3. 【オルカン vs S&P500】100万円を「30年放置」最終資産はいくら変わる?

実績の騰落率を年率に換算し、初期投資額100万円を追加投資なしで30年間置いた場合の最終資産を計算しました。

※将来の税金やその他の費用は考慮していません。

3.1 実績の年率をそのまま伸ばすと2億円を超える

まず、騰落率を年率に直します。5年の騰落率から換算すると、オルカンは年率19.75%、S&P500は年率21.59%になります。

この5年の年率をそのまま30年間続いたものとして計算すると、次のようになります。

  • オルカン(年率19.75%):100万円 → 約2億2308万円
  • S&P500(年率21.59%):100万円 → 約3億5200万円

差は約1億2892万円です。

3.2 この数字をそのまま受け取ってはいけない

100万円が30年で2億円を超える。数式の上ではそうなりますが、これを将来の見通しとして扱うのは無理があります。

この5年間は株価上昇に加え、円安も円ベースのリターンを押し上げました。

同じ条件が30年続くと考える根拠はありません。むしろ、こうした計算が示しているのは将来の金額ではなく、「高い年率を長期間に当てはめると、現実離れした数字が簡単に出てしまう」という複利の性質のほうです。

3.3 年率3〜7%に置き直してみる

そこで、幅を持たせて計算し直します。長期運用の参考例として、資産構成の異なるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の実績を見てみます。

ただし、GPIFは株式と債券を組み合わせているため、オルカンやS&P500と単純比較はできません。

2026年度第1四半期末時点で、市場運用を開始した2001年度以降の収益率は年率4.95%です。株式と債券を半分ずつ、国内と海外に振り分けた運用で、四半世紀かけてこの水準でした。

これを踏まえ、年率3〜7%で100万円・30年を計算すると次のようになります。

  • 年率3%:30年後 約243万円
  • 年率4%:30年後 約324万円
  • 年率5%:30年後 約432万円
  • 年率6%:30年後 約574万円
  • 年率7%:30年後 約761万円

※野村證券「資産運用シミュレーション「みらい電卓」~運用編~」をもとに筆者作成

GPIFの年率4.95%を当てはめると、30年後は約426万円です。

ここで注目したいのは、1%刻みの差額が水準とともに膨らむことです。年率3%と4%の差は約82万円ですが、6%と7%の差は約187万円と2倍以上になります。

結局、最終資産額を大きく左右するのが運用利回りで、それを事前に選ぶことは誰にもできません。

4. 元証券会社勤務FPからのアドバイス「30年の長期運用」成功させる3つの条件

ここまでは数字の話でした。ただ、証券会社で個人のお客様を担当していた経験から申し上げると、この試算がそのとおりになるかどうかを決めるのは、商品選びではなく「30年間そのままにしておけるかどうか」です。

当時の経験と、15年以上相場を見てきた立場から、3点お伝えします。

4.1 商品を決める前に「売らない条件」を決めておく

窓口で最も多かった相談は、どれを買うかではなく、下がったときにどうすればよいかというものでした。買うときは誰でも冷静ですが、資産が2割、3割と減っている局面では判断が変わります。

先ほど確認したとおり、直近5年は株高と円安が重なった恵まれた期間でした。逆方向に振れる局面も当然あります。そのときに売らずに済むかどうかは、事前にどこまで想定していたかで決まります。

「どの程度の下落までなら生活や心理面に支障なく保有を続けられるか」を事前に考えておくと、あとの判断がぶれにくくなります。

4.2 相場以外の理由で取り崩すことになる場合も多い

意外に見落とされやすいのが、生活側の事情で現金が必要になるケースです。教育費、住宅、家族の介護、転職や独立といった出来事は、相場とは無関係にやってきます。

100万円を30年動かさないと決めるなら、その100万円は当面使う予定のないお金である必要があります。

生活を守るための資金を別に確保したうえで、余った分を回す。順番を逆にすると、いちばん相場が悪いときに現金が必要になり、結果として下落局面で手放すことになりがちです。この順番は、どちらの商品を選んだかとは関係なく効いてきます。

4.3 「どちらか一方」に絞らなくてもよい

両方を持つという選択もあります。全世界株式は米国を6割ほど含んでいるため、両方を持てば米国の比重がさらに高まる形になります。

この点を理解したうえでなら、選べずに始められないよりは、両方少しずつ始めて様子を見るほうが前に進みます。

大切なのは、自分がどちらを選んだのかと、その理由を覚えておくことです。理由を持たずに選んだ商品は、下落局面で持ち続ける根拠がなくなります。

範囲を広く取りたいから全世界株式にした、米国企業の成長に絞りたいからS&P500にした。こうした自分なりの説明がひとつあれば、それが長期保有の支えになります。

5. まとめにかえて

直近5年の騰落率はオルカンが+146.27%、S&P500が+165.72%でした。年率に直すとそれぞれ19.75%と21.59%になり、この年率を30年間伸ばすと2億円を超える金額が出てきます。

ただしそれは、株高と円安が重なった5年間がそのまま続いた場合の計算にすぎません。

仮に年率3〜7%で置き直すと、100万円の30年後は約243万円から約761万円の範囲に収まります。ここでも、最終資産を決めるのは商品名ではなく年率であり、それを事前に選ぶことはできません。

一方、非課税制度を使うか、生活資金と分けて置いておけるか、下落したときに売らずにいられるか。この3つは自分で決められます。

年率5%・30年のケースでは、非課税かどうかだけで約67万円の違いが出ました。商品選びで悩み続けて数年が過ぎるより、決められる部分を整えて動き出すほうが、30年後の結果に効いてくるように思います。

新NISAの枠が広がったことで、焦って大きな金額を投資に回してしまう方も見受けられますが、生活の変化に備える手元の現金は非常に重要です。とくに子育てや介護を控えている世代は、将来の大きな出費を見据えたうえで投資額を決定しましょう。迷ったときは少額から始め、ご自身のライフスタイルに合った無理のない資産形成を続けてくださいね。
村岸 理美

参考資料

加藤 聖人