5. お金に働いてもらう。そして「渡すとき」まで考える

行動を変えることに加えて、手元のお金に働いてもらうという発想も有効です。ただし、増やした先に何が待っているかも押さえておきたいところです。

2026年8月時点で、メガバンク3行やゆうちょ銀行の普通預金金利は年0.4パーセント前後まで上がりました。ネット銀行では年1パーセントに達するところもあります。

ただし、2025年の消費者物価は前年より3.2パーセント上昇しています。金利が上がったとはいえ、すべてを預金に置いたままでは実質的な価値が目減りする状況に変わりはありません。

選択肢として考えられるのが、投資信託や株式を使った資産運用です。値動きのリスクはありますが、預金より高いリターンが期待できます。商品の種類も多く、自分に合ったリスクとリターンの組み合わせを選べます。

そして、資産が増えるほど関わってくるのが相続です。純金融資産が1億円を超える水準になると、相続税がかかる可能性が現実的になります。

相続税には基礎控除があり、「3000万円+600万円×法定相続人の数」で計算します。この額を超えた部分が課税の対象です。

5.1 【試算】正味の遺産額が1億円のとき、相続税はいくらか

具体的な金額で確認します。前提は、亡くなった人の正味の遺産額が1億円、相続人は配偶者と子2人の合計3人、法定相続分どおりに分けるケースとします。

なお、正味の遺産額は相続税の課税対象となる財産の合計で、不動産なども含みます。金融資産だけを指す純金融資産とは範囲が異なります。

  • 基礎控除:3000万円+600万円×3人=4800万円
  • 課税遺産総額:1億円-4800万円=5200万円
  • 法定相続分で按分:配偶者2600万円、子は各1300万円
  • 配偶者分の税額:2600万円×15パーセント-50万円=340万円
  • 子1人分の税額:1300万円×15パーセント-50万円=145万円
  • 相続税の総額:340万円+145万円+145万円=630万円

【試算】正味の遺産額1億円のとき、相続税はいくらか3/3

【試算】正味の遺産額1億円のとき、相続税はいくらか

出所:国税庁「No.4152 相続税の計算」をもとにLIMO編集部作成

この630万円を、実際に取得した割合で各人に割り振ります。法定相続分どおりであれば、配偶者が315万円、子は各157万5000円です。

ここで効いてくるのが配偶者の税額軽減です。配偶者が実際に取得した正味の遺産額のうち、1億6000万円と法定相続分相当額のどちらか多い金額までは相続税がかかりません。このケースでは配偶者の負担はゼロになります。

結果として、実際に納めるのは子2人の合計315万円です。1億円という資産規模に対して3パーセントあまりという水準になります。

なお、これは一定の前提を置いた目安の試算です。不動産の評価や小規模宅地等の特例、生命保険金の非課税枠などによって金額は変わります。実際の申告にあたっては税理士や所轄の税務署にご確認ください。

5.2 生前贈与の加算対象期間が段階的に延びる

相続税を抑える手段として、生前に少しずつ贈与しておく方法があります。ただし、亡くなる前の一定期間内に行われた贈与は、相続財産に加算されます。

国税庁によると、この加算対象期間は相続の開始日によって次のように変わります。

  • 2026年12月31日までに相続が開始:相続開始前3年以内
  • 2027年1月1日から2030年12月31日までに開始:2024年1月1日から死亡の日まで
  • 2031年1月1日以後に開始:相続開始前7年以内

段階的に3年から7年へ延びていく仕組みです。なお、延長された3年超7年以内の部分については、贈与時の価額の合計から総額100万円までは加算されません。

早く始めた分ほど加算の対象から外れやすくなる構造ですので、贈与を検討するなら時間を味方につける必要があります。

制度の適用は個々の事情によって判断が変わります。具体的な進め方は、税理士や所轄の税務署に確認したうえで決めてください。

年代別の貯蓄額や年収別の金融資産保有額とあわせて富裕層の位置づけを見たい方は、こちらの記事でくわしく解説しています。あわせてご参考ください。
【最新データ】日本の富裕層の割合は?年代別の平均貯蓄額と年収別データから見る資産形成の最適解

6. 40歳代に多い「賞与の時期に積立額を上乗せしたほうがよいのか」というご相談。ファイナンシャルアドバイザー・菅原 美優が伝えたいこと

積立を始めたあとに、年間の金額をどう配分するかで迷うというご相談は、40歳代の方から寄せられることが少なくありません。始めるかどうかではなく、続け方をどう決めるかという段階の悩みです。

6.1 40歳代に多いお悩み相談は「賞与の時期に積立額を上乗せしたほうがよいのか」

40歳代のお客様
非課税で運用できる制度を使った積立は、もう始めています。毎月の金額をこのまま続けるのがよいのか、賞与の時期にまとめて増やしたほうがよいのか、年間の組み立て方に迷っています。

