「個人向け国債」は、募集される月によって金利が変わる商品です。2026年8月募集分(第197回債、9月15日発行)の変動10年は年1.87%、固定5年は年2.06%、固定3年は年1.71%と、いずれも前月から上昇しました。
一方で、数年前の低金利時代に購入した個人向け国債をそのまま持ち続けている人も少なくありません。金利がここまで上がった今、「昔買った国債を中途換金して、今の金利で買い直した方が得なのではないか」という疑問が出てくるのは自然なことです。
この記事では、個人向け国債の金利がどのように決まる仕組みなのかを確認したうえで、中途換金のルールと、乗り換えを判断する際に見ておきたいポイントを試算とあわせて整理します。
- 個人向け国債の金利は、変動10年が「基準金利×0.66」、固定5年が「基準金利-0.05%」、固定3年が「基準金利-0.03%」で毎月決まる
- 変動10年は半年ごとに適用利率が見直されるため、数年前に買ったものでも金利はすでに自動で上がっており、原則として乗り換えの必要はない
- 発行時の利率で固定される固定5年・固定3年は、低金利時代に買ったものなら中途換金して乗り換える価値があるケースがある
1. 個人向け国債の金利はどうやって決まるのか
個人向け国債には「変動10年」「固定5年」「固定3年」の3種類があり、それぞれ金利の決め方が異なります。
1.1 変動10年は「基準金利×0.66」
財務省によると、変動10年の適用利率(年率)は、10年固定利付国債の入札直前に行われた平均落札利回りをもとに計算する「基準金利」に0.66を掛けた値です(小数点以下第3位を四捨五入、0.01%刻み)。金利は半年ごとに見直され、満期までの10年間、市場金利の動きに応じて変動していきます。なお、この「×0.66」という設定方法自体は発行後に変わることはありません。
1.2 固定5年・固定3年は発行時の金利で満期まで固定
固定5年の適用利率は「基準金利-0.05%」、固定3年は「基準金利-0.03%」で、いずれも発行時の一度だけ決まり、満期までその利率が変わりません。基準金利には、募集期間開始の2営業日前に行われた5年債・3年債の入札結果をもとにした想定利回りが使われます。
2. 金利がどれだけ下がっても、下限は年0.05%
基準金利の算出方法を確認すると、変動10年・固定5年・固定3年で共通する仕組みが見えてきます。
2.1 下限金利のルール
基準金利が低くなると、変動10年では適用利率がゼロやマイナスに近づく可能性もあります。そこで、個人の方に安心して購入してもらうため、どの商品も最低でも年0.05%の金利は保証される仕組みになっています。日本銀行のマイナス金利政策が続いていた2021年から2023年ごろにかけては、多くの回号でこの下限の0.05%が適用されていた時期もありました。
2.2 2024年以降、金利は上昇トレンドに
日銀の金融政策の修正を背景に、2024年ごろから個人向け国債の金利は上昇に転じています。2026年8月募集分では変動10年が年1.87%まで上昇しており、下限の0.05%だった時期と比べると、金利水準は大きく変わりました。なお、2026年9月募集分の金利は9月3日ごろに発表される予定で、この記事の公開時点(9月1日)ではまだ公表されていません。最新の利率は財務省の個人向け国債サイトで確認できます。
3. 昔買った国債、中途換金して乗り換えるべきか
ここからは、数年前に購入した個人向け国債を保有し続けている場合に、中途換金して今の金利で買い直すべきかどうかを考えていきます。判断のポイントは、保有している国債が「変動10年」か「固定5年・固定3年」かで大きく変わります。
3.1 「変動10年」は原則、乗り換えの必要はない
変動10年は、半年ごとに基準金利をもとに適用利率が見直される仕組みです。そのため、数年前の低金利時代に購入したものであっても、現在の適用利率はすでに直近の発行分に近い水準まで自動的に上がっています。同じ変動10年に中途換金して買い直しても、金利面のメリットはほとんど期待できず、後述する中途換金調整額の分だけ目減りする可能性の方が高い点に注意が必要です。
3.2 「固定5年」「固定3年」は乗り換えの検討価値がある
一方、固定5年・固定3年は発行時に決まった利率が満期まで変わらないタイプです。低金利時代に購入した固定5年・固定3年は、その後どれだけ市場金利が上昇しても、購入時の低い利率のまま据え置かれます。このケースでは、中途換金して今の高い金利の国債に買い直すことで、受け取れる利息を増やせる可能性があります。
3.3 中途換金できるのは発行から1年経過後
個人向け国債は、発行から1年間は原則として中途換金できません。保有者本人が死亡した場合や、災害救助法の適用地域で被災した場合などは例外です。発行から1年(正確には第2期利子支払日以降)が経過すれば、原則としていつでも、1万円単位で中途換金できます。
3.4 中途換金では「直近2回分の利子相当額」が差し引かれる
中途換金する場合、額面金額に経過利子相当額を加えた金額から、直近2回分の税引前利子相当額に0.79685を掛けた「中途換金調整額」を差し引いた金額が受取額になります。0.79685という係数は、利子の源泉徴収税率20.315%を差し引いた後の割合です。元本(額面)自体が目減りすることはなく、差し引かれるのはあくまで直近の利子相当分だけという点がポイントです。
元本100万円の「固定5年」を保有した場合の年間利息イメージ1/1
出所:財務省「個人向け国債の中途換金についてのよくある質問」をもとにLIMO編集部試算
たとえば、下限の年0.05%が適用されていた時期に元本100万円で固定5年を購入し、発行から1年以上が経過しているケースを考えます。固定5年は満期まで利率が変わらないため、市場の金利がどれだけ上昇しても、この国債の適用利率は0.05%のままです。この場合、直近2回分の利子相当額(税引前)はあわせて500円ほどで、中途換金調整額は500円×0.79685で約398円です。中途換金による受取額は、経過利子をゼロと仮定すると約99万9602円になります。この資金を2026年8月募集分の変動10年(年1.87%)に乗り換えると、初年度の利息は税引前で約1万8700円となり、元の0.05%のまま持ち続けた場合の年500円と比べて、年間で1万8000円以上の差が生まれる計算です。乗り換えのコストが数百円程度にとどまるのに対して、利息の増加額はそれを大きく上回る可能性があることが分かります。
この試算はあくまで一例で、実際の中途換金調整額は、ご自身が保有している国債の表面利率や中途換金のタイミングによって変わります。ご自身の適用利率は、購入時の取引報告書や証券会社・銀行のマイページで確認できます。
「金利が上がったから乗り換えた方が得」と単純に考えるのではなく、まずは自分の保有している国債の利率が今どのくらいなのかを確認するところから始めるとよいと思います。差が小さい場合は、乗り換えの手間に見合わないこともあります。
