「○○市 住民税非課税世帯」と検索して、市の独自基準を探している方は多いはずです。給付金や介護保険の案内で見かける言葉だけに、自分の住む市の数字を知りたくなります。
たとえば横浜市の場合には「横浜市だけの非課税基準」というものは存在しません。基準そのものは全国共通のルールで決まっており、市の裁量が入る余地はほとんどないためです。
横浜市らしさが本当に出てくるのは、非課税かどうかで金額が変わる「その先」の部分です。この記事では、基準の仕組みを確認したうえで、横浜市の介護保険料でいくらの差が生まれるかを編集部で試算しました。
なお、住民税非課税世帯の収入基準に関する詳しい説明は、下記の記事より一部を引用・参照しています。
- 横浜市の非課税基準は市の独自ルールではなく、生活保護の級地区分で決まります。横浜市は1級地です。
- 単身世帯なら合計所得45万円以下、令和8年度は給与収入110万円以下が目安になります。
- 横浜市の独自性は介護保険料に出ています。国の標準13段階に対し、横浜市は19段階を採用しています。
1. 横浜市で住民税非課税になる基準を確認する
まず、判定に使う基準を押さえます。住民税が非課税になるかどうかは、前年の「合計所得金額」が一定額以下かどうかで決まります。年収の額面そのものではありません。
1.1 単身なら合計所得45万円以下、給与収入なら110万円以下
扶養親族がいない単身世帯の場合、横浜市を含む1級地の自治体では、前年の合計所得金額が45万円以下であれば住民税が非課税になります。
給与収入だけで暮らしている場合は、給与所得控除を差し引いた後の金額が合計所得になります。横浜市の公表資料によると、令和8年度から給与所得控除の最低保障額が65万円から74万円(特例適用の場合)に引き上げられたため、給与収入の非課税となる目安額も変更されています。
1.2 扶養親族がいる場合は人数で基準が変わる
扶養親族や同一生計配偶者がいる世帯では、計算式が変わります。総務省の資料によると、1級地では「35万円×(本人+同一生計配偶者+扶養親族の人数)+21万円+10万円」以下が基準です。
たとえば配偶者を扶養している2人世帯なら、35万円×2人+21万円+10万円=101万円が非課税限度額になります。扶養する家族が増えるほど、この基準額も上がっていく仕組みです。
2. 「横浜市だけの基準」は存在しない——級地区分で決まっている
ここが、市名で検索した方にとって最も意外な部分かもしれません。非課税基準は市が独自に決めているわけではなく、国の枠組みに沿って設定されています。
2.1 基準額は生活保護の級地区分に連動している
総務省の資料によると、非課税限度額の基本額35万円と加算額21万円には、生活保護基準の級地区分に応じた率が乗じられます。率は1級地が1.0、2級地が0.9、3級地が0.8です。
この率を掛けた額を基準として、各自治体が条例で定める仕組みになっています。つまり自治体ごとに数字は違い得るのですが、その違いは級地区分によって機械的に決まり、市が自由に上げ下げできるものではありません。
2.2 横浜市は1級地、東京23区と同じ基準になる
総務省の資料では、1級地の例として東京23区と指定都市が挙げられています。横浜市は指定都市であり、1級地に該当します。
したがって横浜市の非課税基準は、東京23区と同じ水準になります。一方で、3級地に区分される市町村では基本額が28万円になるため、同じ収入でも判定結果が変わることがあります。
2.3 【級地区分別・単身世帯の非課税基準(令和8年度)】
前提:級地区分別の住民税非課税限度額(単身・扶養親族なし)と給与収入換算(総務省の公表情報に基づく編集部整理・令和8年度基準)1/2
出所:総務省「これまでの個人住民税の主な改正について(令和3年度第1回)資料3」などを基にLIMO編集部作成
横浜市が該当する区分
- 1級地の合計所得の基準:45万円以下/給与収入換算110万円以下
- 1級地に該当する自治体の例:横浜市・東京23区・指定都市
2級地・3級地の場合
- 2級地:合計所得41万5000円以下/給与収入換算約106万5000円以下
- 3級地:合計所得38万円以下/給与収入換算103万円以下
3. 横浜市の独自性は介護保険料に出る——国の13段階に対し19段階
では、横浜市に住んでいることが具体的に効いてくるのはどこか。答えは、非課税かどうかで金額が変わる制度のうち、市が自ら設計している部分です。その代表が介護保険料です。
3.1 国の標準は13段階、横浜市は19段階
65歳以上の介護保険料は、所得に応じた段階制で決まります。国が示す標準の区分は、令和6年度の制度改正で9段階から13段階に細分化されました。
