2. 介護休業のほかに、働き方を調整できる制度がある
介護休業給付は93日が上限です。介護が数年単位で続く場合、この給付だけでは支えきれません。育児・介護休業法には、日常的な働き方そのものを調整できる別枠の制度が用意されています。
別枠で使える制度は、LIMOの記事「介護離職は年間10万6000人。介護休業だけでなく短時間勤務等の措置は3年で2回以上、時間外労働は月24時間まで制限できる?離職を防ぐための制度を整理」から要点を借りて確認します。
2.1 介護・看護を理由とする離職は年間10万人を超える
まず現状の数字を押さえます。
総務省「令和4年就業構造基本調査」によると、調査前1年間に介護・看護を理由に離職した人は10万6000人にのぼります。この人数は、前回(平成29年)調査の9万9000人から7000人増加しており、介護離職の問題が改善していないことがうかがえます。過去5年間の累計では、介護・看護を理由とした離職者は47万4000人に達しています。
出所:LIMO「介護離職は年間10万6000人。介護休業だけでなく短時間勤務等の措置は3年で2回以上、時間外労働は月24時間まで制限できる?離職を防ぐための制度を整理」
同記事によると、離職後無業のままの人が8万3000人、再就職した人が2万3000人という内訳です。介護のために仕事を辞めても、その後すぐに再就職できるとは限らない実態が見えてくるとしています。
2.2 短時間勤務等の措置は5つの選択肢から
働き方を変える制度があります。
事業主には、介護のための「短時間勤務等の措置」として、①1日の所定労働時間を短縮する制度、②週または月の所定労働時間を短縮する制度、③週または月の所定労働日数を短縮する制度、④フレックスタイム制度、⑤始業・終業時刻を繰り上げ・繰り下げる制度(時差出勤)、のうち少なくとも1つを設けることが義務づけられています。
出所:LIMO「介護離職は年間10万6000人。介護休業だけでなく短時間勤務等の措置は3年で2回以上、時間外労働は月24時間まで制限できる?離職を防ぐための制度を整理」
この措置は、対象家族1人につき、利用を開始した日から連続する3年以上の期間で2回以上利用できると同記事は整理しています。介護休業の通算93日・3回までという上限とは別枠の制度であるため、両方を組み合わせて活用することができます。
ただし厚生労働省が示しているのはいずれか1つ以上を設けるという最低ラインであり、企業によっては複数の制度を併用できる場合もあります。まずは勤務先の就業規則や人事部門に確認することが第一歩だとしています。
2.3 時間外労働は月24時間・年150時間まで制限できる
残業そのものを止める権利もあります。
同記事によると、要介護状態にある対象家族を介護する労働者が請求すれば、事業主は1か月について24時間、1年について150時間を超える時間外労働をさせることができません。この請求には回数の制限がなく、1回につき1か月以上1年以内の期間で、制限開始予定日の1か月前までに書面等で請求する必要があります。
同様に請求すれば、原則として午後10時から午前5時までの深夜業をさせることも禁止されます。いずれも事業の正常な運営を妨げる場合は例外的に認められないことがありますが、原則として労働者側の権利として保障されているという整理です。
2.4 介護休暇は年5日、時間単位でも取れる
単発の用事に使える制度もあります。
同記事によると、要介護状態にある対象家族の介護や世話をする労働者は、事業主に申し出ることで、1年度において対象家族が1人の場合は5日、2人以上の場合は10日を限度に、介護休暇を1日単位または時間単位で取得できます。介護休暇は、労働基準法第39条による年次有給休暇とは別に与える必要がある休暇です。
時間単位での取得が認められているため、午前中だけ通院に付き添う、役所の窓口手続きのために2時間だけ抜けるといった細切れの使い方ができるのが特徴だとしています。申出は書面に限定されておらず、口頭や当日の電話での申出も認められています。
ただし介護休暇の賃金が有給になるか無給になるかは法律で一律には定められておらず、勤務先の就業規則によって異なります。取得を検討する段階で、給与への影響も含めて人事担当部署に確認しておくとよいという指摘です。
2.5 相談体制の整備も事業主の義務になっている
制度を知る道筋も用意されています。
同記事によると、育児・介護休業法では、各制度の内容を周知するだけでなく、労働者からの相談に応じるための体制整備を事業主に義務づけています。この相談窓口を通じて、自社にどのような制度があるか、実際にどう申請すればよいかを確認できます。
あわせて、介護休業や介護休暇の申出・取得を理由とする上司・同僚からの嫌がらせを防止するための措置も事業主の義務として定められています。制度の利用を理由とした解雇その他の不利益な取り扱いも法律で禁止されており、社内窓口で対応してもらえない場合は都道府県労働局雇用環境・均等部に相談できるとしています。
3. 給付の上限と、働き方の制度を分けて数える
ここまで、介護休業給付の中身と、介護休業以外に使える制度を見てきました。
給付の側は、同じ家族について93日を限度に3回まで、金額は休業開始時賃金日額に支給日数と67パーセントを掛けた額です。受給には介護休業開始日前2年間に被保険者期間12か月が必要で、有期雇用労働者にはさらに契約満了に関する要件が加わります。休業中に10日を超えて働いた月や、賃金が8割以上支払われた月は支給されません。
働き方の側は、短時間勤務等の措置が5つの選択肢から1つ以上、対象家族1人につき3年以上の期間で2回以上、時間外労働の制限が月24時間・年150時間、深夜業は原則禁止、介護休暇が年5日または10日で時間単位も可能です。いずれも介護休業とは別枠なので、組み合わせられます。
まずは自分の雇用保険の加入期間と、勤務先がどの制度を採用しているかを並べるところからになります。受給資格や支給額はお勤め先を管轄するハローワーク、勤務先の制度の中身は人事担当部署にご確認ください。
参考資料
- 厚生労働省「Q&A〜介護休業給付〜」
- LIMO「介護離職は年間10万6000人。介護休業だけでなく短時間勤務等の措置は3年で2回以上、時間外労働は月24時間まで制限できる?離職を防ぐための制度を整理」
和田 直子