3. 家賃以外の生活費とのバランスも見ておきたい
家賃だけでなく、食費や光熱費とのバランスも含めて生活費全体を確認しておくことが大切です。
3.1 65歳以上無職世帯の消費支出の内訳
総務省「家計調査報告」(2025年平均)によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯の消費支出は26万3979円で、内訳は食費が7万8964円(29.9%)、住居費が1万7739円(6.7%)、光熱・水道費が2万3540円(8.9%)などとなっています。
65歳以上の単身無職世帯では、消費支出14万8445円のうち食費が4万2545円(28.7%)、住居費が1万1416円(7.7%)、光熱・水道費が1万5565円(10.5%)です。
65歳以上無職世帯の消費支出、住居費は低めに見える理由2/2
出所:総務省「家計調査報告」(2025年平均)をもとにLIMO編集部作成
3.2 「住居費」の平均が低いのは、持ち家世帯が多いから
ここで注意したいのは、この「住居費」が実際の家賃相場とはかけ離れて低く見える点です。
総務省「令和5年住宅・土地統計調査」によると、65歳以上の夫婦のみの世帯の持ち家率は87.6%(借家12.3%)である一方、65歳以上の単身世帯では持ち家率が67.5%、借家が32.2%と、単身世帯では賃貸に住む人の割合がより高くなっています。家計調査の「住居費」には、賃貸の家賃だけでなく、持ち家の修繕・維持費なども含めて平均されているため、いずれの世帯タイプでも、実際に家賃を払っている世帯の負担感とは水準が異なります。特に借家住まいが3割を超える単身世帯では、この「住居費」の平均額ではなく、前章で取り上げた実際の家賃相場(全国平均5万9656円)を目安にする方が実態に近いといえます。
また、食費と光熱・水道費をあわせると、夫婦のみ世帯で消費支出の38.8%、単身世帯で39.2%を占めています。家賃を検討する際は、この食費・光熱費の負担も踏まえたうえで、手元にいくら残るかを具体的に計算しておくことが欠かせません。
「高齢者世帯の住居費は平均1万円台」という数字だけを見ると、家賃の負担は軽いというイメージを持ってしまうかもしれません。しかし、この平均は持ち家世帯が多数を占めた結果であり、実際に賃貸で暮らす方の負担感とは大きく異なる点に注意が必要です。特に単身の高齢者は3割超が賃貸住まいであり、この層にとっては平均額と実態のズレがより大きくなります。
賃貸で暮らす年金生活者の方は、家計調査の「住居費」の平均額ではなく、住宅・土地統計調査などが示す実際の家賃相場と、ご自身の年金額を照らし合わせて考えるようにしてください。
4. まとめ
「家賃は収入の3割まで」という目安は、国が定めた公式な基準ではなく、不動産業界などで広く使われている経験則です。この目安を年金の平均額に当てはめると、国民年金だけの単身者では上限が1万7829円、厚生年金の平均額でも4万5343円にとどまり、いずれも借家の家賃の全国平均(5万9656円)を下回ります。
一方、65歳以上の夫婦のみ無職世帯では、実収入の3割(7万6318円)が家賃の全国平均を上回ります。家計調査の「住居費」の平均額は持ち家世帯を含むため実態より低く出やすく、特に3割超が賃貸住まいの単身高齢者にとっては実態とのズレが大きい点にも注意しつつ、食費・光熱費とのバランスも踏まえて、ご自身の年金額に見合った家賃を具体的に計算してみることをおすすめします。
参考資料
- 厚生労働省「令和6年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 総務省「家計調査報告(家計収支編)2025年(令和7年)平均結果の概要」
- 総務省「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果」
和田 直子
