金融庁から公表された令和9年度の税制改正要望では、子育て世帯などがより柔軟に資金準備できるよう、NISA(少額からの投資を行う方のための非課税制度)の使い勝手を向上させる見直しが提案されました。

具体的には、売却した非課税枠がその年のうちに復活して急な出費にも対応しやすくなることや、つみたて投資枠で選べるETF(上場投資信託)の対象を広げることが盛り込まれています。

積立投資を続けていると、途中で評価額が下がる局面に出あうことがあります。この記事では、新NISAの制度の要点と、50歳から毎月5万円を15年間積み立てた場合の利回り別の到達額、目標額を3000万円に置いた場合の積立額別の計算、収入の変化に合わせて積立額を引き上げる場合の見積もりを整理します。あわせて、積み立てている途中に値下がりの局面があった場合となかった場合とで、続けた結果がどう変わるかを試算します。

菅原 美優
積立の相談では、始めるときに置いた見込み額と、いま目の前に出ている評価額とのずれをどう受け止めればよいのか、という形でご質問をいただくことがよくあります。まずは、見込み額がどのような前提のうえに置かれた数字なのかを確かめるところから整理していきます。

なお、新NISAの制度の要点と、毎月5万円を15年間積み立てた場合のシミュレーションに関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。

【新NISA】毎月5万円を15年運用するといくら?50歳から始める利回り別シミュレーション
【新NISA】毎月5万円を15年運用するといくら?50歳から始める利回り別シミュレーション
ココがポイント
  • 50歳から毎月5万円を15年間積み立てると投資元本は900万円。想定する利回りが年1%なら970万円、年5%なら1324万円という試算結果になっている
  • 目標額を3000万円に置くと、年5%を想定して毎月8万円を積み立てた場合でも到達額は2119万円で、15年では届かない計算
  • 途中に値下がりの局面があったと仮定した独自試算では、同じ元本900万円でも到達額は約1131万円から約826万円まで開き、元本を下回るケースも出た

1. 新NISAの制度としての枠組み|非課税で持てる期間と2つの投資枠の組み合わせ

毎月5万円を15年間積み立てた場合のシミュレーションについては、「【新NISA】毎月5万円を15年運用するといくら?50歳から始める利回り別シミュレーション」でも整理されています。まずは、その土台となる制度の骨組みから確かめていきます。

個人の資産形成を支援する目的で2014年に始まったNISA(ニーサ)は、2024年に制度が大幅に改正され、「新NISA」として新しくなりました。値動きに気持ちが揺れたときも、器の仕組みと中身の値動きを分けて眺められると、考える順序が整理しやすくなります。

1.1 制度の要点として挙げられる6つの項目

新NISAの主な特徴として、次の6点が挙げられます。

  • 非課税で保有できる期間に上限がない
  • 「つみたて投資枠」と「成長投資枠」を同時に利用できる
  • 年間の投資上限額が、枠ごとに定められている
  • 生涯にわたる非課税保有限度額が定められており、そのうち成長投資枠で使える分にも上限がある
  • 保有している商品を売却すると、その分の枠があらためて使える
  • つみたて投資枠は「長期の積立・分散投資」に適していると国が認めた投資信託などが対象で、成長投資枠は上場株式や投資信託など、より幅広い対象から選べる

投資はまとまった資金がないと始められないと受け止められることもありますが、最近では500円や1000円といった少額から始められるものも増えています。新NISAを使えば、こうした少額からでも投資信託や株式の運用を始められるため、初めて投資に触れる方にも入りやすい制度といえます。

ただし、年間の投資上限額や非課税保有限度額といった枠の内容、対象となる商品の範囲は、制度の改正によって変わることがあります。最新の内容は金融庁などの公的機関の情報や関連する窓口でご確認ください。

