「家賃は収入の3割まで」という目安を、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
この「3割ルール」を年金収入にそのまま当てはめると、実は多くの年金生活者にとって、実際の家賃相場を大きく下回る金額しか「使えない」計算になります。
この記事では、平均的な年金額に3割ルールを当てはめるといくらになるのか、実際の家賃相場や光熱費・食費とのバランスとあわせて確認していきます。
- 「家賃3割ルール」は不動産業界などで広く使われる目安であり、国が定めた公式な基準ではない
- 国民年金だけの単身者だと、3割ルールの上限は月1万7829円で、公営住宅の家賃より低い
- 65歳以上無職世帯の家計調査の「住居費」は持ち家世帯を含む平均のため、賃貸の実態とは水準が大きく異なる
1. 「家賃3割ルール」は目安。実態は3割より低め
「家賃は手取り収入の3割まで」という目安は、不動産情報サイトやFPの記事などで広く紹介されています。
1.1 国が定めた基準ではなく、業界の目安
この「3割」という数字について、国土交通省などが公式に定めた基準を示す一次資料は見当たりません。UR都市機構(独立行政法人都市再生機構)の解説記事など、住宅供給側が生活費のシミュレーションをする際の目安として紹介しているのが実態で、あくまで「経験則的な目安」の一つと理解しておく必要があります。
1.2 現役世代の実態は、3割よりやや低め
国土交通省「令和3年度住宅市場動向調査」によると、民間賃貸住宅を借りた世帯の平均年収は516万円、家賃は月額7万5259円でした。額面年収から手取りを8割程度と仮定して概算すると、家賃が手取りに占める割合はおよそ2割強となり、実際には「3割」よりも低い世帯が多いこともうかがえます。
2. 年金額に3割ルールを当てはめると、いくらになるか
では、実際の年金の平均額をもとに、3割ルールを当てはめるとどうなるのか見てみましょう。
2.1 国民年金だけだと、上限は1万7829円
厚生労働省「令和6年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、国民年金(老齢年金)の平均受給月額は5万9431円です。これに3割ルールを当てはめると、家賃の上限は1万7829円となります。
2.2 厚生年金でも、上限は4万5343円
同資料によると、厚生年金(老齢年金、基礎年金を含む)の平均受給月額は15万1142円で、男女別では男性が16万9967円、女性が11万1413円です。厚生年金の平均額に3割ルールを当てはめると4万5343円、女性の平均額だけで見ると3万3424円が上限になります。
年金収入の3割を家賃に充てると、いくらまでか1/2
出所:厚生労働省「令和6年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」、総務省「家計調査報告」(2025年平均)、総務省「令和5年住宅・土地統計調査」をもとにLIMO編集部作成
一方、総務省「令和5年住宅・土地統計調査」によると、借家(専用住宅)の家賃は全国平均で月5万9656円です。国民年金だけの場合の上限額(1万7829円)は、家賃の全国平均の3分の1にも届かず、家賃が比較的低い「公営の借家」の平均2万4961円とも大きな開きがあります。厚生年金の平均額で見ても、上限額(4万5343円)は全国平均の家賃を1万円以上下回ります。
2.3 夫婦世帯なら、上限が家賃相場を上回る
総務省「家計調査報告」(2025年平均)によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯の実収入は25万4395円で、3割ルールを当てはめると7万6318円となり、全国の家賃平均(5万9656円)を上回ります。65歳以上の単身無職世帯の実収入(13万1456円)では上限が3万9437円となり、全国平均を2万円以上下回る水準です。世帯を持つ夫婦と、一人で年金を受け取る単身者とでは、同じ「3割ルール」でも当てはめた結果に大きな差が出ることが分かります。
「家賃は収入の3割まで」という目安は分かりやすい反面、年金収入だけの単身の方にそのまま当てはめると、実際に借りられる部屋がかなり限られてしまうことがあります。特に国民年金だけで生活している方の場合、3割ルールを守ろうとすると、公営住宅やUR賃貸など、家賃が比較的抑えられた住まいを選択肢に入れる必要が出てきます。
「3割を超えているから見直すべき」と機械的に判断するのではなく、まずはご自身の年金額と家賃の実際の比率を計算したうえで、貯蓄からの取り崩しも含めた無理のない範囲で考えることをおすすめします。
