2. 住民税非課税世帯が受けられる主な優遇措置5つ
前述したように、老齢年金生活者支援給付金を受け取るための条件の一つとして、世帯全員の市町村民税が非課税であることがあります。
住民税非課税世帯になると、老齢年金生活者支援給付金のほかにも、社会保険料や医療費、介護費などの負担が軽くなる場合があります。
ここからは、住民税非課税世帯が受けられる主な優遇措置を5つ確認していきましょう。
2.1 1:国民健康保険料・後期高齢者医療保険料が軽減される
国民健康保険では、世帯の所得が一定基準を下回る場合、加入者数に応じて課される均等割が7割・5割・2割軽減されます。
住民税が非課税であるかだけでなく、世帯主や国民健康保険加入者などの所得をもとに判定されます。
75歳以上の人などが加入する後期高齢者医療制度にも、世帯所得に応じて均等割を7割・5割・2割軽減する仕組みがあり、後期高齢者医療の保険料率や均等割額は、都道府県の広域連合によって異なります。
2.2 2:65歳以上の介護保険料が低い段階になる
65歳以上の介護保険料は、本人や世帯の住民税課税状況、年金収入、その他の所得などに応じた所得段階によって決まります。世帯全員が住民税非課税の場合は、低い保険料段階が適用される可能性があります。
ただし、介護保険料の基準額や各段階の金額は市区町村ごとに異なります。
住民税非課税世帯でも、本人の年金収入などによって保険料が変わるため、自治体から届く介護保険料決定通知書を確認しましょう。
2.3 3:高額療養費の自己負担限度額が低くなる
高額療養費制度は、1カ月に医療機関や薬局で支払った医療費が一定の上限を超えた場合に、超過分が支給される制度で、上限額は年齢や所得によって異なります。
2026年8月から、70歳以上の住民税非課税世帯では、高額療養費の自己負担限度額が月額2万5700円、外来のみの場合は月額1万1000円となります。
さらに、住民税非課税世帯のうち所得が一定以下の人は、自己負担限度額が月額1万5700円、外来のみの場合は月額8000円です。
また、2026年8月からは月ごとの上限に加え、8月から翌年7月までを対象とした年間上限も設けられました。
実際の区分や手続きは、加入している健康保険へ確認しましょう。
2.4 4:幼児教育・保育の利用料が無償化となる
住民税非課税世帯では、保育所や認定こども園などを利用する0歳から2歳児クラスの利用料が無料になります。
なお、3歳から5歳児クラスは、所得にかかわらず全世帯が無償化の対象です。
留意点として、送迎費や食材料費などは原則として保護者負担となります。
2.5 5:高等教育の授業料減免・給付型奨学金を受けられる
住民税非課税世帯の学生は、一定の要件を満たすと、高等教育の修学支援新制度を利用できます。対象となる大学、短期大学、高等専門学校、専門学校では、授業料・入学金の免除または減額に加え、返済不要の給付型奨学金を受けられます。
より詳しい優遇制度の全体像を知りたい方は、「住民税非課税世帯」を対象とした「優遇措置」8選 《年金・給与》年収いくらで該当するのか境界線も見ておこう 年金155万・給与110万が分かれ目?もあわせてご覧ください。
2.6 【シミュレーション】高額療養費の限度額、外来と入院ではどれだけ差がつく?
2026年8月からの高額療養費の自己負担限度額をもとに、外来のみのケースと入院を含むケースで、仮に毎月上限まで医療費がかかり続けた場合の年間差額を試算してみましょう。70歳以上・住民税非課税世帯の基本区分(月額2万5700円/外来のみ月額1万1000円)で計算します。
- 入院を含む場合の月額上限:2万5700円
- 外来のみの場合の月額上限:1万1000円
- 月あたりの差額:2万5700円-1万1000円=1万4700円
- 12カ月分の差額に換算すると:1万4700円×12カ月=17万6400円
実際に毎月上限額に達するケースは多くありませんが、入院が続くなどして負担が重くなった場合、外来のみのケースと比べて年間17万円以上の差が生じうる計算になります。2026年8月からは年間上限も新設されたため、複数月にわたって高額な医療費がかかる見通しがある場合は、加入している健康保険にあらかじめ相談しておくと安心です。
「住民税非課税世帯」というひとつの言葉には、実はいくつもの制度がぶら下がっています。今回ご紹介した5つの優遇は、それぞれ判定の仕組みが異なります。
特に見落とされやすいのが、介護保険料や国民健康保険料の軽減です。これらは住民税の非課税・課税だけでなく、年金収入やその他の所得の水準によって段階がさらに細かく分かれています。「非課税だから一番軽い区分のはず」と思い込まず、実際に届く決定通知書の金額を確認する習慣をつけておくとよいでしょう。
また、老齢年金生活者支援給付金の請求書は基本的にご自身での手続きが必要です。制度を知っているだけでは受け取れないため、対象になりそうだと感じた方は、まず日本年金機構から案内が届いていないかを確認し、届いていない場合は年金事務所やねんきんダイヤルに問い合わせてみることをおすすめします。
3. 給付金や軽減制度の条件を個別に確認しよう
本記事では、老齢年金生活者支援給付金の支給要件や給付額に加え、住民税非課税世帯が受けられる主な支援内容について解説しました。
老齢年金生活者支援給付金を受け取るには、65歳以上で老齢基礎年金を受給していることに加え、世帯全員が市町村民税非課税で、前年の年金収入とその他の所得が基準以下である必要があります。
住民税非課税世帯になると、健康保険料や介護保険料の軽減、高額療養費の自己負担上限が課税世帯より低く設定されるなど、負担が軽くなる場合があります。
「住民税が非課税になったから自動的にすべての優遇を受けられる」と考えず、届いた通知書を確認し、利用できる制度を個別に確認しましょう。
参考資料
- 厚生労働省「年金生活者支援給付金制度 特設サイト」
- 厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」
- 厚生労働省「国民健康保険の保険料・保険税について」
- 板橋区「介護保険料の軽減制度」
- 日本年金機構「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度」
- こども家庭庁「幼児教育・保育の無償化概要」
- 文部科学省「高等教育の修学支援新制度」
- 厚生労働省「高額療養費制度の見直しについて」
- LIMO「年金に上乗せでもらえる「年金生活者支援給付金」とは?対象者・給付額・申請方法を解説 緑色・薄緑色・薄橙色の封筒が届いたら確認」
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中本 智恵