菅原 美優
制度の話と値動きの話が混ざったまま「続けるかどうか」を考え込んでいらっしゃる方にお会いすることがあります。非課税という仕組みは税金の扱いに関わる部分で、評価額が上下することそのものとは別の話です。切り分けて眺めると、いま迷っているのがどちらの話なのかが見えやすくなります。

2. 50歳から月5万円を15年|想定する利回りごとに変わる到達額

ここからは、次の前提で積立投資を行った場合に、どの程度の到達額が見込まれるのかを確かめます。

  • 50歳から65歳までの15年間を準備期間として置く
  • 積み立てる金額は毎月5万円で一定とする
  • 想定する利回りは、安定運用を念頭に年1%~5%の範囲で置く

2.1 元本900万円が、想定した利回りごとにどこまで動くか

【新NISA】想定利回り別「月5万円」積立投資シミュレーション結果2/4

想定利回り別に見た月5万円・15年積立の資産評価額の比較

出所:金融庁「つみたてシミュレーター」をもとにLIMO編集部作成

想定利回りごとの資産評価額(元本900万円)は、親記事から次のとおり引用します。

  • 年1%の場合:970万円
  • 年2%の場合:1047万円
  • 年3%の場合:1131万円
  • 年4%の場合:1223万円
  • 年5%の場合:1324万円

毎月5万円を15年間積み立てると、投資元本の合計は900万円になります。上の数字では、運用の成果次第で約70万円から最大で424万円程度が元本に上乗せされる計算です。

ただし、これは想定した利回りで15年間そのまま推移したと置いた場合の数字です。投資には価格変動リスクがあり、元本割れとなる可能性があります。一般に、期待できるリターンが高いほど値動きの幅も大きくなるという関係を踏まえたうえで、どの水準を前提に置くかを考える形になります。

菅原 美優
この並びをご覧になると、「年3%くらいを見ておけば大丈夫か」と受け止められることがあります。ただ、ここに並んでいるのは想定した利回りがそのまま続いた場合の数字で、途中の上下は織り込まれていません。見込み額との差が出たときに慌てにくくするためにも、前提の置き方をあわせて覚えておいていただくとよいかと思います。

3. 目標を3000万円に置くと|積立額を増やしても15年では届かない計算

老後の生活に必要な資金は人によって違いますが、ここでは目標額を3000万円と置いて考えてみます。50歳から65歳までの15年間でこの金額に届かせるには、毎月いくらずつ積み立てることになるのかを確かめます。

3.1 年5%を想定した場合の、積立額ごとの到達額

【新NISA】積立金額別「想定利回り5%」積立投資シミュレーション結果3/4

毎月の積立額別に見た想定利回り5%・15年積立の資産評価額の比較

出所:金融庁「つみたてシミュレーター」をもとにLIMO編集部作成

毎月の積立額と資産評価額は、親記事から次のとおり引用します。

  • 月4万円の場合:1059万円
  • 月5万円の場合:1324万円
  • 月6万円の場合:1589万円
  • 月7万円の場合:1854万円
  • 月8万円の場合:2119万円

※想定利回りは年5%で計算

年5%で15年間推移したと仮定しても、毎月8万円を積み立てた場合の到達額は2119万円で、目標の3000万円には届きませんでした。毎月の積立額をこれ以上引き上げると、家計への負担は重くなっていきます。

また、利回りは保証されているものではないため、想定どおりに増えない可能性もあります。ここから読み取れるのは、準備にあてられる期間が長いほど、毎月の負担を抑えたまま目標額に近づけやすくなるという関係です。期間を十分に確保できない場合は、目標額そのものを置き直すという考え方もあります。

菅原 美優
目標額に届かないという結果が出ると、積立額を上げる方向にだけ目が向きがちです。相談の場では、目標額の置き方そのものを一度確かめ直したところで、必要な金額が変わったというケースにも行き当たります。金額を上げる以外の入り口も並べたうえで、どれがなじむかを見ていく形になります。

