「グロース株」「高配当株」「単元未満株」。証券会社のサイトを開くと、こうした言葉が並んでいて、結局どれを選べばいいのか分からなくなる人は少なくありません。

実は、これらは法律で定められた分類ではなく、投資家の間で使われている慣用的な呼び方にすぎません。呼び方の意味を取り違えたまま銘柄を選ぶと、値動きの性格が自分の想定と逆になってしまうこともあります。

この記事では、日本取引所グループ(JPX)や日本銀行、財務省が公表する最新の一次資料をもとに、グロース株と高配当株の株価水準の違い、借金の少ない企業の実態、円安局面で企業がどう為替を見込んでいるか、投資信託とのコスト差を整理します。

1. 「グロース株」「高配当株」「単元未満株」――株式投資の"種類"が指す3つの軸

株式投資の「種類」という言葉は、銘柄の性格・購入方法・投資対象という3つの異なる軸を指すことがあります。まずこの3つを整理します。

1.1 銘柄の性格による呼び方――グロース株・バリュー株・高配当株

「グロース株」は将来の利益成長が期待される企業の株式、「バリュー株」は業績に対して株価が割安と見られる企業の株式を指す、投資家の間で広く使われる呼び方です。

「高配当株」は配当利回りが高い銘柄の呼び方で、成熟した事業を持つ企業に多い傾向があります。ただしこれらはいずれも証券取引所が定めた公式な区分ではなく、明確な基準があるわけではありません。

1.2 購入方法による違い――単元未満株とETF

通常、国内株式は100株を1単元として売買します。日本取引所グループによると、売買単位は2018年10月1日に100株へ統一されました。一部の証券会社では、単元未満株として1株から購入できるサービスもあります。

ETF(上場投資信託)は、日経平均株価などの指数に連動する運用成果を目指す投資信託の一種で、個別株式と同じように取引所でリアルタイムに売買できる点が特徴です。単元未満株と異なり、取扱う証券会社は限られません。

2. 株式・ETF・投資信託・預金――対象資産としての基本的な違い

銘柄の性格や買い方の次は、そもそも「何に投資するか」という対象資産の違いを整理します。株式・ETF・投資信託・預金は、値動きの主体も、必要な知識も異なります。

2.1 値動きの主体は誰か

個別株式は、投資先の企業1社の業績や評価に応じて値動きします。ETFや投資信託は複数の銘柄をまとめて保有するため、1社の業績悪化が全体に与える影響は個別株式より小さくなります。

預金は元本が保証される一方、物価が上昇し続ければ実質的な価値が目減りするリスクがあります。

2.2 少額から始められるか

個別株式は原則100株単位のため、銘柄によっては数十万円以上の資金が必要になります。ETFや投資信託は、証券会社によっては100円や1000円といった少額から購入できる場合があります。

3. 「グロース株は割高」は本当か――市場区分別の株価収益率で編集部試算

「グロース株は成長期待で買われるため株価が割高になりやすい」とよく言われます。実際にどれくらいの差があるのか、日本取引所グループの最新データで確認します。

3.1 プライム・スタンダード・グロース、市場ごとのPER・PBR

日本取引所グループが公表する2026年8月末時点のデータによると、プライム市場の加重平均PER(株価収益率)は25.8倍、スタンダード市場は21.2倍でした。

下村 美乃莉
86.3倍という数字を最初に見たときは、正直驚きました。ただ、グロース市場に集まる会社の多くは、まだ大きな利益を出す前の成長段階にある会社です。今の利益ではなく、これから伸びるはずの期待に値段がついていると考えると、少し見え方が変わってきます。

一方、グロース市場の加重平均PERは86.3倍です。編集部で計算すると、プライム市場の約3.3倍の水準になります。

PBRで見ても、プライム市場3.4倍に対しグロース市場は4.3倍で、割高感が数字に表れています。

市場区分別のPER・PBR(2026年8月末時点)1/2

市場区分別のPER・PBR(2026年8月末時点)

