「SNSで知り合った人から『投資クラブ』に誘われている」「LINEのグループに入ったら、みんな儲かっていそうで気になっている」。そんな状況にいる方に、まず立ち止まって確認してほしいことがあります。

株式投資そのものは、証券会社に口座を開いて始める、ごく普通の資産形成の手段です。しかし今、その株式投資という言葉を隠れみのにした「SNS型投資詐欺」の被害が、警察庁の統計で過去最悪のペースを更新し続けています。

この記事では、警察庁・金融庁・国民生活センターの公表資料をもとに、SNS発の投資詐欺がどんな流れで被害者からお金をだまし取るのか、そして「投資クラブ」「投資グループ」という言葉そのものに潜む見落とされがちな仕組みを整理します。

1. SNSで見かける「投資クラブ」「投資グループ」、まず知っておきたい実態

警察庁は、SNSをきっかけに投資名目でお金をだまし取る手口を「SNS型投資詐欺」として集計しています。令和7年の確定値では、認知件数9523件(前年比+3110件、+48.5%)、被害額1288.0億円(前年比+416.9億円、+47.9%)と、件数・金額ともに前年から半分近く増えました。

1.1 特殊詐欺の中でも突出した被害額

令和8年上半期(1月〜6月)の暫定値でも、SNS型投資詐欺の被害額は797.9億円にのぼり、既遂1件あたりの被害額は1362.5万円です。

これは特殊詐欺全体の中でもとりわけ高額な部類に入ります。1件巻き込まれると、数百万円から時には1億円を超える被害につながる手口だということを、まず押さえておく必要があります。

下村 美乃莉
1件で1000万円を超えるという数字を見ると、正直かなり驚きます。私自身は月2万円の積立を地道に続けているだけなので、そのスケール感の違いに余計、違和感を覚えます。地道な積立には「必ずもうかる」という言葉は出てきません。うますぎる話には、まず距離を置く姿勢を大事にしたいと思っています。

2. 「必ずもうかる」から始まる手口の流れと、この1年の変化

警察庁が公表している手口の流れを見ると、SNS型投資詐欺には共通のパターンがあります。まずこの流れを知っておくことが、被害を防ぐ第一歩です。

2.1 典型的な7つのステップ

警察庁のまとめによると、手口は次のように進みます。

SNS型投資詐欺の手口の流れ1/2

SNS型投資詐欺の手口の流れ

出所:警察庁「SNS型投資詐欺」(SOS47特殊詐欺対策ページ)を基にLIMO編集部作成

2.2 【SNS型投資詐欺の手口の流れ】

接触〜勧誘の段階

  • 1段階目:SNSの広告をタップ、またはDMで接触される
  • 2段階目:LINEなど別のSNSの投資グループに招待される
  • 3段階目:グループ内でサクラが「儲かった」と投稿する

入金〜被害確定の段階

  • 4段階目:投資家やそのアシスタントを名乗る人物から振込指示
  • 5段階目:少額だけ利益として被害者の口座に振り込まれる
  • 6段階目:高額の偽利益を表示し、引き出しの手数料等を要求
  • 7段階目:入金後、突然連絡が途絶える

実際に警察庁が公開している事例では、50代女性が「投資グループの先生の言うとおりにすれば必ずもうかる」と言われて「投資グループ(サクラ多数)」に加入し、合計約1億円以上をだまし取られたケースが報告されています。

別の事例では、60代女性が動画配信サイトで新NISAの解説動画を見ていた際、概要欄のURLからSNSのグループチャットに誘導され、約2000万円の被害に遭っています(株式投資はYouTube動画で学べる?「著名人動画」型トラブルが1年で9.6倍に急増する中、取引所公式チャンネルなど後悔しないチャンネル・講座の選び方でも動画をきっかけとした勧誘トラブルを取り上げています)。