すでに積立を続けてきた方ほど、始めるかどうかではなく、配分をどう変えるかという段階の悩みになります。

増やすかどうかそのものより、増やし方の形をどう決めるかが論点になることも少なくありません。年間の合計額を先に決めてしまうと、収入が動いた年に調整しづらくなるためです。

6.2 【ファイナンシャルアドバイザー・菅原 美優が回答】土台を決めてから上乗せを考える

菅原 美優
まずは、賞与がなくても無理なく毎月続けられる金額を土台に置きましょう。途中で積立を止めたり減らしたりする回数が少ないほど、計画は保ちやすくなります。積立は長期で運用することにより、運用の効果が生まれやすくリスクも軽減できます。そのため、賞与がある年は上乗せという選択肢はもっておいても良いですが、生活に必要な資金まで積立に回さないほうが良いでしょう。そして、将来どのように受け取っていくか、出口の面も意識しておくことが大切です。事前に受け取り方に幅がある仕組みを確かめておくことが、年ごとの収入の動きに左右されにくい積立計画につながります。

6.3 ポイント1:毎月続けられる金額を土台に置く

最初に置きたいのは、賞与がない年でも無理なく続けられる金額です。積立は長い期間をかけて積み上がっていく仕組みですので、途中で止めたり減らしたりする回数が少ないほど、計画は保ちやすくなります。毎月の家計から自然に出せる金額を土台として決めておくと、収入に増減があった年でも積立そのものは途切れにくくなります。なお、運用に回した部分には価格の変動があり、元本割れとなる可能性がありますので、生活に必要な資金まで積立に回さないという線引きもあわせて置いておくと、判断がぶれにくくなります。

6.4 ポイント2:賞与がある年は上乗せという選択肢を持つ

土台が決まったうえでの話として、賞与が支給される時期に積立額を一時的に上乗せするという選択肢があります。月々の家計を大きく変えずに年間の合計額を増やせる場合があり、まとまった収入が入る月を積立の増額にあてる方法として検討されることがあります。ただし、賞与の額は勤務先の状況によって変わりますし、賞与という形での支給がない働き方もあります。上乗せを前提に年間の計画を組むのではなく、余裕が出た年に足す調整として扱うという整理の仕方もあります。

6.5 ポイント3:受け取り方に幅がある仕組みかを確かめる

積み立てている間の金額だけでなく、将来どう受け取ることになるのかも、手続きを進める前に確かめておきたい部分です。仕組みによっては、一括で受け取る形と、年金のように分けて受け取る形を選べる場合があります。どの時期からどのような形で受け取れるのかは制度や契約の条件によって異なりますので、公的年金の受け取りが始まる時期との組み合わせも含めて確認しておくと、あとから計画を見直しやすくなります。受け取り方によって税金の取り扱いが変わることもありますので、その点は契約先の窓口や税務の専門家、関連する部署に確かめながら進めていただくのが確かです。

いくら積み立てるかを決める前に、賞与がなくても続く部分と、余裕が出たときに足す部分を分けておく。この順番に行き着くことが少なくありません。無理のない積立額は家族構成や収入の安定度によって変わりますので、個別の判断については専門家に確かめながら進めていただければと思います。

7. まとめにかえて

純金融資産1億円以上5億円未満の富裕層は153万5000世帯、5億円以上の超富裕層は11万8000世帯でした。合計165万3000世帯、純金融資産の総額は469兆円で、いずれも2005年以降の最多を更新しています。

2年前の148万5000世帯からの増加ですが、この間の株価上昇と円安が押し上げた面もあります。相場の動きで基準を出入りする世帯もあるという前提で見ておきたい数字です。

資産を築いた人に共通するのは、支出の判断軸が定まっていること、考えを柔軟に変えられること、そして好きなことに時間を使っていることでした。

金額の大きさよりも、こうした日々の判断の積み重ねのほうが再現しやすい部分です。まずは自分が何にお金と時間を使いたいのかを整理するところから始めてみてください。

菅原 美優

相続税の基礎控除は「3000万円+600万円×法定相続人の数」ですので、相続人の人数によってラインが変わります。まずは自分の家族構成で基礎控除がいくらになるかを出し、いまの資産と比べてみるところからです。ここを超えていなければ、相続税の心配は不要になります。

超えている場合でも、配偶者の税額軽減のように負担を大きく減らす仕組みがあります。ただし、配偶者の軽減を最大限使うと、次にその配偶者が亡くなったときの相続で税負担が重くなることがあります。1回目と2回目を通して考える視点が必要です。

生前贈与も同じで、加算対象期間が段階的に延びていく以上、思い立ってから始めるのでは間に合わないこともあります。判断が分かれる部分ですので、具体的な金額や進め方は税理士や所轄の税務署に確認しながら、早めに家族で話し合っておくことをおすすめします。

参考資料

菅原 美優