3. 保護費は住んでいる地域や世帯人数によって異なる

条件を満たして保護が開始された場合、実際に支給される保護費の金額は、全国一律ではありません。

3.1 「級地制度」で全国を6区分、地域の生活水準の差を反映

生活保護法第8条にもとづき、最低生活費の基準となる金額は、都市部と地方など地域による生活水準の違いを踏まえて、全国の市区町村が「級地」と呼ばれる6つの区分(1級地-1、1級地-2、2級地-1、2級地-2、3級地-1、3級地-2)に分けられています。一般に、物価や家賃水準の高い大都市部ほど級地の水準が高く設定され、それ以外の地域に向けて段階的に低くなる仕組みです。

「級地」によって最低生活費の水準は段階的に異なる(概念イメージ)2/2

1級地-1から3級地-2まで、級地によって最低生活費の水準が段階的に異なることを示す概念イメージの図

出所:厚生労働省「生活保護制度の概要等について」をもとにLIMO編集部作成(図は級地間の相対的な水準差を示すイメージであり、実際の基準額を示すものではありません)

同じ世帯構成であっても、居住する地域の級地によって最低生活費の基準額は異なります。実際の基準額は毎年度見直されるため、正確な金額を知りたい場合は、お住まいの自治体の福祉事務所に確認する必要があります。

3.2 世帯人数が増えるほど、1人あたりの加算は緩やかになる

最低生活費は、世帯の人数が増えるほど高くなりますが、その増え方は人数に比例して単純に増えていくわけではありません。食費や光熱費など、世帯で共通してかかる経費がある分、世帯人員が1人増えるごとの基準額の増加幅は、人数が多くなるにつれて緩やかになるように設計されています。つまり、単身世帯と2人世帯の基準額の差と、4人世帯と5人世帯の基準額の差は、同じ「1人増える」場合でも金額の増え方が異なります。

4. 保険料の負担は免除され、医療は「現物給付」でまかなわれる

生活保護を受けている間は、社会保険料や医療費の負担についても、独自の仕組みが設けられています。

4.1 国民年金保険料は届出により法定免除に

生活保護のうち生活扶助を受けている人は、日本年金機構への届出により、国民年金保険料の「法定免除」を受けられます。免除された期間も老齢基礎年金の受給資格期間には算入されますが、将来受け取る年金額は、保険料を納めた場合に比べて少なくなります。また、生活保護を受けている間は、国民健康保険の被保険者からも除外される扱いとなっており、医療が必要な場合は、次に説明する医療扶助によって対応することになります。

4.2 医療にかかるときは、保護費ではなく医療機関へ直接支払われる

生活保護には、生活費に充てる生活扶助のほか、医療費をまかなう医療扶助、介護費用をまかなう介護扶助など、目的別に複数の扶助が用意されています。このうち医療扶助と介護扶助は、原則として「現物給付」という形で提供されます。これは、保護費として現金を受け取ってから自分で医療機関に支払うのではなく、かかった費用が福祉事務所から医療機関や介護事業者へ直接支払われる仕組みです。窓口で自己負担分を支払う必要はなく、受給者本人が費用を立て替える必要もありません。

65歳以上で介護保険の被保険者にあたる人については、保険料に相当する費用が扶助に反映される形で実質的に負担が生じないように配慮されており、40歳から64歳までの人は医療保険に未加入であるため介護保険の被保険者にもならず、必要な介護サービスは介護扶助によって全額まかなわれます。

和田 直子

保護費が地域や世帯人数によって異なると聞くと、不公平に感じる方もいるかもしれません。ですが、これは同じ金額でも地域によって物価や家賃水準が違うことや、世帯の人数によって必要な生活費が変わることを踏まえた仕組みです。医療費が直接医療機関に支払われる現物給付の仕組みも含め、それぞれ受給者の生活を実質的に支えるための工夫として設計されています。

5. まとめ

厚生労働省「被保護者調査」(令和8年6月分概数)によると、被保護世帯の55.3%を高齢者世帯が占め、そのうち51.7%が一人暮らしの高齢単身世帯です。高齢者の収入の柱となる公的年金の平均月額は国民年金で5万円台、厚生年金でも15万円台にとどまっており、年金収入だけでは生活費をまかないきれないケースが生じ得ることが背景にあります。

一方で、収入が低いというだけで生活保護を受けられるわけではなく、資産や能力の活用、扶養義務者による扶養、他制度の活用といった条件を満たしたうえで、世帯の収入と最低生活費とを比較して受給の可否が判断されます。

実際に支給される保護費は、居住する地域の級地や世帯人数によって異なり、保険料の負担は免除され、医療にかかる費用は保護費から本人が支払うのではなく医療機関へ直接支払われる仕組みになっています。こうした制度の実態を知っておくことは、自分自身や家族がセーフティネットを必要とする場面を考えるうえでも、参考になるのではないでしょうか。

参考資料

和田 直子