2.3 入口はこの1年で入れ替わっている

ここで見落とされがちなのが、詐欺の「入口」が固定されていないという点です。

令和7年の確定値では、ダイレクトメッセージを接触の入口とする件数の増加率(+66.4%)が、バナー等広告の増加率(+30.5%)の約2.18倍にのぼりました。DMからLINEへ誘導する流れが主要因とされていました。

ところが令和8年上半期の暫定値では様子が変わります。当初の接触手段として最も多いのはバナー等広告となり、その被害額は前年同期比で252.5%も増加しました。

つまり「DMだけ」「広告だけ」を警戒すればよい、という単純な話ではありません。入口の主戦場は短期間で入れ替わるため、経路を問わず共通するチェックポイントを持っておくことが重要です。

3. 【編集者の視点】

ここで注意したいのは、「知らない人からのDM」だけを警戒していると、広告経由の勧誘を見落としてしまう危険があるという点です。令和8年上半期は、バナー広告経由の被害額が前年から2.5倍以上に増えています。

特に、著名人の画像や動画を無断で使い、「必ずもうかる」「元本保証」といった文言を添えた広告が確認されているとされています。SNSのフィードに流れてくる広告だからといって、審査を経た安全な情報とは限りません。

広告をタップした先でSNSアカウントの交換を求められたり、LINEへの誘導が始まったりした時点で、いったん立ち止まる習慣をつけておくことをおすすめします。特に、初めて見る用語やサービス名が出てきた場合は、その場で検索して名称や評判を確認する一手間が有効です。

怪しいと感じても、すでにやり取りを始めてしまっている場合は、警察相談専用電話「#9110」に相談できます。緊急の被害でなくても利用できる窓口なので、送金する前に一度電話してみることをおすすめします。

4. 「投資クラブ」という名前の正体

「投資クラブ」「投資グループ」「投資サロン」。SNSでこうした名前を見ると、何らかの審査を経て集まった人たちの組織のように感じるかもしれません。

しかし金融商品取引法の枠組みの中に、「投資クラブ」という名称そのものを規定した登録制度は存在しません。株式や投資信託を売買する業者(金融商品取引業者)、投資の助言をして報酬を得る業者(投資助言・代理業者)には登録義務がありますが、「クラブ」「グループ」という呼び方自体は、誰でも自由に名乗れる任意の言葉にすぎないのです。

4.1 金融庁が名指しする典型パターン

この点は、金融庁自身が注意喚起の中で具体的に指摘しています。SNS上の投資勧誘に関する資料では、誘導された先のアカウント名に「◯◯証券」「◯◯運用会社」「◯◯投資クラブ」といった名称や、著名人の名称・画像が使われている点が典型的な特徴として挙げられています。

つまり「クラブ」「グループ」という言葉が付いているかどうかは、その団体が安全か危険かを判断する材料には一切なりません。むしろ、詐欺の典型的な命名パターンとして、公的機関から名指しで注意喚起の対象にされている呼び方だということです。

下村 美乃莉
「クラブ」という響きだけで、なんとなく信頼できそうに感じてしまう気持ちは、正直よく分かります。仲間がいる場所のように見えるほど、疑う気持ちは薄れてしまうものです。だからこそ、名前の印象と実態は別物だと、いつも自分に言い聞かせるようにしています。

4.2 実在する業者かどうかを確認する方法

では、名前だけでは判断できないとすれば、何を確認すればよいのでしょうか。金融庁は、金融商品取引業や暗号資産交換業を無登録で行うことは違法だとした上で、登録を受けている業者の一覧や、無登録業者として警告を受けた業者の名称を公表しています。

「金融庁から免許・許可・登録等を受けている金融事業者検索」を使えば、名称を入力するだけで登録の有無を確認できます。証券会社を選ぶ段階から、この確認を習慣にしておくと安心です(証券会社の口座開設で失敗しないために。楽天・SBIの比較の前に知っておきたい、銀行で株が買えない理由とNISA「あとで変更」の落とし穴、2027年からの未成年口座も解説でも、登録業者かどうかの確認方法にふれています)。

