8月は公的年金の支給月です。年金が振り込まれるこの時期になると、「自分の年金額は平均と比べて多いのか」「国民年金と厚生年金ではどのくらい差があるのか」と気になる方も多いのではないでしょうか。

松本 真奈
生命保険会社で幅広い世代のライフプランニングに携わってきた経験からも、「年金だけで足りるのか」という不安は年代を問わずよく伺うテーマです。まずは公的年金の仕組みと実際の受給実態を正しく押さえておきましょう。

日本の公的年金制度は、国民年金と厚生年金から成る2階建ての仕組みとなっており、加入する制度や現役時代の働き方によって受給額には違いが生じます。

本記事では、公的年金制度の基本的な仕組みを確認したうえで、高齢者世帯の収入状況や、国民年金・厚生年金の平均受給額、さらに厚生年金の受給額分布をもとに、公的年金の実態について詳しく見ていきます。

あわせて、まとまった資金の運用に悩む50代後半の会社員の相談事例や、58歳から70歳までNISAで積み立てた場合のシミュレーションもご紹介します。将来の資産づくりの参考としてお役立てください。

※本記事は、一部のデータを『【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説』から引用しています。

この記事の3つのポイント

  •  高齢者世帯の約6割は、年金以外の収入も組み合わせながら生活している
  •  厚生年金の平均受給額は月15万289円、国民年金は月5万9310円
  •  厚生年金受給者では「月10万円未満」が19.0%、「月20万円以上」が18.8%

 

公的年金は「2階建て」の仕組み

日本の公的年金制度は「2階建て」1/5

厚生年金と国民年金の仕組み

出所:日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」等を参考にLIMO編集部作成

公的年金は、原則として偶数月の15日に、2カ月分ずつ支給され、支給日が土日祝日にあたる場合は、その直前の平日に振り込まれます。

日本の公的年金制度は、土台となる「国民年金(基礎年金)」と、その上に積み上がる「厚生年金」の2階建て構造です。

国民年金は、日本に住む人が原則加入する基礎となる年金で、厚生年金は会社員や公務員などが国民年金に上乗せして加入する制度です。

それぞれの制度の概要を確認しておきましょう。

国民年金(1階部分)

  • 加入対象:原則として、日本に住む20歳以上から60歳未満の全員
  • 年金保険料:全員一律(※1)
  • 老後の受給額:40年間(480カ月)欠かさず納めれば満額受給(※2)
  • 被保険者:第1号~第3号(※3)

※1 国民年金保険料の月額:2026年度 1万7920円
※2 国民年金(老齢基礎年金)の月額:2026年度 7万608円
※3 第1号被保険者は農業者・自営業者・学生・無職の人など、第2号被保険者は厚生年金の加入者、第3号被保険者は、第2号被保険者に扶養されている配偶者

厚生年金(2階部分)

  • 加入対象:会社員や公務員、またパート・アルバイトで特定適用事業所(※4)で働き一定要件を満たした人が、国民年金に上乗せで加入
  • 年金保険料:収入に応じて決まる報酬比例制(※5)
  • 老後の受給額:年金加入期間や納付済保険料によって、個人差が出る
  • 被保険者:第1号~第4号(※6)

※4 1年のうち6カ月間以上、適用事業所の厚生年金保険の被保険者(短時間労働者は含まない、共済組合員を含む)の総数が51人以上となることが見込まれる企業など
※5 保険料額は標準報酬月額(上限65万円)、標準賞与額(上限150万円)に保険料率をかけて計算される
※6 第1号は、第2号~第4号以外の、民間の事業所に使用される人、第2号は国家公務員共済組合の組合員、第3号は地方公務員共済組合の組合員、第4号は私立学校教職員共済制度の加入者

次章では、公的年金・恩給のみで生活している高齢者世帯の割合について、最新の調査結果をもとに見ていきましょう。

最新調査で見る「高齢者世帯の暮らし」年金だけで生活している人はどれくらい?

