8. 50代・60代に多い「何から手をつければいいのか分からない」への不安。ファイナンシャルアドバイザー・菅原美優が伝えたいこと

日頃のご相談では、定年を控えた方から「そろそろ準備が必要だと思うが、何から手をつければいいのか分からない」というお話をよくうかがいます。退職前後は、決めることと手続きが同時に押し寄せる時期です。

8.1 50代・60代に多いお悩み相談は「順番が分からない」

退職の前後では、退職金や企業型確定拠出年金の受け取り方、公的な手続き、その後の資金の置き方と、性質の違う判断が重なります。どれも初めての経験であるうえ、選び直しがきかないものも含まれるため、迷ったまま時間が過ぎてしまいます。次のような声を耳にします。

60代のお客様(ご相談者)
定年が近づいてきました。退職金と企業型の確定拠出年金をどう受け取るのがよいのか、受け取った後にどうすればよいのかも決めていません。やるべきことが多そうなのに、何から考えればいいのかが分からない状態です。

まとめて考えようとすると行き詰まります。「退職前」「退職直後」「その後」と時期で区切ると、判断すべきことが順番に並びます。

8.2 【ファイナンシャルアドバイザー・菅原美優が回答】退職前後にやることを時系列で整理する

菅原 美優
定年を控えた方から「何から手をつければいいのか分からない」という声は多く耳にします。まずは、退職前に退職金や企業型確定拠出年金の受け取り方を決めましょう。受け取り方によって税金の扱いも変わるため、事前に情報収集しておくことは大切です。また自分で申請しないと受け取れない給付金などもあるため、退職直後に必要な手続きを洗い出してみましょう。そして受け取った資金の置き方を決めておくことで、落ち着いて次の第一歩を踏み出せます。

時期で区切ると、それぞれの段階で決めるべきことがはっきりします。ご相談のなかでは、次の三つの順序でお話しすることが多くあります。

8.3 ポイント1:退職前に受け取り方を決める

一つ目は、「退職前に受け取り方を決める」ことです。退職金や企業型確定拠出年金は、一時金として受け取るか年金形式で受け取るかによって税の扱いが変わり、後から選び直せない場合があります。手続きの期限があるものもあるため、退職前に確認しておく必要があります。

8.4 ポイント2:退職直後に必要な手続きを洗い出す

二つ目は、「退職直後に必要な手続きを洗い出す」ことです。健康保険の切り替え、公的年金の請求、雇用保険の給付、確定申告など、退職後に必要となる手続きには、自分で申請しなければ受け取れないものがあります。期限のあるものから順に並べておくと漏れを防げます。

8.5 ポイント3:受け取った資金の置き方を決める

三つ目は、「受け取った資金の置き方を決める」ことです。まとまった資金が入ったあとで考え始めると、判断を急いでしまいがちです。当面の生活費として確保する分と、時間をかけて運用する分をあらかじめ分けておくと、落ち着いて選べます。

なお、退職金や確定拠出年金の税務上の取り扱い、健康保険や雇用保険、年金の受給要件と手続き期限は、勤務先の制度やお住まいの地域、加入状況によって異なり、制度改正もあります。ご自身に必要な手続きと期限は、勤務先の担当部署、加入している健康保険組合、年金事務所、ハローワーク、税務署に必ずご確認ください。運用商品には元本割れの可能性があります。

9. まとめにかえて

60歳・65歳以上が対象となる公的給付金は、加給年金や老齢年金生活者支援給付金、雇用保険関連の3つの手当、医療・介護の軽減制度と多岐にわたります。共通するのは、そのほとんどが「申請主義」であり、条件を満たしていても自分で手続きをしなければ受け取れないという点です。

とくに60代前半の退職では、失業手当を申請すると特別支給の老齢厚生年金が全額停止されるなど、制度どうしの調整にも注意が必要です。退職前に受け取り方を決め、退職直後の手続きを洗い出し、受け取った資金の置き方を決める。この順番で進めることで、申請漏れを防ぎながら落ち着いて次の段階に移れます。

参考資料

菅原 美優