ただし、無登録業者の警告リストに載っていないからといって、その業者が安全だと保証されるわけではない点にも注意が必要です。金融庁自身も、掲載されているのはあくまで警告書の発出時点で確認できた者に限られ、現在の営業状況を示すものではないと説明しています。

5. 【編集者の視点】

実務上、特に見落とされやすいのが「登録されているように見える言葉」と「実際の登録」の違いです。「投資顧問」「アナリスト」「◯◯協会認定」といった肩書きも、それ自体に法的な資格審査があるとは限りません。

確認すべきは肩書きの響きではなく、金融庁の検索システムでその名称・法人番号が実際にヒットするかどうかです。検索してヒットしない場合、無登録業者として活動している可能性を疑う必要があります。

また、無登録業者のリストに名前がなくても、それは「その時点で警告を受けていない」という意味にすぎません。新しく設立されたばかりの団体や、まだ被害が公になっていない団体は、リストに載っていなくても危険なケースがあります。「載っていないから安全」ではなく、「登録されているかどうか」を基準にすることが大切です。

6. 被害額はどれだけ深刻か。数字で見る実態

ここまで見てきた手口が、実際にどれほどの被害を生んでいるのかを、数字で確認しておきます。

6.1 年換算で見ると、前年をさらに上回るペース

令和8年上半期の被害額797.9億円を単純に2倍して年間ペースに換算すると、1595.8億円になります。これは令和7年通年の実績1288.0億円と比べて約1.24倍にあたる水準です。

もちろん、上半期の実績をそのまま2倍にする試算は簡易的なものであり、下半期に被害が同じペースで続くとは限りません。ただし、令和7年通年の実績をすでに上回るペースで被害が発生している月が続いているという事実は、押さえておく価値があります。

SNS型投資詐欺の被害額推移2/2

SNS型投資詐欺の被害額推移

出所:警察庁「令和8年上半期における特殊詐欺の認知・検挙状況等について(暫定値)」などを基にLIMO編集部作成

6.2 【SNS型投資詐欺の被害額推移】

公表されている実績

  • 令和7年(通年・確定値):1288.0億円(前年比+47.9%)
  • 令和8年上半期(1〜6月・暫定値):797.9億円(前年同期比+444.9億円)

編集部試算

  • 令和8年・年換算:1595.8億円(令和7年通年比 約1.24倍)

1件あたりの被害額の大きさも見過ごせません。令和8年上半期のSNS型投資詐欺は、既遂1件あたり1362.5万円という金額です。同じ期間のニセ警察詐欺(1件あたり1163.9万円)と比べても198.6万円多く、特殊詐欺全体の中で際立って高額な手口だと分かります。

被害に遭う年代で最も多いのは60代です。国民生活センターが公表しているSNSきっかけの投資勧誘トラブルでも、60歳代の平均契約購入金額は約852万円と、全体平均の約644万円を大きく上回っています。

下村 美乃莉
1件あたり1000万円を超える被害と聞くと、自分には関係ないと思う方もいるかもしれません。ただ、令和8年は20代から50代でも被害額の約4割を占めているというデータを見ると、年代を問わず他人事ではないと感じます。投資に慣れているかどうかに関わらず、誰もが対象になり得る手口なのだと、あらためて気を引き締めています。

7. お金を振り込む前にできる、具体的な見分け方

ここまでの内容を踏まえ、実際にSNSで投資の勧誘を受けたときに、その場で確認できるポイントを整理します。

7.1 振り込む前の5つのチェック

警察庁は、次のいずれかに1つでも当てはまる場合は、お金を振り込む前に警察へ相談するよう呼びかけています。

  • SNSのDMで投資話を持ちかけられ、連絡先がLINEに変わりました
  • 紹介された業者が金融庁の検索システムで登録を確認できません
  • 「必ずもうかる」「あなただけ」といった文言が使われています
  • 著名人の名前が使われているが、公式アカウントからの発信が確認できません
  • 振込先が個人名義の口座になっている、または振込のたびに口座が変わります

