期間を短くして、2027年4月の実施に間に合わせるためです。
2.2 対象になる方向の人・対象外となる見込みの人
国の社会保障国民会議がまとめた中間とりまとめでは、対象者について「一定の勤労性の所得があり、一定の税・社会保険料負担がある者を対象とする」と整理されています。
要件は2つあります。働いて収入があること、そして税金や社会保険料を一定額負担していることです。この記述をもとに整理すると、次のようになります。
対象になる方向の人
- 中低所得の現役勤労者
- 個人事業主、フリーランス
- パート、アルバイト(税金や社会保険料を負担している場合)
条件つきで対象になりうる人
- 働いている中低所得の高齢者(納める税金・社会保険料から受け取る年金を差し引いた負担が、現役世代並みに残る場合)
対象外となる見込みの人
- 働いていない人
- 年金収入だけで暮らしている人
- 所得の高い人
扶養の範囲内で働いていて、所得税も社会保険料も負担していない場合は、2つ目の要件を満たさず対象から外れる可能性があります。
18歳以下の子どもを扶養している場合は、人数に応じた加算があります(2027年からの先行導入期間は15歳以下が対象です)。
ただし、対象になる所得の基準も、負担額の基準も、給付額もまだ決まっていません。
2.3 対象外の場合は7%分が軽くなるだけで、1%分の負担は残る
給付の対象になる人は、税率が下がることに加えて、現金給付も受け取ります。高市首相は会見で、給付の対象となる「中所得」・「低所得」の「現役勤労者」の大宗について、「飲食料品の消費税率引下げ」の効果を「上回る支援」を受けられると説明しました。
対象にならない人が受けるのは、税率が下がることだけです。8%から1%に下がる分は負担が軽くなりますが、残る1%分はそのまま支払うため、「実質ゼロ」の状態にはなりません。
2.4 高齢者は「納めた額から受け取った年金を引いて、なお負担が残るか」で判断される
働いている高齢者についても、社会保障国民会議の中間とりまとめに記述があります。
「就労し、税・社会保険料負担から年金受取額を差し引いた純負担が現役並みである中低所得の高齢者も対象とする」
ここでいう「純負担」とは、納めている税金や社会保険料から、受け取っている年金を差し引いた金額のことです。
つまり、働いているというだけでは対象になりません。働いていること、そして差し引いたあとに現役並みの負担が残っていることの2つが必要です。
受け取る年金が納める税金や社会保険料を上回っている場合は、働いていてもこの条件に当てはまらないと考えられます。なお、この「現役並み」がどの水準を指すのかも、現時点では示されていません。
3. 【独自試算】飲食料品の消費税が1%になると、年金中心の夫婦世帯は2年間で約10万6300円軽くなる
税率の引き下げによる軽減は、給付の対象になるかどうかに関わらず、すべての人に及びます。その金額がどれくらいになるのかを、年金を中心に暮らす世帯について、家計調査のデータから試算しました。
3.1 65歳以上の無職世帯の食料への支出は夫婦で月7万8964円、単身で月4万2545円
65歳以上の無職世帯の家計収支(2025年平均・月額)2/4
出所:総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2025年(令和7年)平均結果の概要」表2、同「家計調査 家計収支編 二人以上の世帯 年報 2025年」第5表、同「家計調査 家計収支編 単身世帯 詳細結果表 2025年」第6表をもとに独自作成
3.2 税率が8%から1%になると、夫婦のみの世帯で月約4430円軽くなる
現在、飲食料品には8%の軽減税率が適用されており、この対象に外食と酒類は含まれません。そこで、食料への支出から酒類と外食を差し引いた金額を対象として計算しました。
夫婦のみの世帯
- 7万8964円 - 3584円 - 7028円 = 6万8352円
- 6万8352円 × 7 ÷ 108 = 月額 約4430円
単身世帯
- 4万2545円 - 1691円 - 4809円 = 3万6045円
- 3万6045円 × 7 ÷ 108 = 月額 約2336円
期間ごとに整理すると、次のようになります。
3.3 給付の対象外なら、この2年間だけの軽減で終わる
ここまでの金額は、減税だけによる軽減です。給付の対象になる人は、これに加えて所得に応じた現金給付を受けられます。
一方で対象外となった場合は、2029年4月に税率が8%に戻った時点で、この軽減は終わります。
この試算は65歳以上の無職世帯の平均値をもとにしたものです。食料への支出は世帯によって異なるため、金額の目安としてご覧ください。
4. 【2026年7月末の中間とりまとめ】所得に応じた現金給付は一回きりではなく毎年度続く
給付付き税額控除をめぐる議論は、2026年7月末に大きく動きました。7月29日に社会保障国民会議が中間とりまとめを決定し、翌30日に首相が方針を表明しています。制度の詳細は9月に決定される税制改正の大綱で示され、秋の臨時国会に法案が提出される見通しです。
なお、中間とりまとめは議長案を含む複数の意見を併記したもので、消費税率の引き下げについては具体案の一致には至っていません。
4.1 飲食料品の消費税1%は2年間の時限措置、現金給付は毎年度続く仕組み
制度を理解するうえで混同しやすいのが、それぞれが続く期間です。
飲食料品の消費税が1%になるのは、2027年4月から2029年3月までの2年間だけです。期間を区切った措置なので、2年たてば元の税率に戻ります。
一方、所得に応じた現金給付は2027年度に先行して始まり、2029年度から本格的に導入されます。社会保障国民会議の中間とりまとめでも「毎年度継続的に行う新たな制度」とされており、過去の給付金のような一回きりの支給ではありません。
4.2 判定は世帯ではなく「個人単位」で行われる
就労意欲への影響や「年収の壁」への対応を踏まえ、判定は個人単位とする方向が示されました。単身者も対象に含まれます。世帯単位で判定されてきたこれまでの給付金とは、考え方が異なります。
4.3 「非課税世帯は全額現金給付」という説明は、当面の制度には当てはまらない
給付付き税額控除は、もともと「税額控除で引ききれない分を現金で給付する」制度として説明されてきました。
この説明であれば、税金を納めていない非課税世帯には、控除額の全額が現金で支給されることになります。
しかし議論の結果、当面は税額控除と組み合わせず、現金給付だけで始めること(給付一本化)になりました。
対象となるのも、勤労による収入がある人が軸です。そのため、働いていない非課税世帯は、対象から外れる見込みです。
ただし、住民税が非課税であっても、働いて収入があり税金や社会保険料を負担していれば、対象になる可能性は残ります。非課税かどうかだけで決まるわけではありません。




