5. 30歳代に多い「子育て中で収入が読めず、老後資金の準備に踏み出せない」というご相談。ファイナンシャルアドバイザー・長井 祐人が伝えたいこと
子育ての時期は、世帯の収入も支出も動きやすい時期です。老後資金の準備を始めたい気持ちはあっても、収入の見通しが立たないうちは踏み出しにくい、という声をよくいただきます。ここでは、30歳代の方に多いご相談として整理してご紹介します。
5.1 30歳代に多いお悩み相談は「子育て中で収入が読めず、老後資金の準備に踏み出せない」

運用の経験がないことと、収入の見通しが立たないことが重なると、どこから手をつけるかで迷いやすくなります。特定のどなたかのお話ではなく、同じ年代に共通して起こりやすい迷いとしてご覧ください。
5.2 【ファイナンシャルアドバイザー・長井 祐人が回答】金額は動かせるものとして考えると、判断の幅が広がる
収入・支出面の変化などを理由に、積立投資を続けることが難しくなる場合もあるでしょう。
そんなとき、多くの人は「辞めるか、続けるか」の2択で考えてしまいがちですが、そこに
「投資する金額を下げる」という選択肢も加えてみてみましょう。
金融機関や商品によってルールは異なりますが、証券会社では100円から積み立てられる商品もあります。
また、これから投資を始める方の中には「投資は怖い」というイメージを持つ方もいるでしょう。そうした場合も、まずは小さな金額から始めて値動きに慣れていく方法もあります。
慣れてきたら、投資金額や商品の種類を少しずつ増やしてみても良いかもしれません。
まずは自分に合った商品・金額から始めてみましょう。
5.3 ポイント1:世帯の収入が動く時期は、止めるより金額を下げて続けるという方法がある
積立の話になると、「続けるか、やめるか」の二択で考えてしまう方が多いように感じます。実際には、その間に「金額を下げて続ける」という選択肢があります。毎月の負担を軽くしながら、積み立てを続けている状態そのものは保っておく、という形です。子育ての時期のように収入が動きやすい局面では、この中間の選択肢を持っておくと、収入が下がるたびに全部を止める必要がなくなります。1ページ目の試算でも、止めた場合と金額を下げて続けた場合とでは、20年後の到達額に差が出ました。もっとも、これは一定の利回りを仮定した目安であり、価格変動によって元本を下回る可能性は残ります。続けられなかった時期があること自体を、うまくいかなかった証拠のように受け止める必要はありません。
5.4 ポイント2:始めるときは、値動きの小さいものを少額から
運用の経験がない段階で、値動きの大きいものを多めの金額で持つと、下がった局面で不安が先に立ってしまい、続けること自体が難しくなりがちです。相談の場では、まず値動きの小さいものを少額から始めて、金額が上下する感覚に慣れていくという進め方をご提案することが少なくありません。非課税で運用できる制度は選択肢の一つですが、それ以外にも、いつでも引き出しやすいもの、元本の安定を優先するものなど、役割の違う置き場所があります。制度の枠にあてはめることを先に考えるより、いま出せる金額と、値動きにどこまで付き合えるかから決めていくほうが、無理が出にくくなります。どの置き場所を選んでも、値動きのあるものには元本割れの可能性があります。
5.5 ポイント3:余裕ができてから、対象や金額を広げていく
少額で始めると「この金額では意味がないのでは」と感じる方もいらっしゃいます。ただ、最初に決めた金額をずっと据え置く必要はありません。子どもの手が離れた、働く時間が戻った、収入が安定してきたといった変化があったときに、金額を増やしたり、置き場所を広げたりしていくという進め方があります。先に大きな金額で始めて数年で止めるより、続けられる金額から始めて、余裕ができた分だけ広げていくほうが、積み立てている期間そのものを長く取りやすくなります。1ページ目の試算で差を生んでいたのも、金額の大きさというより、積み立てが続いていた時間の長さでした。
前提も必要額も、世帯の状況によって変わります。公的年金の見込み額は「ねんきんネット」や年金事務所でご自身の記録から確認できますので、まずは土台の高さを確かめたうえで、上乗せをいつから、どのくらいの金額で始めるかという順に置き直していく形が取りやすいと思います。個別の判断については、専門家にご相談いただくと安心につながるでしょう。
6. まとめにかえて
厚生年金(国民年金部分を含む)を月30万円以上受け取っている人は、全体の0.1%ほどにとどまります。土台の高さを決めているのは一時点の収入というより、収入を得ながら制度に加わり続けた期間の長さでした。
第3号被保険者は令和6年度末で約641万人となり、女性は5年連続で減少しています。共働きという形は広がりましたが、第1子の出産後に働き続ける人が過半数を超えた一方で、非正規の働き方を選ぶケースは今も多く見られます。
家庭内の育児・家事の時間は、妻が夫の約4倍という状況が続いています。働く時間を減らした側は収入が下がるだけでなく、続けてきた積立をどうするかという判断も同時に抱えることになります。
今回の試算では、収入が下がる3年間に積立を止めた場合、金額を下げて続けた場合、そのまま続けた場合を並べました。どれが正解というものではありませんが、二択で考えずに済む選択肢があること自体は、知っておいて損のない情報だと思います。
なお、必要額も適切な前提も、家族構成や働き方、収入の見通しによって変わります。育児休業中の社会保険料の取り扱いや税制の適用については、勤務先の担当部署や関連する窓口にご確認ください。
参考資料
- 厚生労働省「令和7年版厚生労働白書・第2部-第1章 働き方改革の推進などを通じた労働環境の整備など」
- 厚生労働省「令和7年版厚生労働白書・日本の1日」
- 厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 厚生労働省「社会保険の加入対象の拡大について」
- 政府広報オンライン「年金の手続。国民年金の第3号被保険者のかたへ。」
長井 祐人