特に、振込先の口座が個人名義になっている、あるいは振込のたびに口座番号が変わるというのは、正規の投資取引ではまず起こらない特徴です。この2点のどちらかに当てはまった時点で、詐欺を疑って間違いありません。

7.2 相談できる窓口

すでにやり取りを始めてしまっていて不安な場合、いくつかの公的な相談窓口があります。

金融庁の「詐欺的な投資に関する相談ダイヤル」(0570-050588)は、平日10時から17時まで電話で相談でき、ウェブサイトからは24時間相談を受け付けています。警察に相談したい場合は、緊急でなくても利用できる警察相談専用電話「#9110」にかけると、地域を管轄する窓口につながります。

また、金融庁はSNS上の投資詐欺が疑われる広告そのものについても、オンラインフォームで24時間情報を受け付けています。偽広告をきっかけに勧誘を受けた場合や、実際に被害に遭った場合が対象です。自分が被害を防げたとしても、情報提供によって他の人の被害を防ぐ助けになります。

8. まとめ

  • SNS型投資詐欺は令和7年に認知件数9523件、被害額1288.0億円となり、前年から半分近く増加しています。
  • 令和7年はダイレクトメッセージ経由の増加が主な要因でしたが、令和8年上半期はバナー等広告経由の被害額が前年同期比252.5%増と、入口が入れ替わっています。
  • 「投資クラブ」「投資グループ」という名称自体には法律上の登録制度がなく、誰でも名乗れる任意の呼び方にすぎません。
  • 振込先が個人名義の口座である、または振込のたびに口座が変わる場合は、詐欺を強く疑う必要があります。

SNSで見かける投資の誘いは、ときに巧妙で、疑うこと自体に気が引けてしまうかもしれません。しかし、名前や肩書きの響きではなく、登録の有無や振込先という客観的な事実で確認する習慣さえ持っていれば、被害を防げる可能性は大きく変わります。

少しでも違和感を覚えたら、送金する前に金融庁の登録業者検索を試すか、警察相談専用電話「#9110」に電話をかけてみてください。その一手間が、大きな被害を防ぐ分かれ道になります。

9. よくある質問

9.1 Q. 「投資クラブ」に入っただけで詐欺と決まるわけではないのですか?

A. その通りです。「投資クラブ」という名称自体は誰でも名乗れる任意の呼び方であり、名前だけで詐欺かどうかは判断できません。ただし、金融庁はSNS上の勧誘アカウント名に「◯◯投資クラブ」といった名称が使われる例が多いと注意喚起しており、名称に惑わされず、実際に金融商品取引業者等として登録されているかを確認することが重要です。

9.2 Q. 少額しか振り込んでいない場合でも相談したほうがよいですか?

A. 警察庁の事例では、最初は少額の利益が実際に振り込まれ、その後高額な手数料等を要求されて被害が拡大するパターンが紹介されています。少額であっても、投資グループへの参加や個人名義の口座への振込など、気になる点があれば、被害が大きくなる前に警察相談専用電話「#9110」や金融庁の相談ダイヤルに相談することをおすすめします。

9.3 Q. すでに大きな金額を振り込んでしまった場合はどうすればよいですか?

A. 一次資料では返金手続きの詳細までは示されていませんが、金融庁「詐欺的な投資に関する相談ダイヤル」(0570-050588)や警察相談専用電話「#9110」にまず連絡することが案内されています。振込先の金融機関にも早めに連絡し、口座凍結等の対応を相談してください。

※本記事は、編集部が警察庁・金融庁・国民生活センターが公表する公式の最新一次資料を直接確認の上、執筆・検証しています。

参考資料

LIMO編集部ウェルスマネジメント班