これに対して横浜市は、公式資料で「国が標準とする13段階から、より所得に応じた保険料の負担となるよう19段階としており、所得の低い方に対しては保険料を軽減している」と説明しています。国の標準より6段階も細かく刻んでいることになります。
3.2 第9期の基準額は年7万9440円
横浜市の第9期(令和6年度から令和8年度)の基準額は、第6段階の保険料額である年7万9440円、月額に直すと6620円です。この基準額に段階ごとの率を掛けて、各人の保険料が決まります。
最も軽い第1段階は基準額の0.20倍で年1万5880円、世帯全員が市民税非課税で第1段階から第3段階に当たらない第4段階は0.585倍で年4万6470円です。段階が細かい分、所得の差が保険料に反映されやすい設計になっています。
4. 【編集者の視点】
非課税基準を市名で調べても答えが出にくいのは、探している場所と、実際に自治体の裁量が働く場所がずれているからです。基準額は級地区分で決まり、市の条例はそれを追認する形をとります。
一方で介護保険料は、3年ごとの介護保険事業計画のなかで市が自ら段階数と保険料率を設計します。ここには市の財政状況や高齢化率、そして「低所得層をどこまで手厚く軽減するか」という政策判断が直接表れます。横浜市が19段階を選んでいるのは、その判断の結果です。
したがって「横浜市に住んでいると非課税基準はどうなるか」ではなく、「横浜市では非課税かどうかで介護保険料がいくら変わるか」と問いを立て直すと、知りたかった答えにたどり着きやすくなります。次の章で、その差額を具体的に確認します。
5. 編集部試算:非課税を外れると介護保険料はいくら上がるか
横浜市の段階表をもとに、非課税かどうかで保険料がどれだけ変わるかを編集部で試算しました。いずれも年額で、第9期(令和6年度から令和8年度)の金額です。
5.1 世帯全員が非課税の第4段階と、本人が課税される第6段階
世帯全員が市民税非課税で第4段階に当たる場合の保険料は年4万6470円です。これに対し、本人が市民税課税となる第6段階は年7万9440円になります。
その差は年3万2970円です。月々に直すと約2750円の違いで、非課税を維持できるかどうかが、介護保険料という固定費に直接効いてくることがわかります。
5.2 最も軽い第1段階と比べると年6万3560円の開き
生活保護受給者などが該当する第1段階は年1万5880円で、第6段階との差は年6万3560円にもなります。19段階のなかで、所得の低い層がどれだけ手厚く軽減されているかが見て取れます。
ここで注意したいのは、これらが横浜市の金額だという点です。基準額も段階数も市ごとに異なるため、他市の記事で見た差額をそのまま横浜市に当てはめることはできません。
5.3 【横浜市の介護保険料・非課税かどうかによる年額の差】
前提条件:横浜市・第1号被保険者(65歳以上)・第9期(令和6年度〜令和8年度)の介護保険料年額と、非課税かどうかによる差額の編集部試算2/2
出所:横浜市「介護保険料について」などを基にLIMO編集部作成
本人も世帯も非課税の場合
- 第1段階(生活保護受給者等):年1万5880円(第6段階との差6万3560円)
- 第4段階(世帯全員が市民税非課税):年4万6470円(第6段階との差3万2970円)
本人または世帯に課税者がいる場合
- 第5段階(本人は非課税・世帯に課税者あり):年7万1490円(第6段階との差7950円)
- 第6段階(本人が市民税課税):年7万9440円(基準額)
6. 本人の所得が変わらなくても保険料が上がる場合がある
ここまでは本人が課税されるかどうかの話でした。実は横浜市の段階表には、本人の所得がまったく変わらなくても保険料が動く区分が用意されています。
6.1 第5段階は「本人は非課税、でも世帯に課税者がいる」
横浜市の第5段階は、本人は市民税非課税でありながら、同じ世帯に市民税課税者がいる場合に適用されます。保険料は年7万1490円で、世帯全員が非課税の第4段階の年4万6470円と比べると、年2万5020円高くなります。
つまり本人の所得がまったく変わっていなくても、同居している家族が課税されるようになるだけで、保険料が年2万5020円上がる計算になります。介護保険料が「世帯」の課税状況を見て決まる制度だという点が、金額として表れる場面です。
6.2 同居家族の働き方が変わると、段階も動く
この仕組みが効いてくるのは、たとえば同居する子どもが就職したときや、配偶者がパートの勤務時間を増やしたときです。世帯のなかに課税者が生まれると、本人の段階が第4段階から第5段階へ移る可能性があります。
