5. 50歳代に多い「制度が変わるたびに情報に振り回されて方針が定まらない」というご相談。ファイナンシャルアドバイザー・田中 友梨が伝えたいこと

制度の話題が世の中に出回る時期は、手元で続けている積み立てをこのまま続けてよいのか気になる時期でもあります。ここでは、ファイナンシャルアドバイザーが日頃の面談でよく受けるご相談のひとつを、個人が特定されないよう内容を一般化したうえで取り上げます。

5.1 50歳代に多いお悩み相談は「制度が変わるたびに情報に振り回されて方針が定まらない」

50歳代(ご相談者)
非課税で運用できる制度を使って積み立てを続けていて、そのほかに個人年金の契約も持っています。ただ、ネット上で次々に流れてくる情報を目にするたびに気持ちが動いてしまい、自分の方針が定まらなくなっています。制度が変わるらしいという話を見かけると、今のまま続けていてよいのか分からなくなります。

制度に関する話題が出回ると、いま手元で続けているものについても何か手を打たなければならないような気持ちになりやすいものです。とくに、積み立てと保険の契約の両方をお持ちの方ほど、どちらをどう見直せばよいのかが絡み合って、判断が止まってしまいやすくなります。相談の場でも、情報が足りないのではなく、多すぎて選べないというお声を伺うことが少なくありません。

5.2 【ファイナンシャルアドバイザー・田中 友梨が回答】いま続けているものをすぐ動かす必要があるとは限らないと確かめ、情報は出どころを確かめてから受け取り、自分の方針を先に決めておく

田中 友梨
情報過多の時代、何を選べばよいかわからなくなります。また新しいものに飛びつきたくなるのは人間の性でしょう。世に出回る情報は、万人に対して発信されているのがほとんど。イコール自分に合っているとは限らないのです。大切なことは、その情報が自分にマッチしているのかを判断することです。判断する材料として、「自分の方針を決めておく」ことが重要。もちろん、年齢や環境などによって方針は変化します。その際にお金のプロに相談するのも一案です。情報に振り回されるのではなく、情報はあくまでも材料の一つとして、活用する立場でいることを忘れずに。

5.3 ポイント1:制度が変わっても、いま続けているものをすぐ動かす必要があるとは限らない

制度の見直しが話題になると、いま持っているものをどうにかしなければならない、という受け止め方になりがちです。ただ、制度の内容が改まったからといって、すでに続けている積み立てや契約をその場で動かさなければならないとはかぎりません。相談の場では、まず何が変わる話なのか、そしてそれが自分の続けているものに関係する話なのかを分けて確かめるところから始めます。関係のある話であっても、いつからどう関係するのかによって、考える時間の取り方は変わってきます。NISAやiDeCoといった非課税で運用できる制度も、個人年金のような保険の契約も、それぞれ性格の違う仕組みです。保険は保障とセットになった仕組みですので、運用の成果だけを取り出して投資の商品と横並びに比べるものではない、という点にも留意が必要です。なお、制度の内容は改正されることがあるため、最新の内容は公的機関の情報でご確認ください。

5.4 ポイント2:情報は出どころを確かめてから受け取る

画面に流れてくる情報は、どれも同じ強さで目に入ってきます。けれども、その中身は、公的機関が公表している内容そのものもあれば、誰かがそれを解釈して短くまとめたもの、まだ決まっていない見込みの話を確定したことのように書いたものまで、性格がまちまちです。相談の場で情報を一緒に整理するときは、その話が誰の名前で出ているのか、いつの時点の話なのか、元になっている資料が示されているのかを見ていきます。この三つを確かめるだけで、手元に残る情報はかなり絞られます。とくに、いつ何がどう変わるという予定の話は、決まったことなのか検討されている段階なのかで意味がまったく違いますので、出どころの確かな情報にあたるまでは、決まったこととして受け取らないほうが落ち着いていられます。制度の内容は改正されることがあるため、最新の内容は公的機関の情報でご確認ください。

5.5 ポイント3:自分の方針を先に決めておくと、情報に振り回されにくくなる

情報に気持ちが動いてしまうのは、比べるものさしが手元にないからだ、という見方ができます。何のために、いつごろまでに、毎月どのくらいを続けるのか。この三つを先に決めておくと、新しい情報が入ってきたときに、それが自分の方針に関係する話なのかどうかを自分で判断できるようになります。相談の場でも、方針が決まると、続けている積み立ての金額を無理のない水準に設定し直したり、口座の画面でどこをどう操作すればよいのかを一緒に確かめたりといった、手を動かす作業に落とし込めるようになります。逆に、方針が定まらないまま情報だけを追いかけていると、操作そのものが止まってしまいます。値動きのある資産には価格の変動があり、元本割れとなる可能性もありますので、続けられる金額かどうかが方針の土台になります。積み立てを止めずに続けることそのものに意味がある、という考え方もあります。

情報との付き合い方は、正解がひとつに決まるものではありません。ご家庭ごとに事情も方針も異なりますので、具体的な判断は、状況を確かめながら専門家とご一緒に進めていただければと思います。

6. まとめにかえて

制度に関する話題が出回るたびに気持ちが動いてしまうというご相談は、決してめずらしいものではありません。この記事では、制度が変わってもいま続けているものをすぐ動かす必要があるとは限らないこと、情報は出どころを確かめてから受け取ること、自分の方針を先に決めておくと情報に振り回されにくくなることの3点を、相談の現場でよく交わされる整理として取り上げました。

情報を追いかけること自体は悪いことではありません。ただ、追いかける前に自分のものさしを持っておくと、同じ情報でも受け止め方が変わります。何のために、いつごろまでに、毎月どのくらいを続けるのか。この三つを書き出しておくだけで、目に入る情報のうち自分に関係するものとそうでないものが分かれていきます。そのうえで気になる点が残ったときに、公的機関の情報や口座を開いている金融機関で確かめるという順番にすると、手間もかかりません。

値動きのある資産には価格の変動があり、元本割れとなる可能性があります。また、制度の内容は改正されることがあるため、最新の内容は公的機関の情報でご確認ください。この記事でお伝えしたのは情報との向き合い方の考え方ですので、税や制度の取り扱いにかかわるご自身の判断については、関連する部署や専門家に確かめながら進めていただければと思います。

参考資料

田中 友梨