「もうお墓は要らないのではないか」――秋のお彼岸(9月22日)を前に、実家のお墓の将来について、そんな問いが頭をよぎった方も多いはずです。株式会社鎌倉新書の最新調査によれば、購入されたお墓のうち樹木葬が47.4%でトップを維持する一方、「合祀墓・合葬墓」も16.4%となり、伝統的な一般墓(15.2%)や納骨堂(15.5%)を上回って2位に浮上しました。
個別のお墓を持たない・引き継がない供養のかたちは、すでに珍しいものではなくなっています。興味深いのは、こうした動きを後押ししているのが価格面のメリットではなく、残される家族の手間を減らしたいという思いやりである点です。
この記事では、秋のお彼岸のタイミングで、改葬・墓じまいと樹木葬をめぐる直近の数字を見ていきます。
また、記事後半では身内が亡くなった後に手続きを忘れがちな「葬祭費」「未支給年金」もあわせてチェックしていきます。
1. もうお墓は要らない?改葬(墓じまい)が過去最多を更新し続ける理由
全国の改葬(墓じまい)件数を集計している厚生労働省「衛生行政報告例」を見ると、2024年度は17万6105件に達し、統計開始以降で最も多い水準となりました。
- 2002年度:7万2040件
- 2022年度:15万1076件
- 2024年度:17万6105件(過去最多)
2002年度の7万2040件と比べると、実に2.4倍以上に膨らんでいる計算です。背景には、実家のお墓が遠方で管理が難しい、継ぐ人が見つからない、といった事情があります。
株式会社鎌倉新書「第4回 改葬・墓じまいに関する実態調査」でも、改葬を考えるきっかけとして「お墓が遠方にあること」が最も多く挙げられ、「継承者がいないこと」が続きました。
2. 一般墓はわずか15.2%。樹木葬・合祀墓が示す「お墓を持たない」時代の実態
同じ「第17回 お墓の消費者全国実態調査」(2026年1月16日~1月30日実施、有効回答1267件)で、購入したお墓の種類別の割合と平均購入価格は次の通りでした。
- 樹木葬:47.4%/平均71.7万円(前年比+3.9万円)
- 合祀墓・合葬墓:16.4%
- 納骨堂:15.5%/平均81.5万円
- 一般墓(墓石を建てるお墓):15.2%/平均152.0万円
樹木葬の平均購入価格は前年の67.8万円から71.7万円へ上昇しましたが、それでも一般墓の半額以下で用意できる水準です。
ただし樹木葬は埋葬形式によって価格差が大きく、他の方の遺骨と一緒に埋葬する「合祀型」であれば数万円台からと手が届きやすい半面、区画や木を専有する「個別型」を選ぶと、一般墓とさほど変わらない金額になるケースもあります。契約前に形式ごとの価格を確認しておきましょう。
2.1 選ばれているのは「安いから」ではない?
樹木葬を購入した715人を対象にした株式会社鎌倉新書「第2回 樹木葬の消費者全国実態調査」では、購入の決め手として次の項目が上位に挙がっています。
- 子どもに負担をかけたくない:46.3%
- 継承者がいない:26.4%
- 費用:7.8%
- ペットと一緒に入ることができる:7.4%
上位ふたつの「家族への配慮」「継ぐ人の不在」を足すと全体のおよそ73%に達し、費用を挙げた回答は1割に満たない水準です。樹木葬の広がりを支えているのは、値段の手頃さというより、この先の管理や続けやすさへの意識だと考えられます。
「もうお墓は要らない」というと、遺骨をどこにも納めなくてよい、という意味に受け取られることがありますが、実際にはそうではありません。樹木葬や合祀墓、海洋散骨も、遺骨をどのように扱うかという「供養の方法」の違いであり、多くの場合は何らかの形で弔いの場や手続きが必要になります。
また、「個別のお墓を持たない」ことと「費用がかからない」ことも、必ずしもイコールではありません。樹木葬でも個別の区画に樹木を植えるタイプは一般墓とそれほど変わらない費用がかかりますし、契約から一定年数が経つと合祀されて個別のお参りができなくなる場合や、別途「年間管理料」が発生する霊園もあります。
タイトルの言葉だけで「お墓はもう考えなくていい」と早合点せず、埋葬形式・管理の続き方・費用の内訳まで、資料請求や現地見学の段階でひとつずつ確認しておくことをおすすめします。
