2026年4月より、年金分割の請求期限が2年から5年に延長されました。ただし、年金分割は2007年(3号分割は2008年)にスタートした比較的新しい制度であるため、理解が不十分で本来受けられる年金増額というメリットを受けていない人もいます。
本記事では、厚生年金受給権者における年金額の男女差と、離婚時にその差を調整するための年金分割制度について解説します。将来の生活を守る備えとして、老齢年金の計算方法や現状と、年金分割のメリットを理解しておきましょう。
- 2026年4月施行の年金分割「請求期限5年延長」のポイント
- 厚生年金の受給額における男女差の現状と平均増額(月3万円)の実態
- 自身が年金分割でメリットを受けられるかどうかの判断基準
1. 年金分割の請求期限が「2年→5年」へ延長された背景
2026年4月1日以降に離婚した場合、年金分割の請求期限は「離婚日翌日から5年以内」に延長されます。2026年3月31日以前に離婚した場合は「2年以内」であるため、請求期限は大幅延長と言えるでしょう。
しかし、年金相談を受けていると、年金分割制度やそのメリットを十分に理解していないため、分割請求を行わずに損をしている人も多数いるのではと危惧します。請求期限延長をきっかけに、制度の理解が進み、適切に活用されることを期待しています。
1.1 分割請求したのは離婚した夫婦の約2割
社会保険労務士としての年金相談では、年金分割の相談が増えています。しかし、制度そのものを知らない人や、手続きが途中で止まってしまう人も少なくありません。
厚生労働省のデータによると、離婚は年約17万9000組(「令和7年 人口動態統計月報年計(概数)の概況」)にのぼる一方、年金分割の件数は年約3万6000件(「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」)です。離婚した夫婦の約2割しか利用していない計算です。
1.2 分割を受けた人の年金額は平均月3万円以上増加
前記データによると、分割を受けた人の年金額は平均して月3万円以上増加(合意分割の場合)しています。年金は一生涯受け取るものですから、仮に月3万円の増額が20年間続いたとすれば、単純計算で増加分は720万円になります。
ただし、年金分割は請求しなければできません。制度を理解して請求漏れのないようにしましょう。年金分割について理解を深めるために、年金額の計算方法と受給実態を確認しておきましょう。
2. 老齢年金の計算方法
老齢年金には、老齢基礎年金と老齢厚生年金の2種類があります。原則65歳からその合計金額を受給しますが、年金分割によって年金額が変わるのは老齢厚生年金です。まずは、それぞれの計算方法を確認しておきましょう。
2.1 老齢基礎年金の計算方法
老齢基礎年金は、基礎年金の満額(2025年度は83万1700円)に保険料納付月数を掛けて計算します。ただし、免除期間がある場合は計算式が異なります。
- 老齢基礎年金(年額)=83万1700円×保険料納付月数/480ヶ月
20歳から60歳までのあいだ、厚生年金保険料または国民年金保険料をもれなく納付すれば満額の83万1700円が受け取れます。
2.2 老齢厚生年金の計算方法
老齢厚生年金は、厚生年金加入中の報酬(賞与を含む)の平均月額(平均標準報酬額)に厚生年金加入月数と所定の係数をかけて計算します。2003年4月以降に厚生年金に加入した人の年金額(加算部分は除く)は次の通りです。
- 老齢厚生年金=平均標準報酬額×5.481/1000×厚生年金加入月数
計算式より、老齢厚生年金は平均標準報酬額や厚生年金加入月数に比例することがわかります。年金分割によって、平均標準報酬額が増減し、将来受け取る老齢厚生年金も増減します。