厚生労働省「2025(令和7)年 国民生活基礎調査の概況」によると、公的年金・恩給が総所得の100%を占める世帯は41.3%でした。

一方で、残る58.7%の世帯は、公的年金・恩給以外の収入も得ながら生活していることになります。

公的年金・恩給が総所得に占める割合の内訳を見ると、「80~100%未満」が17.1%、「60~80%未満」が14.1%、「40~60%未満」が13.6%、「20~40%未満」が9.7%、「20%未満」が4.2%となっています。

年金以外の収入としては、働いて得る収入のほか、企業年金や個人年金、資産運用による収入などが挙げられます。

公的年金を収入の中心としながらも、複数の収入源を組み合わせて暮らしている世帯は少なくありません。

この結果からも、老後の生活を考える際は、年金の平均受給額だけでなく、年金以外の収入や毎月の支出も含めて確認することが大切だといえるでしょう。

このように、公的年金は老後の生活を支える重要な収入源となっていますが、実際には年金以外の収入も組み合わせながら生活している世帯が約6割を占めています。

では、公的年金を受け取っている人は、実際にどのくらいの金額を受給しているのでしょうか。

次章では、厚生労働省の一次資料をもとに、国民年金と厚生年金の平均年金月額を確認していきます。

厚生年金・国民年金の平均受給額

厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとに、厚生年金と国民年金の平均年金月額を見ていきましょう。

※この記事で紹介する厚生年金額は、会社員など民間企業に勤務していた人が受け取る「厚生年金保険(第1号)」で、国民年金(老齢基礎年金)を含んだ金額です。

厚生年金・国民年金の平均年金月額(2024年度末現在)3/5

厚生年金・国民年金の平均年金月額

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」

厚生年金の平均年金月額

  • 男女全体:15万289円
  • 男性:16万9967円
  • 女性:11万1413円

※ここでは、会社員など民間の事業所で雇用されていた人が受け取る「厚生年金保険(第1号)」の年金月額を紹介しています。

国民年金の平均年金月額

  • 男女全体:5万9310円
  • 男性:6万1595円
  • 女性:5万7582円

国民年金は保険料が一律のため、受給額にも大きな差は生じにくく、平均額は男性が6万円台、女性が5万円台となっています。

そのため、国民年金のみで月10万円以上を受給するケースは現実的にはほとんどありません。

一方、厚生年金は加入期間や現役時代の収入に応じて保険料が決まるため、受給額にも大きな個人差があります。

平均額を見ると、厚生年金は15万289円、国民年金は5万9310円で、公的年金だけで老後の生活を支えられるかどうかは、受給額や生活費によって異なります。

たとえば、世帯内に月20万円以上の年金を受け取る人がいれば、生活費の多くを年金で賄える可能性があります。

一方、国民年金のみの場合は、年金だけで生活費をまかなうのが難しいケースも少なくありません。

では実際に、厚生年金(国民年金を含む)の受給者では、「月10万円未満」と「月20万円以上」のどちらが多いのでしょうか。

厚生年金は「月10万円未満」と「月20万円以上」どちらが多い?

