8月14日は年金支給日です。2026年度の年金は、前年度から基礎年金が1.9%、厚生年金が2.0%増額されました。しかし、基礎年金は保険料の納付月数や免除期間に応じて、厚生年金は現役時代の給与や厚生年金保険の加入月数によって受給できる金額が変わります。なかには、受給額が月10万円未満の人も存在します。

そして、シニア世代の約半数は「生活が苦しい」と感じているとの調査結果もあるようです。こうしたなかで、これから老後生活を迎える人々はどのように備えをしていけばよいのでしょうか。この記事では、年金月10万円未満の人の割合やシニアの生活状況について解説します。

石上 ユウキ
年金を受給するシニアの多くは、額面の年金見込額だけを見て安心してしまいがちです。実際には税金や社会保険料が差し引かれるため、手取り額はそれより少なくなる点に注意が必要です。

あわせて、老後に向けてどのように備えていけばよいか、元公務員・FPの視点からのアドバイスもご紹介します。

なお、厚生年金の受給額分布に関する詳しい解説は下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。

「年金だけで生活」できているシニアは4割のみ?厚生年金「月10万円未満」が約19%…いまどきシニア世代の平均受給額はいくらか
「年金だけで生活」できているシニアは4割のみ?厚生年金「月10万円未満」が約19%…いまどきシニア世代の平均受給額はいくらか

1. 3つのポイント

  •  年金月10万円未満の人は全体の約19%(約5人にひとり)。女性は約4割に上る
  •  高齢者世帯の52.1%が「生活が苦しい」と回答。夫婦・単身世帯とも家計収支は赤字傾向
  •  元公務員・FPが老後に向けて確認したい3つのポイントを解説

2. 「年金月10万円未満」は約5人にひとり

まずは、厚生労働省の「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとに、厚生年金(基礎年金含む)の受給額が月10万円未満の人がどれくらいいるのか見てみましょう。

厚生年金 月額受給権者数(男女別)1/3

厚生年金 月額受給権者数(男女別)

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

石上 ユウキ
収入は「平均」だけで語ると実態を見誤りやすいものです。年金額も同様で、平均月額15万円という数字だけでなく、男女差や個人差が大きい点を踏まえて備えを考える必要があります。
  • 全体:1608万5696人
  • 月10万円未満:305万3974人

参考

  • 〈全体〉平均年金月額:15万289円
  • 〈男性〉平均年金月額:16万9967円
  • 〈女性〉平均年金月額:11万1413円

割合に換算すると、全体の約19%となります。よって、約5人にひとりは年金が月10万円未満といえます。

男女別に見てみると、月10万円未満の割合は男性が約9.3%、女性が約38.2%です。女性のほうが年金月10万円未満の人が多いのは、厚生年金への加入期間や現役時代の賃金、キャリアの歩み方や働き方といった違いが影響していると考えられます。

一方で、平均受給額は月約15万円です。月10万円未満の年金は平均以下の金額であるため、家計のやりくりが難しいと感じる人もいると考えられます。

では、実際に生活が苦しいと感じている世帯はどれくらいあるのか、次章で解説します。

3. 「生活が苦しい」高齢者世帯は約半数

厚生労働省の「2025年 国民生活基礎調査」によると、65歳以上の高齢者世帯の生活意識は以下のとおりです。

石上 ユウキ
「生活が苦しい」と感じる世帯は決して少なくありません。特に高齢者世帯は収入が年金中心になるため、支出が想定より増えたときに家計の立て直しが難しくなりやすい傾向があります。
  • 大変苦しい:21.0%
  • やや苦しい:31.1%
  • 普通:41.7%
  • ややゆとりがある:5.4%
  • 大変ゆとりがある:0.8%

「大変苦しい」と「やや苦しい」を合わせた割合は、52.1%です。高齢者世帯の半数以上が、現在の生活状況が苦しいと感じています。

一方、全世帯の平均を見てみると、生活が苦しいと感じている世帯の割合は55.4%と、高齢者世帯の割合よりも多くなっています。高齢者世帯だけでなく、どの世帯も半数ほどが生活の苦しさを感じているのです。

実際の生活のゆとりは、世帯人数や医療費・住居費などの支出、保有する資産や収入によって変わります。たとえ年金が月10万円でも、資産が十分にあれば比較的ゆとりのある生活を送れるかもしれません。しかし、高齢者世帯の約半数が生活の苦しさを実感していることからも、これから老後生活を迎える人々は、十分な備えを用意することが求められるでしょう。

次章では、高齢者の収支状況を詳しく見ていきます。

4. 【収支】高齢者の生活状況は?

総務省統計局の「家計調査」によると、2025年の65歳以上の夫婦世帯および単身世帯の平均的な家計収支は、以下のとおりです。

65歳以上の夫婦世帯および単身世帯の家計収支3/3

65歳以上の夫婦世帯および単身世帯の家計収支

出所:総務省統計局「家計調査報告 〔 家計収支編 〕 2025年(令和7年)平均結果の概要」

石上 ユウキ
可処分所得と消費支出の差額が赤字というのは、決して他人事ではなく、多くの高齢者世帯に共通する構造的な課題だと感じます。

65歳以上の夫婦世帯(無職)

  • 実収入:25万4395円
  • 可処分所得:22万1544円
  • 消費支出:26万3979円
  • 差額(可処分所得-消費支出):▲4万2434円

65歳以上の単身世帯(無職)

  • 実収入:13万1456円
  • 可処分所得:11万8465円
  • 消費支出:14万8445円
  • 差額分(可処分所得-消費支出):▲2万9980円

夫婦世帯・単身世帯ともに、実収入から税金・社会保険料を差し引いた「可処分所得」と消費支出の差額は赤字になっています。毎月のように赤字が発生する場合は、実収入以外の資産や貯蓄で毎月の支出を賄っていかなければなりません。通院回数が多くなり医療費が増えるといったことがあれば、支出額はさらに増加するため、家計管理はより難しくなるでしょう。

上記の金額はあくまで平均額ですから、人によって収支の状況は変わります。自分の収入・支出を把握するのは、年金生活に入っても重要といえるでしょう。

次章では、元公務員・FPの視点から、老後に向けて確かめたいポイントを解説します。