新NISAで投資先を選ぶとき、「オルカン」と「S&P500」のどちらにするかで手が止まる方は少なくないと思います。
どちらも人気があり、どちらを選んでも大きく外すことはないと言われるだけに、かえって決めきれないという声もよく耳にします。
そこで本記事では、両ファンドの最新の騰落率を年率に直したうえで、初期投資額100万円を30年間そのまま置いた場合の最終資産を試算します。実際に計算してみると、そのまま受け取るわけにはいかない数字が出てきました。
なお、新NISAの制度概要と、オルカン・S&P500の構成の違いについては、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。
- 新NISAの最新の利用状況と買付額の推移
- オルカンとS&P500の特徴と実績の違い
- 100万円を30年間運用した際の現実的な最終資産額
1. 買付額が急増する新NISA、口座数2821万・買付額は累計「71兆円」
商品を選ぶ前に、今この制度がどう使われているのかを見ておきます。
1.1 買付額は政府目標をすでに超えている
金融庁「NISA口座の利用状況に関する調査結果(令和7年12月末時点)」が令和8年7月3日に公表されました。これによると、NISA口座数は2025年12月末で2821万口座、買付額は累計71兆円です。
政府が掲げる目標は、2027年12月末までに3400万口座・56兆円となっています。買付額のほうは、期限を2年残して目標を大きく上回っていることになります。
新NISAが始まる直前の2023年12月末と比べてみると、当時は2125万口座・35兆円でした。この2年で口座数は約33%増えた一方、買付額は約103%増えています。伸び方がまったく違います。
参考として累計買付額を口座数で単純に割ると、2023年末は約165万円、2024年末は約207万円、2025年末は約252万円となります。
旧NISAと新NISAでは集計対象が異なるため、この数字をそのまま「1口座あたりの投資額が増えた」と解釈することはできませんが、その背景には非課税枠の拡大があると考えられます。
新NISAの主な特徴をおさらいしておきましょう。
1. 非課税で保有できる期間に上限がなくなりました。
2. 「つみたて投資枠」と「成長投資枠」を同時に利用できます。
3. 年間の投資上限額は、つみたて投資枠が120万円、成長投資枠が240万円です。
4. 生涯にわたる非課税保有限度額は合計1800万円で、そのうち成長投資枠は最大1200万円まで利用でき、売却すれば枠が復活します。
5. つみたて投資枠では、「長期の積立・分散投資」に適していると国が認めた投資信託などが対象です。
6. 成長投資枠では、上場株式や投資信託など、より幅広い商品に投資ができます。
注目したいのは3点目と4点目です。年間で最大360万円、生涯で1800万円まで非課税で持てるようになり、旧制度より一度に投じられる金額がはるかに大きくなりました。
1口座あたりの買付額が2年で1.5倍を超えた背景には、この枠の広さがあると考えられます。
1.2 2本のファンドは何が違うのか
積み増す人が増えているからこそ、「何を買うか」の重みも増しています。ここで「S&P500」と「オルカン」の中身を確認しておきます。
【eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)】
- 設定日:2018年7月3日
- ベンチマーク:S&P500指数(配当込み、円換算ベース)
- 信託報酬:年率0.08140%(税抜年率0.07400%)以内
【eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)】
- 設定日:2018年10月31日
- ベンチマーク:MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(配当込み、円換算ベース)
- 信託報酬:年率0.05775%(税抜年率0.0525%)以内
投資先の範囲は異なりますが、まったくの別物というわけではありません。両者の中身の違いは次のとおりです。
S&P500:米国優良企業への集中投資
S&P500は米国の主要企業約500社のみで構成されているため、NVIDIAやAppleといった上位企業の組入比率が非常に高くなります。米国のハイテク株が好調な局面(例えば過去5年間)では、この米国株への「集中度」が、高いリターンを生み出す原動力となりました。
オルカン:米国を中核としたグローバル分散投資
一方、オルカンも構成の約6割は米国株ですが、残りの約4割には日本や欧州、新興国などが含まれています。そのため、NVIDIAのようなトップ銘柄の比率はS&P500と比較して低く抑えられることになります。
重なっている部分が大半を占め、残りの4割をどう見るかが分かれ目になる、ということです。この4割が効いてくる局面と、足を引っ張る局面の両方があります。
このあと見ていく騰落率も、この点を頭に置いておくと違いが読み取りやすくなります。
2. 【オルカン vs S&P500】騰落率で比べる2本の運用成績「2つのファンドの違いは?」
では、実際の成績はどうだったのでしょうか。三菱UFJアセットマネジメントが公表している騰落率(分配金再投資)を、期間別に並べてみます。
いずれも2026年8月13日を基準日とした数字です。
2.1 期間別の騰落率を並べる
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)の騰落率
1ヵ月:+0.95%
3ヵ月:+6.03%
6ヵ月:+16.28%
1年:+33.18%
3年:+94.30%
5年:+146.27%
設定来:+287.98%
eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)の騰落率
1ヵ月:+0.61%
3ヵ月:+6.00%
6ヵ月:+18.74%
1年:+30.88%
3年:+96.97%
5年:+165.72%
設定来:+354.24%
設定来騰落率はS&P500の方が高くなっていますが、両ファンドは設定日が異なるため、単純比較には注意が必要です。
2.2 期間の取り方で結果は入れ替わる
直近1年はオルカンが+33.18%、S&P500が+30.88%で、オルカンが2.30ポイント上回りました。1ヵ月と3ヵ月でもオルカンがわずかに上です。3年では両者ほぼ互角と言ってよいでしょう。
つまり、測る期間によって優劣が入れ替わるということです。全世界株式に含まれる米国以外の4割が、局面によっては足を引っ張り、局面によっては下支えします。
この前提を持ったうえで、次の試算に進みます。