4. 収入の変化に合わせて積立額を引き上げる|25年で元本1500万円を積む形

少額から始めて、家計に余裕が出た時点で積立額を引き上げたい、という考え方もあります。その場合は、収入の変化に合わせて段階的に金額を上げていく方法があります。

たとえば、最初は毎月1万円から始め、5年ごとに積立額を2万円ずつ増やしていくプランを置いてみます。この場合、25年間で合計1500万円の元本を積み立てることになります。もし年利3%で運用を続けられたとすると、最終的な資産総額は約1958万円となり、元本の約1.3倍にあたる計算です。

積立額を段階的に引き上げた場合の資産形成のイメージ4/4

毎月1万円から5年ごとに積立額を引き上げた場合の25年間の資産推移

出所:金融庁「NISAの活用事例」

この方法の利点は、無理のない金額から始められるため、長く続けやすい点にあります。初めのうちは家計への負担を抑え、収入が増えた時点で金額を見直すことで、暮らしへの影響を小さくしながら積み上げていくことが見込めます。

一方で、積み立てる金額を引き上げれば、値動きの影響を受ける金額も同時に大きくなります。金額を上げたあとに評価額が下がると、下がり幅が気になりやすくなるという面もあります。途中で金額を下げる、いったん止めるという調整も、避けるべき判断というわけではありません。家計の状況に合わせて動かしてよいものとして置いておくと、続け方の幅が広がります。

菅原 美優
金額を引き上げたあとに評価額が下がると、上げなければよかったのではないか、という受け止めになりやすいところです。積立額は一度決めたら動かせないものではありませんので、上げる前提と同じように、下げる前提もあわせて置いておくと、そのときどきで調整しやすくなります。

5. 非課税の仕組みと積立期間|到達額を左右する2つの要素の整理

ここまで見てきたとおり、同じ制度を使って積み立てても、想定する利回り、毎月の積立額、そして期間の取り方によって、到達額は大きく変わります。

新NISAには、運用で得た利益に対する税金の扱いが変わるという仕組みがあります。ただしこれは、利益が出た場合の税の扱いに関わるものであって、利益そのものを約束する仕組みではありません。評価額が下がって元本を割り込んだ状態になることもあり、その場合に非課税の仕組みが損失を埋めてくれるわけでもありません。

短い期間で大きな目標に届かせようとすると、毎月の負担は重くなりがちです。期間を長く取れば、その分だけ積み上がる元本が大きくなり、毎月の負担を抑えたまま金額を積み上げやすくなります。これが「長期積立」と呼ばれる考え方の中身です。

もっとも、期間を長く取れば値下がりが解消される、というものではありません。長く続けたとしても、購入したときより価値が下がったままになることもあります。では、途中に値下がりの局面があった場合となかった場合とで、続けた結果はどのくらい変わるのか。次の章で、仮の数字を置いて確かめてみます。

菅原 美優
見込み額の表は、途中がまっすぐ伸びていく形で描かれます。実際の評価額は上下しながら動くため、表の線と目の前の数字が一致しないのは自然なことです。ずれが出たときに何を確かめればよいのかを、あらかじめ決めておくと落ち着いて見やすくなります。

毎月5000円のような少額から積み立てた場合にどのくらいの到達額になるのかについてはこちらの記事でくわしく解説しています。あわせてご参考ください。
【新NISA】月5000円の積立は意味ない?老後不安を解消するシミュレーション結果

6. 【独自試算】積み立てている途中に値下がりの局面があった場合となかった場合で、続けた結果はどう変わるか

ここまでの計算は、想定した利回りで15年間そのまま推移したと置いたものでした。実際には、積み立てている途中で評価額が下がる局面に出あうことがあります。そこで、途中に値下がりの局面があったと仮定した場合と、なかったと仮定した場合とで、15年間続けた結果がどう変わるのかを試算してみます。