出所:日本取引所グループ「規模別・業種別PER・PBR一覧」2026年8月末時点データなどを基にLIMO編集部作成

3.2 【市場区分別の株価水準】

成長期待が高いグロース市場

  • 加重平均PER:86.3倍
  • 加重平均PBR:4.3倍

やや割安な水準のスタンダード市場

  • 加重平均PER:21.2倍
  • 加重平均PBR:1.5倍

成熟企業が多いプライム市場

  • 加重平均PER:25.8倍
  • 加重平均PBR:3.4倍

4. 【編集者の視点】

PERが高い銘柄を「割高だから避けるべき」と単純に切り捨てるのは早計です。将来の利益成長を織り込んでいるからこそPERが高くなっている場合があり、成長が実際に伴えば結果的に妥当な水準だったということも起こり得ます。

実務でよくある罠は、PERやPBRを単独の銘柄だけで見て「割高」「割安」と判断してしまうことです。同じグロース市場の中でも業種によって水準は大きく異なるため、市場全体の平均値と個別銘柄を単純に比較すると判断を誤ります。

防衛策としては、比較対象を「同じ市場区分・同じ業種の企業」に絞ることが基本です。日本取引所グループは業種別のPER・PBRデータも公表しているため、気になる銘柄があれば、まず同業種の平均値と照らし合わせる習慣をつけると判断のブレを減らせます。

PER・PBRは、あくまで「今の株価が割高か割安か」を測るいくつかの指標のひとつにすぎません。企業の財務健全性や配当方針など、他の情報と組み合わせて判断することが欠かせません。

5. 「借金が少ない企業ほど金利上昇に強い」は本当か

「金利が上がると借金の多い企業は苦しくなる」という理屈から、自己資本比率が高い企業は金利上昇に強いとされます。では、実際にどの規模の企業が借入に頼っていないでしょうか。

5.1 資本金別に見る自己資本比率

財務省財務総合政策研究所「法人企業統計調査」(令和8年4〜6月期)によると、全産業の自己資本比率は44.4%でした。資本金別では、10億円以上の企業が42.3%、1億円〜10億円の企業が45.9%、1000万円〜1億円の企業が47.7%です。

「大企業の方が財務は安定している」というイメージを持つ人は多いはずですが、この統計を見る限り、資本金規模が大きいほど自己資本比率は低く、資本金1000万円〜1億円の企業の方が5.4ポイント高くなっています。

下村 美乃莉
自己資本比率の数字を見て、「規模が大きい会社ほど安心」という思い込みが崩れる瞬間でした。会社の大きさと財務の健全さは、必ずしも同じ方向を向いているわけではないのだと、あらためて感じさせられます。数字を確かめる前の思い込みほど、あとで見直すと恥ずかしいものはありません。

ただしこの統計は上場・非上場を問わない全法人が対象です。証券取引所に上場しているグロース市場598社(2026年8月末時点)などの企業だけを取り出した自己資本比率とは、母集団が異なる点に注意が必要です。

6. 【編集者の視点】

自己資本比率は、企業の財務健全性を測る代表的な指標のひとつですが、「比率が高いほど良い」と単純に考えるのは注意が必要です。

借入を極端に抑えている企業は、裏を返せば成長のための投資に踏み出せていない可能性もあります。特にグロース市場に多い成長段階の企業では、あえて借入や増資を活用して事業拡大を急ぐケースも少なくありません。

実務の罠は、自己資本比率という1つの指標だけで「安全」「危険」を判断してしまうことです。業種によって適正水準は異なり、装置産業のように多額の設備投資が必要な業種では、自己資本比率が相対的に低くなりやすい傾向があります。

