厚生労働省が公表した「被保護者調査」(令和8年6月分概数)によると、生活保護を受けている世帯のうち半数を超える55.3%を高齢者世帯が占め、そのほとんどが一人暮らしの高齢単身世帯となっています。高齢者にとって収入の柱となる公的年金の平均月額は、国民年金で月5万円台、厚生年金でも月15万円台にとどまっており、年金収入だけで生活費をまかなうのが難しい人が少なくない実情がうかがえます。
もっとも、収入が低いからといって、それだけで生活保護を受けられるわけではありません。資産や能力の活用など、満たすべき条件がいくつか定められています。また、実際に支給される保護費は、住んでいる地域や世帯の人数によって金額が異なりますし、保険料の負担が免除されたり、医療にかかる費用が本人ではなく医療機関に直接支払われたりするなど、独自の仕組みが設けられています。
この記事では、最新の統計データをもとに受給世帯の実態を紹介したうえで、生活保護の支給要件や保護費の決まり方、保険料・医療費の扱いについて、制度の仕組みとして整理していきます。
- 被保護世帯の55.3%を高齢者世帯が占め、そのうち51.7%が一人暮らしの高齢単身世帯となっている
- 収入が低いだけでは受給できず、資産や能力の活用など複数の条件を満たす必要がある
- 保護費は住む地域(級地)や世帯人数によって異なり、保険料は免除、医療費は保護費から本人が支払うのではなく医療機関へ直接支払われる仕組みになっている
1. 最新データで見る生活保護の受給状況
まずは、直近の統計から、どのような世帯が生活保護を受けているのかを確認しましょう。
1.1 被保護世帯の55.3%が高齢者世帯、その大半が一人暮らし
厚生労働省「被保護者調査」(令和8年6月分概数)によると、同月の被保護実人員数は196万9502人、保護率(人口に占める被保護者の割合)は1.60%でした。世帯類型別にみると、高齢者世帯は90万3532世帯で全体の55.3%を占め、その中でも一人暮らしの高齢単身世帯が84万4730世帯(全体の51.7%)と、高齢者世帯の9割超を占めています。生活保護を受けている世帯のおよそ2世帯に1世帯が、一人暮らしの高齢者ということになります。
なお、同月の保護の申請件数は2万970件でした。近年は緩やかな増加傾向が続いていますが、月ごとの増減もあり、単月の数字だけで大きな傾向を判断するのは難しい面もあります。
1.2 高齢者の収入の柱、公的年金の平均月額はどれくらい?
高齢単身世帯の多くにとって、収入の中心となるのは公的年金です。厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、公的年金の平均年金月額は、国民年金(老齢基礎年金)で5万円台、厚生年金(国民年金部分を含む)でも15万円台となっています。
持ち家か賃貸かなど住まいの状況や、貯蓄の有無によって必要な生活費は人それぞれですが、年金収入だけでは日々の生活費をまかないきれないケースも生じ得ます。こうした場合に、最終的な生活のセーフティネットとして機能するのが生活保護制度です。ただし、次で見るように、年金収入が少ないという事実だけで、自動的に生活保護の対象になるわけではありません。
2. 「収入が低い」だけでは生活保護を受けられない
生活保護法は、保護を受けるための前提として、いくつかの条件を定めています。
2.1 資産・能力・扶養・他制度をまず活用することが前提
生活保護法第4条は、保護を受けるための要件として、①資産の活用、②能力の活用、③扶養義務者による扶養の活用、④他の制度による給付の活用、をまず行うことを求めています。
①資産の活用とは、預貯金や生活に利用されていない土地・建物、生命保険の解約返戻金なども含め、保有する資産をまず生活費に充てることを指します。ただし、現に居住している持ち家など、資産の内容によっては保有が認められる場合もあります。
②能力の活用は、働くことができる状態にある場合は、その能力に応じて就労に努めることを意味します。
③扶養義務者による扶養の活用は、親・子・きょうだいなど親族からの援助が見込める場合、そちらを先に受けることを指しますが、これは「保護を受けるための絶対条件」ではなく「保護に優先する」という位置づけであり、必ずしもすべてのケースで親族への照会(いわゆる扶養照会)が行われるとは限りません。DV(配偶者からの暴力)からの避難など、照会によって申請者に不利益が生じるおそれがある場合には、照会を行わないなどの配慮がなされています。
④他の制度の活用は、年金や雇用保険、各種手当など、生活保護以外の公的な給付を受けられる場合は、そちらを優先して活用することを指します。
2.2 世帯の収入と「最低生活費」を比較して判断される
上記の条件を満たしたうえで、実際に保護が必要かどうかは、厚生労働大臣が定める基準により算出される「最低生活費」と、世帯の収入(年金・就労収入・親族からの援助などを合算した収入認定額)とを比較して判断されます。世帯の収入が最低生活費に満たない場合に、その不足分が保護費として支給される仕組みで、これは「補足性の原理」と呼ばれています。つまり、多少の年金収入や就労収入があっても、それが最低生活費に満たなければ、その差額分について保護を受けられる可能性があるということです。
「扶養照会」という言葉から、生活保護の申請には親族の同意が必要だと誤解されている方に出会うことがあります。実際には、扶養は保護を受けるための条件ではなく、あくまで保護に優先して検討される事柄です。事情によっては照会自体が行われないケースもあるので、心配な場合はお住まいの自治体の福祉事務所に相談してみるとよいと思います。