前提は次のとおりです。いずれも計算のために仮に置いた数字であり、こうなると見込んでいるものでも、これからの値動きを予想したものでもありません。

  • 毎月5万円を15年間(180カ月)積み立て、投資元本の合計は900万円とする
  • 基準となる年率は3%と仮に置く。これは実際の運用成果を示す数字ではない
  • 月ごとの利率は(1+年率)の12分の1乗から1を引いた値を用い、毎月末に積み立てるものとして計算する
  • 値下がりの局面は、ある時点で評価額が30%下がったと仮に置く。下落の幅も時期も仮定であり、実際にこうなるという意味ではない
  • 手数料や税金、分配金の再投資は考慮しない

この前提で計算すると、到達額の目安はおおよそ次のようになります。

  • ケース1:値下がりの局面がなく、15年間ずっと年3%で推移したと仮定した場合……約1131万円(元本900万円に対して約231万円の増加)
  • ケース2:5年が経過した時点で30%下がり、その後は年3%で推移したと仮定した場合……約1001万円(元本に対して約101万円の増加)
  • ケース3:11年が経過した時点で30%下がり、その後は年3%で推移したと仮定した場合……約868万円(元本を約32万円下回る)
  • ケース4:5年が経過した時点で30%下がり、その後は横ばい(年0%)で推移したと仮定した場合……約826万円(元本を約74万円下回る)

値下がりの局面がなかったと置いたケース1と、途中で下がったあと年3%で推移したと置いたケース2を比べると、差は約130万円です。ケース1とケース4では、約305万円の差になります。

ここで見ておきたいのは、ケース3とケース4では、15年間続けたにもかかわらず到達額が元本の900万円を下回っている点です。積み立てを続けたからといって、下がった分が取り戻されるとは限りません。投資信託には価格変動リスクがあり、購入したときより価値が下がったままになることもあります。

ケース2とケース3の差は、下落が起きた時点で積み上がっていた残高の大きさと、その後に残っていた期間の長さの違いから生じたものです。これは、早い時期に下がったほうが結果がよくなるという意味ではありません。どちらも「下がったあとは年3%で推移した」という同じ仮定を置いたために出てきた差であり、下がったあとにどう推移するかは、あらかじめ分かるものではないからです。ケース4のように、下がったまま戻らなかったと置けば、結果はまた変わります。

また、この試算は「15年間続けた場合」だけを計算したものです。途中で金額を下げた場合や、いったん止めた場合の到達額は、これとは別の数字になります。続けることが正解で、止めることが誤りだという整理にはなりません。ケース3のように使い始める時期が近づいてから下がる場面では、下がった状態のまま取り崩すことも想定に入れておく形になります。

これらはあくまで一定の条件を置いた目安であり、将来の運用成果を保証するものではありません。実際の値動きは日々変わり、下落の幅や時期、その後の推移を事前に見通すことはできません。制度の内容も改正されることがあるため、最新の内容は金融庁などの公的機関の情報や関連する窓口でご確認ください。

村岸 理美
この試算は、下落の幅と時期を仮に置いたうえで、そのほかの条件をそろえて計算したものです。同じ元本900万円でも、置いた仮定によって到達額は約1131万円から約826万円まで開きました。ここから読み取れるのは、到達額が積立額と期間だけで決まるわけではなく、途中の値動きによっても変わるということです。下がった分がのちに埋まるかどうかは、計算の前提として置くことはできても、あらかじめ分かるものではありません。ケース3やケース4のように、15年間続けた結果が元本を下回ることもあります。取りうる形としては、これまでどおり続ける、毎月の金額を下げて続ける、いったん止めて手元の資金の置き方を整え直す、といった選択肢が並びます。どれがなじむかは、そのお金を使い始める時期や、値動きをどこまで受け入れられるかによって変わってきます。制度の取り扱いや税制は改正されることがありますので、最新の内容は金融庁などの公的機関の情報や関連する窓口でご確認いただく形になります。