防衛策としては、同業種内での比較を基本にしたうえで、有価証券報告書などで借入金の使いみち(設備投資なのか、運転資金なのか)まで確認する習慣をつけることが挙げられます。財務諸表の読み方に不安があれば、証券会社が提供する企業情報サービスも活用できます。

7. 円安で伸びる会社をどう見分けるか――企業自身の「想定為替レート」から読み解く

「円安になると輸出企業が儲かる」とよく言われます。実際に企業自身がどれくらいの円安・円高を前提に経営計画を立てているかを見ると、より具体的にイメージできます。

7.1 製造業が置く「想定為替レート」の変化

日本銀行の全国企業短期経済観測調査(短観)2026年6月調査によると、製造業(全規模合計)が2026年度の事業計画の前提とする想定為替レート(ドル円)は152.25円でした。

直前の3月調査時点では149.78円でした。編集部で計算すると、3か月で2.47円、円安方向に見通しを修正したことになります。

想定為替レートは、企業が売上や利益を見積もる前提となる数字です。実際の為替がこれより円安なら為替差益が上乗せされる可能性があり、逆に円高なら業績の下振れ要因になり得ます。

7.2 大企業と全規模合計で異なる為替観

同じ2026年度・6月調査を大企業(製造業)だけで見ると、想定為替レートは151.55円でした。全規模合計の152.25円と比べると、大企業の方がやや円高寄りの前提を置いていることになります。

報道では大企業の数字だけが取り上げられがちですが、中小企業を含めた全規模合計はより円安寄りの前提を置いていることになります。

下村 美乃莉
想定為替レートが円安方向に見直されたと聞くと、輸出関連の会社に追い風が吹くように感じます。ただ、これはあくまで会社側が置いた「前提」であって、実際の為替がその通りに動く保証はありません。数字の背景にある不確実性も、あわせて覚えておきたいところです。

製造業の想定為替レート(ドル円、2026年度)2/2

製造業の想定為替レート(ドル円、2026年度)

出所:日本銀行「全国企業短期経済観測調査(短観)2026年6月調査 全容」2026年7月2日公表を基にLIMO編集部作成

7.3 【想定為替レートの推移】

全規模合計の製造業

  • 2026年3月調査:149.78円
  • 2026年6月調査:152.25円

大企業の製造業

  • 2026年3月調査:148.91円
  • 2026年6月調査:151.55円

8. 株式・ETF・投資信託、税金とコストの違いを整理する

最後に、税金とコストという「見えにくい差」を整理します。個別株・ETF・投資信託では、かかるコストの種類が異なります。

8.1 譲渡益・配当の税金は共通

国税庁のタックスアンサーによると、上場株式等を売却して得た利益は申告分離課税の対象で、所得税等15.315%と住民税5%、合計20.315%が課税されます。配当も同様に20.315%が源泉徴収され、この税率は個別株式でもETFでも共通です。

8.2 投資信託にだけかかる「信託報酬」というコスト

一方、投資信託には保有している間ずっとかかる信託報酬というコストがあります。金融庁「投資信託の共通KPIに関する分析」(2025年9月10日公表)には、コストとリターンの関係を説明する例として「預り資産残高上位20銘柄の平均的なコストは1.4%、リターンは7.5%」という数字が示されています。

ただしこの数字は、あくまでKPIの考え方を説明するための例であり、2025年3月末時点の実際の集計結果ではありません。前年(2024年3月末基準)の同じ資料にも、同じ数字がそのまま使われています。

同じ資料では、運用損益がプラスである顧客の割合が2025年3月末時点で71.8%となり、前年の91.7%から低下したことも示されています。コストだけでなく市場環境によって成果は変わります。

参考までに、説明用の例にある1.4%というコストを10年間の単純計算に当てはめると、100万円あたり14万円相当のコストになる計算です(複利や運用成績の変動は考慮していません)。個別株式やETFの売買手数料とは異なり、投資信託の信託報酬はこのように保有している間ずっと発生し続ける点が特徴です。

