5. 現役ファイナンシャルアドバイザーが答える「いくら貯まれば安心なのか」―取り崩せる額で考える解決策
日頃のご相談では、「いくら貯まれば安心ですか」というお尋ねをよくいただきます。ただ、資産の総額だけを見ている限り、この問いに答えは出ません。見る指標を変える必要があります。
5.1 50代・60代でよくご相談される「目標額が決まらない」という悩み
資産形成に取り組んできた方ほど、総額を増やすことが目的になりがちです。しかし退職が視野に入ると、必要なのは「その資産から毎月いくら使えるのか」という別の見方です。次のような声を耳にします。

総額から取り崩し額へ。この転換ができると、必要な資産額も自然に決まってきます。
5.2 【ファイナンシャルアドバイザー・長井祐人が回答】総額ではなく、取り崩せる額から逆算する
例えば、収入が月12万円、支出が17万円の場合、毎月5万円取り崩しが必要になります。30年間取り崩した場合「5万円×12か月×30年=1800万円」となり、単純計算では1800万円の資金が必要です。
また、実際に取り崩す際にはどの資産から使っていくのかをあらかじめ順番を決めておきましょう。事前に取り崩しのルールを決めておくことで、相場変動に慌てず対応することができます。
考え方の切り替えは、計算の順序を逆にするところから始まります。ご相談のなかでは、次の三つの順序でお話しすることが多くあります。
5.3 ポイント1:毎月いくら必要かを先に決める
年金などの収入で足りない分が、資産から取り崩す金額になります。総額から考えるのではなく、この月々の金額を起点にします。
5.4 ポイント2:取り崩す期間を置いて必要額を逆算する
毎月の不足額に、取り崩す年数を掛ける。運用を続けながら取り崩す前提であれば、必要な総額はその分だけ小さくなります。ここで初めて目標額が具体的な数字になります。
5.5 ポイント3:取り崩す順番を決めておく
どの口座から、どの商品から使っていくのか。値動きの大きい資産を最後に回すなど、順番をあらかじめ決めておくと、相場が下がった局面で慌てて売る事態を避けられます。
なお、運用しながら取り崩す試算は一定の前提に基づくものであり、相場によって結果は変わります。投資信託や株式には元本割れの可能性があります。年金の受給見込額は加入状況によって異なりますので、年金事務所でご確認ください。
6. まとめにかえて
日本の富裕層は全体の約2.75%、超富裕層は約0.21%で、合計165万3000世帯と2005年以降で最多を更新しました。資産総額も469兆円に達し、全世帯の保有資産額の26.1%がこの2つの層に集中しています。世帯年収別に見ても、金融資産保有額は全国平均で1940万円、年収1200万円以上の層では5635万円と、収入との相関が見て取れます。
ただし、こうした数字と自分を比べても、必要な資産額は出てきません。老後に毎月いくら不足するのかを把握し、取り崩す年数を掛けて必要額を逆算する。そのうえで、どの資産から使っていくかの順番を決めておく。総額ではなく「取り崩せる額」を起点にすることで、目標がはじめて具体的な数字になります。
参考資料
- 株式会社野村総合研究所「野村総合研究所、日本の富裕層・超富裕層は合計約165万世帯、その純金融資産の総額は約469兆円と推計」(2025年2月13日)
- J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」
- LIMO「資産1億円以上の富裕層に共通する3つの特徴!お金が自然と貯まる人の思考と行動【元FP会社職員監修】」
- LIMO「【最新データ】日本の富裕層の割合は?年代別の平均貯蓄額と年収別データから見る資産形成の最適解」
- LIMO「【全世代(20~70歳代)比較】貯蓄額の平均・中央値はいくら?単身・二人以上世帯で比較すると見えた「お金がある人・ない人の差」」
長井 祐人
