4. 名目と実質はどう違うのか
ふたつの言葉の関係を整理しておきます。
4.1 実質賃金は物価の伸びを差し引いたもの
名目賃金は、実際に支払われた金額の増減です。実質賃金は、そこから物価の伸びを差し引いて、同じ金額でどれだけのものが買えるかを示します。
7月は名目が4.7%増で実質が2.4%増でしたので、その差の分だけ物価が上がっていたことになります。
4.2 手取りとは別の指標
実質賃金は税金や社会保険料を引く前の金額をもとに計算されています。手取りがどれだけ増えたかを示すものではありません。
額面が増えると所得税と社会保険料も増えますので、手取りの伸びは名目の伸びよりも小さくなります。
5. 役職が上がっても実質で増えるとは限らない
役職別の数字と実質賃金を重ねると、見え方が変わります。
5.1 部長級の伸びは1.4%だった
令和7年賃金構造基本統計調査で、部長級の所定内給与額の対前年増減率は1.4%でした。課長級と係長級の3.4%、非役職者の2.5%と比べると小さくなっています。
この1.4%という伸びは、賃金構造基本統計調査の調査期日である令和7年6月時点のものです。毎月勤労統計調査の実質賃金とは調査も時点も違いますので、そのまま引き算はできません。
5.2 物価の伸びを上回っているかを見る習慣をつける
それでも、自分の給与が前年から何%増えたのかを、物価の伸びと並べて見る意味はあります。
昇進で額面が増えても、物価の伸びのほうが大きければ生活の余裕は増えません。逆に額面の伸びが小さくても、物価が落ち着いていれば実感は変わります。
6. 自分の給与で確かめる手順
公表された数字を自分の話に置き換える方法です。
6.1 去年の同じ月の給与明細と比べる
賞与の有無で月ごとの額が動きますので、前の月ではなく去年の同じ月と比べます。7月や12月は賞与が入る月ですので、内訳を分けて見てください。
6.2 増えた率を出す
今年の額を去年の額で割って1を引けば、前年同月比が出ます。この率が、公表されている名目賃金の伸びにあたります。
6.3 物価の伸びと並べる
総務省が毎月公表する消費者物価指数の前年同月比と並べれば、自分にとっての実質の増減がおおよそつかめます。
公表されている実質賃金は全国の平均です。自分の給与の伸びが平均と同じとは限りませんので、手元の数字で確かめるほうが確実です。
7. 数字を読むときに気をつけたいこと
ふたつの調査を並べるときの注意点です。
7.1 毎月勤労統計調査は賞与を含む
毎月勤労統計調査の現金給与総額は、きまって支給する給与に賞与などの特別に支払われた給与を加えたものです。7月は夏の賞与が支給される月にあたるため、額が大きくなります。
7.2 賃金構造基本統計調査の所定内給与額は賞与も残業代も含まない
一方、賃金構造基本統計調査の所定内給与額には、賞与も残業代も含まれていません。
同じ「給与」という言葉でも数えているものが違いますので、63万5800円と57万8123円をそのまま比べることはできません。
7.3 速報値は確報で改定されることがある
今回の2026年7月分は速報値です。のちに公表される確報で数値が改定される場合があります。
8. まとめにかえて
2026年9月8日に公表された毎月勤労統計調査の2026年7月分結果速報では、現金給与総額の前年同月比が名目4.7%増、実質2.4%増でした。実質賃金は2026年1月から7カ月続けてプラスになっています。
2025年は通年で実質1.3%減でしたので、流れが変わったことになります。
一方、令和7年賃金構造基本統計調査の所定内給与額は部長級が月63万5800円、課長級が月52万9200円、係長級が月39万9200円でした。非役職者を100とすると部長級は204.8です。
実質賃金は税や社会保険料を引く前の金額をもとにした全国平均です。自分の実感は、去年の同じ月の給与明細と物価の伸びを並べて確かめてください。
参考資料
安達 さやか