個別株式やETFにも売買手数料はかかりますが、投資信託の信託報酬のように保有中ずっと発生し続けるコストとは性質が異なります。何に投資するかは、税率だけでなく継続コストの有無も判断材料になります。

9. 【編集者の視点】

投資信託を選ぶときに見落とされがちなのが、信託報酬の水準です。同じような指数に連動する商品でも、信託報酬には差があり、長期間保有するほどその差が最終的な受取額に響いてきます。

実務でよくある罠は、購入時に信託報酬の数字だけを見て「安いから大丈夫」と判断し、その後の運用実績やコストの推移を確認しないことです。信託報酬は運用会社の判断で見直されることもあります。

防衛策としては、購入前に目論見書や運用報告書で信託報酬の実額を確認し、年に一度は保有商品の実質コストと運用実績を見直す習慣をつけることが挙げられます。NISA口座で保有していても、信託報酬そのものが免除されるわけではありません。

下村 美乃莉
私自身はこれまで、新NISAでの投資信託の積立を続けてきました。銘柄選びの奥深さを知るほど、自分に合った関わり方を選ぶことの大切さを感じます。個別株もETFも投資信託も、それぞれの特徴を知ったうえで選べば、安心につながるはずです。

※本記事は、編集部が日本取引所グループ・日本銀行・財務省・金融庁・国税庁が公表する公式の最新一次資料を直接確認の上、執筆・検証しています。

10. まとめ

  • グロース株・バリュー株・高配当株は、法律上の分類ではなく投資家の間で使われる呼び方です。
  • 2026年8月時点、グロース市場の加重平均PERはプライム市場の約3.3倍の水準です。
  • 資本金1000万円〜1億円の企業の自己資本比率は47.7%で、10億円以上の企業の42.3%を上回っています。
  • 製造業(全規模合計)の想定為替レートは、2026年3月調査の149.78円から6月調査の152.25円へ、円安方向に修正されました。
  • 投資信託には保有中ずっとかかるコストがあり、個別株式やETFとはコストの構造が異なります。

「株式投資の種類」という言葉の背景には、銘柄の性格・買い方・対象資産という3つの軸が隠れています。呼び方に振り回されるのではなく、それぞれの数字の意味を知ったうえで選ぶことが、遠回りに見えて確実な近道になります。

まずは、自分が保有・検討している銘柄がどの市場区分に属し、どんな指標の水準にあるのかを確認することから始めてみてください。分からない点は、口座を持つ証券会社の窓口で確認できます。

11. よくある質問

11.1 Q. グロース株とバリュー株、どちらを選べばいいですか

A. どちらが優れているかは一概に言えません。グロース株は成長期待で値動きが大きくなりやすく、バリュー株は比較的値動きが緩やかな傾向があります。自分がどの程度の値動きに耐えられるかを踏まえて選ぶことが基本です。

11.2 Q. 単元未満株とETF、少額で始めるならどちらがいいですか

A. 単元未満株は個別企業の株主になれますが、取扱銘柄や注文方法は証券会社によって限られます。ETFは複数銘柄に分散されるため、1社の業績悪化の影響を受けにくいのが特徴です。目的に応じて選ぶとよいでしょう。

11.3 Q. 自己資本比率が高い企業を選べば安心ですか

A. 自己資本比率は財務健全性を測る指標の一つですが、それだけで安全性を判断するのは早計です。業種によって適正水準は異なり、あえて借入を活用して成長投資を進める企業もあります。同業種内での比較をおすすめします。

11.4 Q. 投資信託より個別株やETFの方がコストは安いのですか

A. 税率は個別株式・ETF・投資信託のいずれも、譲渡益や分配金にあたる部分は同じ20.315%です。ただし投資信託には保有中ずっとかかるコストがあり、売買手数料とは性質が異なります。長期保有では特に確認が必要です。

参考資料

LIMO編集部ウェルスマネジメント班