厚生年金の受給額は、加入期間や現役時代の収入によって大きく異なります。

ここでは、厚生年金(国民年金を含む)の受給額分布を確認します。

厚生年金の受給額ごとの受給権者数4/5

厚生年金の受給額ごとの受給権者数

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

厚生年金の受給額ごとの人数をチェック

  • 1万円未満:4万3399人
  • 1万円以上~2万円未満:1万4137人
  • 2万円以上~3万円未満:3万5397人
  • 3万円以上~4万円未満:6万8210人
  • 4万円以上~5万円未満:7万6692人
  • 5万円以上~6万円未満:10万8447人
  • 6万円以上~7万円未満:31万5106人
  • 7万円以上~8万円未満:57万8950人
  • 8万円以上~9万円未満:80万2179人
  • 9万円以上~10万円未満:101万1457人
  • 10万円以上~11万円未満:111万2828人
  • 11万円以上~12万円未満:107万1485人
  • 12万円以上~13万円未満:97万9155人
  • 13万円以上~14万円未満:92万3506人
  • 14万円以上~15万円未満:92万9264人
  • 15万円以上~16万円未満:96万5035人
  • 16万円以上~17万円未満:100万1322人
  • 17万円以上~18万円未満:103万1951人
  • 18万円以上~19万円未満:102万6888人
  • 19万円以上~20万円未満:96万2615人
  • 20万円以上~21万円未満:85万3591人
  • 21万円以上~22万円未満:70万4633人
  • 22万円以上~23万円未満:52万3958人
  • 23万円以上~24万円未満:35万4人
  • 24万円以上~25万円未満:23万211人
  • 25万円以上~26万円未満:15万796人
  • 26万円以上~27万円未満:9万4667人
  • 27万円以上~28万円未満:5万5083人
  • 28万円以上~29万円未満:3万289人
  • 29万円以上~30万円未満:1万5158人
  • 30万円以上~:1万9283人

厚生年金(国民年金を含む)の受給額分布をみると、割合は次のようになっています。

  • 月額10万円未満:19.0%
  • 月額20万円以上:18.8%

「月20万円以上」を受け取る人よりも、「月10万円未満」の人の割合がわずかに高いことが分かります。

現役時代より収入が減少する人が多いことを踏まえると、公的年金だけに頼るのではなく、早いうちから老後資金の準備を進めておくことが重要といえるでしょう。

【参考】厚生年金(男女全体)の受給額分布

  • 10万円未満の割合:19.0%
  • 10万円以上の割合:81.0%
  • 15万円以上の割合:49.8%
  • 20万円以上の割合:18.8%
  • 20万円未満の割合:81.2%
  • 30万円以上の割合:0.12%

なお、ここで紹介した割合は、厚生年金(国民年金を含む)を受給している人のみを対象としたデータです。

国民年金のみを受給している人も含めると、「月10万円未満」の割合はさらに高くなり、「月20万円以上」の割合はより低くなると考えられます。

年代別(60歳代・70歳代・80歳代・90歳以上)の平均年金月額をより詳しく知りたい方はこちらの記事もご参考ください。
4月分(6月支給分)から年金が増えます!老齢年金一覧表「60歳代・70歳代・80歳代・90歳以上」の平均年金月額はいくら? いまどきシニアの平均月額を整理

公的年金の仕組みと受給実態を確認し、老後資金を考える

本記事では、公的年金の仕組みや、高齢者世帯の収入状況、国民年金・厚生年金の平均受給額、厚生年金の受給額分布について解説しました。

高齢者世帯の約6割は年金以外の収入も組み合わせながら生活しており、公的年金だけで生活設計を考えるのが難しいケースも少なくありません。

そのため、平均額だけで判断するのではなく、自身の受給見込みや生活費を確認しながら、老後の収支を早めに考えておくことが大切でしょう。

中本 智恵
銀行員時代、窓口では「年金だけで足りるか不安」というご相談を数多くいただきましたが、実際には年金の平均額だけでなく、退職金や貯蓄、働き方によって老後の家計は大きく変わります。
特に厚生年金は加入期間や現役時代の収入によって受給額に大きな差が出るため、平均額を見て一喜一憂するのではなく、ねんきん定期便やねんきんネットでご自身の見込額を確認しておくことをおすすめします。
また、高齢者世帯の約6割が年金以外の収入も組み合わせて生活している実態からも分かるとおり、年金だけに頼らない資金計画を早いうちから立てておくことが、老後の安心につながります。
次章では、まとまった資金の運用に悩む50代後半の会社員の相談事例や、58歳から70歳までNISAで積み立てた場合のシミュレーションをご紹介します。