逆に、同居家族が退職して世帯全員が非課税になれば、段階が下がることもあります。世帯の構成や働き方が変わったタイミングでは、翌年度の保険料通知の内容を確認しておくと、変化の理由を把握しやすくなります。
7. 【編集者の視点】
制度の複雑化が生む不利益のなかでも、この「世帯単位の判定」は特に気づかれにくい部類に入ります。本人は何も変えていないのに負担だけが動くため、通知が届いても理由がわからないまま受け取ってしまいがちです。
住民税の非課税判定そのものは個人単位で行われるのに対し、介護保険料の段階や、いわゆる住民税非課税世帯向けの給付金は世帯単位で見ます。同じ「非課税」という言葉を使いながら、見ている範囲が違うという点が混乱のもとになっています。
実務上の防衛策としては、世帯の構成が変わる予定があるときに、住民税・介護保険料・国民健康保険料の3つをまとめて確認することです。横浜市の場合、住民税は各区役所の税務課、介護保険料は各区役所の高齢・障害支援課が窓口になります。世帯全員分の課税状況を持参して相談すると、判定の見通しが立てやすくなります。
8. 横浜市で自分の状況を確認する手順
最後に、実際に自分の世帯がどうなっているかを確認する方法を整理します。
8.1 課税・非課税証明書は区役所で取得する
自分が住民税非課税に該当するかどうかは、課税・非課税証明書で確認できます。横浜市では各区役所で発行しており、令和8年度分の証明書は所定の時期から発行が始まります。
給付金や支援制度の申請で「非課税であることの証明」を求められる場面もあるため、世帯の状況を確認したいときは、世帯全員分を取得しておくと判断しやすくなります。
8.2 介護保険料の決定通知は毎年届く
65歳以上の介護保険料は、前年の所得と世帯の課税状況をもとに毎年決め直され、通知が届きます。自分が19段階のどこに位置しているかは、この通知で確認できます。
段階が前年から変わっている場合は、本人の所得が動いたのか、それとも世帯の課税状況が変わったのかを切り分けて考えると、理由がつかみやすくなります。判断に迷う場合は、通知書を持って区役所の窓口で確認してください。
※本記事は、編集部が総務省・横浜市が公表する公式の最新情報を直接確認の上、執筆・検証しています。
9. まとめ
- 横浜市に独自の住民税非課税基準はなく、生活保護の級地区分に応じて決まります。横浜市は1級地です。
- 単身世帯なら合計所得45万円以下、令和8年度は給与収入110万円以下が非課税の目安になります。
- 横浜市の独自性は介護保険料に表れており、国の標準13段階に対して19段階を採用しています。
- 世帯全員が非課税の第4段階と本人が課税される第6段階では、年3万2970円の差が生じます。
- 本人の所得が変わらなくても、同じ世帯に課税者ができると第5段階へ移り、年2万5020円上がります。
市名で非課税基準を調べても答えが見つかりにくいのは、基準そのものが全国共通の枠組みで決まっているからです。横浜市に住んでいることが効いてくるのは、非課税かどうかで金額が変わる制度の側になります。
自分の世帯がどの段階に当たるかを具体的に確認したい場合は、区役所で課税・非課税証明書を取得したうえで、介護保険料の決定通知とあわせて窓口に相談することをおすすめします。
10. よくある質問
10.1 Q. 横浜市には独自の住民税非課税基準がありますか。
A. ありません。非課税限度額は生活保護の級地区分に応じた率を基本額・加算額に乗じて算定され、各自治体が条例で定める仕組みです。横浜市は1級地に該当するため、東京23区や他の指定都市と同じ水準になります。
10.2 Q. 横浜市で単身の場合、非課税になる年収の目安はいくらですか。
A. 給与収入のみであれば、令和8年度は110万円以下が目安です。合計所得金額に直すと45万円以下になります。給与所得控除の最低保障額が令和8年度から65万円に引き上げられたことを反映した金額です。
10.3 Q. 非課税から外れると、横浜市の介護保険料はいくら上がりますか。
A. 世帯全員が市民税非課税の第4段階(年4万6470円)から、本人が課税される第6段階(年7万9440円)に移ると、年3万2970円上がる計算です。第9期(令和6年度から令和8年度)の金額で、基準額や段階数は市ごとに異なります。
10.4 Q. 自分の所得が変わっていないのに介護保険料が上がったのはなぜですか。
A. 同じ世帯に市民税課税者ができたことで、第4段階から第5段階に移った可能性があります。横浜市の第5段階は「本人は非課税だが世帯に課税者がいる」区分で、第4段階との差は年2万5020円です。詳しい理由は通知書を持参して区役所の窓口で確認してください。
参考資料
齊藤 慧

