3. 【元銀行員の視点】見込額と暮らしの実感の差から見えたこと

ここからは、銀行員だった頃の経験を踏まえながら、見込額を見たあとに考えておきたいことをお伝えします。

銀行員だった頃、窓口で資産運用の相談を受けるなかで、多くの方が特定口座やNISA口座を使い分けていることに気づきました。将来受け取る年金だけでは心もとないと感じ、ご自身で資産形成を考える方が増えていた実感があります。

一方で、資産運用の話をするなかで、厚生年金と国民年金の違いが話題になることもありました。年金の受取口座に振り込まれる金額を見て、思っていたより少ないと感じる方の声を聞いたこともあります。

こうした経験から感じるのは、ねんきん定期便の見込額を見て安心するだけでなく、ご自身で老後資金を上乗せする方法も並行して考えておく必要があるということです。

4. 老後資金を上乗せする3つのステップ

ここからは、NISAと個人型確定拠出年金(iDeCo)を使った老後資金の上乗せ方法を、3つのステップに分けて解説します。

4.1 ステップ1 NISAで運用益を非課税にする

NISAは、投資信託や株式などの運用益が非課税になる制度です。通常、金融商品を売却して得た利益には約20%の税金がかかりますが、NISA口座内で得た利益には課税されません。

2024年からはNISAのつみたて投資枠(年間120万円)と成長投資枠(年間240万円)を併用でき、非課税保有限度額は合計1800万円となっています。より具体的な積立シミュレーションは、下記の記事もあわせてご参考ください。

【新NISAシミュレーション】月10万円×15年積立+放置で資産はどう化ける?月3万円の少額戦略も公開

ただし、NISAには掛金そのものを所得控除する仕組みはなく、あくまで運用益が非課税になる制度である点は、iDeCoとの大きな違いです。

4.2 ステップ2 個人型確定拠出年金(iDeCo)の三重の税制メリットを生かす

iDeCoは、掛金の全額が所得控除(小規模企業共済等掛金控除)の対象になるほか、運用益が非課税になり、受け取るときも年金として受け取る場合は公的年金等控除、一時金として受け取る場合は退職所得控除の対象になります。

掛金の所得控除、運用益非課税、受取時の税優遇という三重の税制メリットがある点が、NISAとの違いです。

実際の控除額や受取時の扱いは加入者ごとの所得や受け取り方によって異なるため、詳しくは税務署や自治体の窓口で確認することをおすすめします。

4.3 ステップ3 特定口座と使い分けて出口戦略を考える

NISAとiDeCoは非課税のメリットが大きい一方、iDeCoは原則60歳まで引き出せません。

当面使う予定のない資金はiDeCoやNISAで長期の非課税運用に回し、近い将来に使う可能性がある資金は特定口座など引き出しやすい形で持っておくといった使い分けも一つの考え方です。

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NISAとiDeCoの税制メリットの違い(掛金の所得控除・運用益非課税・受取時の税優遇)を整理した比較図

iDeCo公式サイト、金融庁NISA特設ウェブサイトをもとにLIMO編集部作成

5. 【落とし穴】iDeCoとNISAのデメリットも押さえておきたい

ここまで紹介したメリットの裏側には、見落としやすいデメリットもあります。

iDeCoは、掛金を60歳まで引き出せないという制約があります。また、運用商品によっては元本割れのリスクがあるほか、口座管理手数料が継続的にかかる点もあらかじめ知っておきたいところです。

NISAも運用商品である以上、値下がりによって元本を割り込む可能性があります。加えて、iDeCoのような掛金の所得控除はないため、節税効果を目的にする場合はiDeCoとの違いを理解しておく必要があります。

中本 智恵

銀行員だった頃、NISAやiDeCoに関心を持つ方が増えている実感がありましたが、メリットだけを見て始めてしまい、あとから「思っていたのと違った」と感じる方も一定数いらっしゃいました。

とくにiDeCoは60歳まで引き出せない制約があるため、当面の生活費や近い将来に使う予定のあるお金まで回してしまうと、必要なときに困ってしまいます。

ねんきん定期便の見込額を確認したうえで、無理のない範囲でNISAやiDeCoを取り入れ、当面使わない資金から少しずつ始めていただければと思います。

6. まとめ 見込額を知ることが老後資金を考える第一歩

ねんきん定期便の見込額を見て安心することは、悪いことではありません。まずはご自身の見込額がどのような前提で算出されているのかを正しく理解することが、老後資金を考える第一歩になります。

そのうえで、NISAやiDeCoを使った資産形成を検討する場合は、税制の扱いや商品選びについて、金融機関の窓口や税務署、iDeCo公式サイトのコールセンターなどに相談しながら進めることをおすすめします。

ご自身の状況に合った選択肢を、焦らず考えていただければと思います。

参考資料

中本 智恵