純金融資産を1億円以上持つ「富裕層」の世帯数が、過去最多を更新しました。野村総合研究所の推計によると、富裕層と超富裕層を合わせて165万3000世帯です。

一方で、2027年1月1日以後に発生する相続からは、生前贈与を相続財産に加算する対象期間が段階的に延びていきます。資産を築いた先には、次の世代へどう渡すかという課題が控えています。

この記事では、富裕層の定義と世帯数がどう変わってきたのか、そして資産を築いた人に共通する行動と考え方を確認していきます。

菅原 美優
富裕層というと遠い世界の話に聞こえますが、純金融資産1億円という基準は、自宅を除いた金融資産の合計です。相続のご相談では、本人にその自覚がないまま基準に近づいていたというケースもあります。

なお、富裕層の定義と世帯数、資産を築いた人に共通する行動に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。

資産1億円以上の富裕層に共通する3つの特徴!お金が自然と貯まる人の思考と行動【元FP会社職員監修】
資産1億円以上の富裕層に共通する3つの特徴!お金が自然と貯まる人の思考と行動【元FP会社職員監修】
ココがポイント
  • 富裕層は純金融資産1億円以上5億円未満で153万5000世帯、超富裕層は5億円以上で11万8000世帯
  • 合計165万3000世帯、純金融資産の総額は469兆円で2005年以降最多を更新
  • 資産を築いた人には、支出の判断軸が定まっているという共通点がある

1. 「富裕層」とは資産いくらからか。定義と世帯数を確認する

富裕層という言葉はよく使われますが、金額の基準まで意識している人は多くありません。ここでは代表的な区分を確認します。

野村総合研究所のレポートでは、次のように定義されています。

  • 富裕層:世帯の純金融資産保有額が1億円以上5億円未満
  • 超富裕層:世帯の純金融資産保有額が5億円以上

純金融資産とは、預貯金や株式、投資信託、保険などの金融資産から負債を差し引いた額です。自宅などの不動産は含まれません。

野村総合研究所は世帯を5つの階層に分けて推計しており、その合計は5570万4000世帯です。この母数に対して、富裕層は約2.75%、超富裕層は約0.21%にあたります。

合わせても3%に届かない水準です。

1.1 2023年時点の富裕層・超富裕層の世帯数

直近の推計では、世帯数は次のとおりです。

富裕層・超富裕層の世帯数と純金融資産(2021年→2023年)1/3

富裕層・超富裕層の世帯数と純金融資産(2021年→2023年)

出所:株式会社野村総合研究所「野村総合研究所、日本の富裕層・超富裕層は合計約165万世帯、その純金融資産の総額は約469兆円と推計」をもとにLIMO編集部作成

  • 富裕層:153万5000世帯
  • 超富裕層:11万8000世帯

合計すると165万3000世帯です。2023年の推計で、世帯数は2005年以降の最多を更新しました。

1.2 2021年の前回推計と比べる

2年前の前回推計では、次の結果でした。

  • 富裕層:139万5000世帯
  • 超富裕層:9万世帯

合計148万5000世帯からの増加で、野村総合研究所によると2年で11.3%の増加です。

純金融資産の総額で見ると、富裕層は259兆円から334兆円へ、超富裕層は105兆円から135兆円へ増えました。合計では364兆円から469兆円へと、28.8%の増加です。

背景として3つの要因が挙げられています。この期間の株価の急騰でリスク性資産の価値が伸びたこと、円安の進行で外貨建て資産の実質的な価値が上がったことの2つです。

そしてもう1つが、増加傾向にある相続によって、相続人が富裕層・超富裕層となるケースです。資産の移転そのものが、富裕層の裾野を広げています。

1.3 【試算】富裕層は1世帯あたりいくら持っているのか

世帯数と資産総額が分かると、1世帯あたりの平均も出せます。公表された数値から割り算してみます。

  • 富裕層:334兆円÷153万5000世帯=約2億1800万円
  • 超富裕層:135兆円÷11万8000世帯=約11億4400万円
  • 両者の合計:469兆円÷165万3000世帯=約2億8400万円

富裕層の下限が1億円であるのに対し、1世帯あたりの平均は約2億1800万円でした。基準をわずかに超えた層だけでなく、その倍以上を保有する世帯も相当数あることがうかがえます。

超富裕層になると平均は約11億4400万円です。世帯数では全体の0.21%にすぎませんが、保有する純金融資産は135兆円にのぼります。

なお、これは公表値を単純に割った目安であり、実際の分布を示すものではありません。

菅原 美優
世帯数が増えている背景には、株価や為替の動きで資産が押し上げられた面もあります。相場によって基準を超えたり下回ったりする世帯もあるという前提で、この数字は見ておきたいところです。

2. 富裕層の特徴①「ムダなお金と時間は使わない」

資産を築いた人には、日々の行動に共通点があるといわれます。ここからは3つの特徴を順に見ていきます。

1つ目は、お金の使い方に対する厳しさです。派手に使うイメージとは反対に、支出には慎重な人が多いとされています。

何かを買うときには、その金額を払う価値が本当にあるのかを考えます。代わりになるものがあれば代替し、なんとなく新しいものに買い替えることをしません。

これは倹約というより、お金に対する価値基準がはっきりしているということです。不要なものには使わない一方で、使うべきものにはきちんと使います。その判断の軸が定まっています。

視点も目先だけではありません。稼ぐこと、使うこと、投資すること。それぞれについて、かけたお金が将来どうなるかまで含めて考えています。

時間の使い方も同じです。仕事は多忙でも、メリハリをつけて家族や友人との時間を確保している人が多いといわれます。

3. 富裕層の特徴②「考え方が中立的で、軌道修正が早い」

2つ目は、意見の持ち方と変え方です。自分の考えを強く持っている印象がありますが、実際は少し違います。

自分の意見は持っていても、それに固執したり人に押し付けたりすることは多くありません。人の話をよく聞き、自分と違う考えでも頭ごなしに否定せず、いったん受け止めます。

そして、良いと判断すれば取り入れ、考えや行動を変えます。

失敗したときの切り替えも早い傾向があります。何を反省し、次にどう動くかを決めるまでの時間が短いということです。

時代も価値観も変わっていきます。自分の考えを持つことは大切ですが、固執すると機会を逃すことにもなりかねません。

4. 富裕層の特徴③「好きなものを選び、人生を楽しんでいる」

3つ目は、仕事や趣味との向き合い方です。資産を築いた人は、総じて人生を楽しんでいるといわれます。

好きなことや得意なことを仕事にしている人が多く、その話をするときの表情が違います。好きなことであれば長時間でも苦にならず、続けやすくなります。

失敗しても好きだからこそ切り替えが早く、次の行動に移れます。学ぶ意欲が高く、情報のアンテナも広く張れるため、結果として成功する確率が上がるのでしょう。

楽しんでいるのは仕事だけではありません。忙しくても家族を大切にし、趣味の時間も確保しています。自分の好き嫌いを把握したうえで、好きなことに時間を配分しているということです。

菅原 美優
3つの特徴に共通しているのは、判断の基準を自分で持っているという点です。何にお金と時間を使うかが決まっている人は、資産形成の場面でも迷いが少なくなります。まずは自分の価値基準を言葉にしてみることをおすすめします。