7月から8月にかけては、後期高齢者医療制度の資格確認書などが手元に届き、医療費の窓口負担割合を目にする機会が増える時期でもあります。

通知に記載された負担割合を見て、年金収入がいくらまでなら1割のままなのか、いくらから2割負担になるのか、気になる方も多いでしょう。夫婦の場合は世帯でまとめて判定されるため、自分ひとりの年金額だけでは判断できない点も分かりにくいところです。

後期高齢者医療制度では、2022年10月から、一定以上の所得がある方の窓口負担割合が2割となっています。その目安は、単身世帯では年金収入200万円、夫婦など複数世帯では合計320万円です。

小西 雅美
後期高齢者医療の窓口負担割合について「自分がいつから2割になるのか分からない」という声をよく耳にします。判定の仕組みを知っておくだけで、届いた通知の見方も変わってきます。

本記事では、この基準がどのように判定されるのかを、単身世帯・複数世帯それぞれの具体例で整理します。

なお、本記事の内容は2026年7月時点の情報に基づきます。制度は今後変更される可能性があるため、最新の情報は厚生労働省やお住まいの自治体の窓口でご確認ください。

1. 【後期高齢者医療】窓口負担割合《1割・2割・3割》この記事の3つのポイント

  •  後期高齢者医療の窓口負担割合は「1割・2割・3割」の3区分で、判定は世帯単位で行われる
  •  単身世帯は年金収入200万円、複数世帯は合計320万円が2割負担の分岐点になる
  •  2割負担でも高額療養費制度により1カ月の自己負担には上限がある

2. 後期高齢者医療制度の窓口負担割合は「1割・2割・3割」の3区分

後期高齢者医療制度は、原則として75歳以上の方が加入する医療保険制度です。医療機関の窓口で支払う自己負担の割合は、所得に応じて次の3区分に分かれています。

窓口負担割合が2割となる方は、後期高齢者医療の被保険者全体のうち約20%です。

2.1 負担割合の判定は「世帯単位」で行われる

負担割合は、世帯内の後期高齢者医療の被保険者について、課税所得や年金収入等(前年中のもの)をもとに世帯単位で判定されます。前年の所得をもとに毎年見直されるため、昨年1割だった方が今年も1割とは限りません。

判定の対象になるのは、あくまで「後期高齢者医療の被保険者」の所得です。同居している現役世代の子どもなどの所得は、判定に影響しません。配偶者が75歳未満で後期高齢者医療の被保険者でない場合も、その配偶者の所得は判定に含まれません。また、住民税非課税世帯の方は1割負担です。

3. 窓口負担が「2割」になる基準

2割負担に該当するかどうかは、次の流れで判定されます。

※なお、課税所得が145万円以上ある場合は、このフローに入る前に「現役並み所得者(3割負担)」と判定されます。

3.1 基準1:課税所得28万円以上の方が世帯にいるか

世帯内の後期高齢者医療の被保険者のうち、課税所得28万円以上の方がいるかを確認します。1人もいなければ、世帯全員が1割負担です。

ここでいう課税所得とは、住民税納税通知書の「課税標準」の額を指します。前年の収入から、公的年金等控除や給与所得控除、基礎控除や社会保険料控除などの所得控除を差し引いた後の金額です。

3.2 基準2:「年金収入+その他の合計所得金額」が単身200万円・複数世帯320万円以上か

基準1に該当する方がいる世帯は、次に「年金収入+その他の合計所得金額」を確認します。

  • 世帯内の被保険者が1人(単身世帯):200万円以上なら2割
  • 世帯内の被保険者が2人以上(複数世帯):合計320万円以上なら世帯全員が2割

基準に達しない場合は1割負担です。

「年金収入」は公的年金等控除を差し引く前の収入額である一方、「その他の合計所得金額」は事業収入や給与収入等から必要経費や給与所得控除等を差し引いた後の金額を指します。「収入」と「所得」が組み合わさった基準である点を押さえておく必要があります。

小西 雅美
「年金収入+その他の合計所得金額」という基準は、言葉だけを見ると分かりにくく感じるかもしれません。ポイントは、年金には控除前の金額を、給与や事業などその他の収入には控除後の金額を、それぞれ当てはめるという点です。年金以外の収入がある方は、この違いを混同しないよう注意しましょう。

「年金収入」に遺族年金・障害年金は含まれない

判定に使う年金収入に、遺族年金や障害年金は含まれません。老齢年金などの課税対象となる年金の収入額で判定されます。

4. 【単身世帯】年金収入200万円が一つの目安になる

単身世帯の場合、年金収入200万円がボーダーラインの目安です。

なお、ここでいう単身世帯とは、一人暮らしという意味ではなく、世帯内の後期高齢者医療の被保険者が1人であることを指します。たとえば夫が75歳以上・妻が75歳未満の夫婦では、被保険者は夫1人のため、夫の年金収入等を200万円の基準で判定します。妻が75歳になり被保険者に加わると、2人の合計を320万円の基準で判定する形に変わります。

具体例で確認します(いずれも収入は老齢年金のみ・その他の所得なしと仮定)。

4.1 例1:年金収入200万円の場合

2つの基準に順番に当てはめます。

まず基準1の課税所得です。課税所得は、年金収入から公的年金等控除や基礎控除、社会保険料控除などを差し引いた金額です(ここでは社会保険料控除等を年15万円と仮定します)。

  • 課税所得=年金収入200万円−公的年金等控除110万円−基礎控除43万円−社会保険料控除等15万円=32万円

課税所得は28万円以上のため、基準1に該当します。

次に基準2です。

  • 年金収入200万円+その他の合計所得金額0円=200万円

200万円以上のため、基準2にも該当します。両方の基準を満たすため、この場合は2割負担です。

ただし、実際の控除額は人によって異なります。控除の合計が多く、課税所得が28万円未満になる場合は、年金収入が200万円以上でも1割負担にとどまります。

4.2 例2:年金収入195万円の場合

「年金収入+その他の合計所得金額」は195万円で、200万円未満です。この場合、課税所得の金額にかかわらず(現役並み所得者でなければ)1割負担となります。

5. 【複数世帯】夫婦の年金収入の合計320万円が目安になる

夫婦とも75歳以上の世帯では、2人の「年金収入+その他の合計所得金額」の合計で判定されます。

5.1 例3:夫の年金収入220万円・妻100万円の場合

世帯合計は320万円となり、収入基準(320万円以上)に該当します。夫の課税所得が28万円以上であれば、世帯全員が2割負担です。

ここで注意したいのは、妻自身の年金収入は100万円でも、世帯単位の判定によって妻も2割負担になるという点です。基準に該当すると、所得の低い配偶者を含めて世帯全員の負担割合が変わります。

5.2 例4:夫の年金収入220万円・妻95万円の場合

世帯合計は315万円で、320万円未満です。この場合、夫の課税所得が28万円以上であっても、世帯全員が1割負担となります。

例3との比較では、妻の年金収入が5万円違うだけで、世帯全員の負担割合が1割から2割へ変わることになります。

小西 雅美
世帯単位の判定は、思わぬ形で負担割合が変わる要因になります。次のページでは、2割負担になった場合でも医療費の負担を抑えられる「高額療養費制度」の仕組みを確認していきます。