3. 家族の手続きで見落としやすい注意点が2つある
お墓や供養の準備と並んで押さえておきたいのが、身内が亡くなったあとに自分から動かないと受け取れない「お金の手続き」です。うっかり見落としやすい注意点が2つあります。
3.1 ①葬祭費は自治体への申請が必要(時効2年)
亡くなった人が国民健康保険や後期高齢者医療制度に入っていた場合、葬儀の施主(喪主)には「葬祭費」が支給されます。金額や申請できる期間は自治体ごとに違い、神戸市の例では5万円が支給され、葬儀を行った日の翌日から2年以内に申請する必要があります。
黙っていても振り込まれるわけではなく、遺族側が申請して初めて支給される点に注意が必要です。この期限を越えると基本的に支給を受けられなくなるので、早めの手続きをおすすめします。
3.2 ②未支給年金は相続放棄をしても請求できる(時効5年)
年金受給者が亡くなると、死亡した月の分までのうち、まだ振り込まれていない年金が残ることがあり、これを遺族が「未支給年金」として請求できます。日本年金機構の定めでは、請求できる遺族の間に優先順位が設けられています。
未支給年金を請求できる遺族の優先順位
- ①配偶者
- ②子
- ③父母
- ④孫
- ⑤祖父母
- ⑥兄弟姉妹
- ⑦その他の3親等内の親族
条件は、故人と暮らしの財布を共にしていたことです。同居していなくても「生計同一関係に関する申立書」といった書類で認められるケースがあります。
見落とされがちなのが、未支給年金は相続財産とは別物という点です。遺族に固有の権利として認められているため、相続を放棄した人でも受給できることがあります。
請求の窓口は年金事務所か街角の年金相談センターで、時効は5年に設定されています。
たとえば、神戸市で葬儀を行い葬祭費5万円を受け取り、あわせて月10万円程度の年金を受給していた人の未支給年金(偶数月払いのため通常1〜2か月分)が10万〜20万円ほどあった場合、両方を合わせると15万〜25万円程度を遺族が受け取れる計算になります。見込み額の目安として、うっかり見逃さないようにしたいポイントです。
4. 本当に「お墓ゼロ」にできる?永代供養・海洋散骨という選択
家族に手間をかけたくない、継ぐ人がいない、といった事情に対応できる供養は樹木葬に限りません。永代供養や合祀墓に加えて、近年は物理的なお墓そのものを持たない「海洋散骨」を選ぶケースも増えています。
海洋散骨とは、火葬後の遺骨をパウダー状にして海に還す供養の方法です。葬送に関する価値観の変化を受け、厚生労働省も事業者向けのガイドラインを整備しています。墓地や霊園に手を合わせる場所が残る樹木葬とは異なり、海洋散骨では遺骨そのものが海へ還るため、目に見えるお墓は残りません。
株式会社鎌倉新書「第4回 改葬・墓じまいに関する実態調査」でも、改葬先としては永代供養(合祀・合葬)を選ぶ人が最も多いという結果が出ています。管理を残さないという理由だけでなく、「海や自然を愛していた」という本人の意思も踏まえながら、家族で相談してみることをおすすめします。散骨は国内外を問わず周辺の環境や海域への配慮が求められるため、依頼する事業者選びは慎重に行ってください。
5. まとめにかえて|「もうお墓は要らない」時代に、家族で決めておきたいこと
個別のお墓を必ずしも必要としない供養は、樹木葬や合祀墓・合葬墓というかたちで、すでに購入者の半数以上に選ばれています。海洋散骨まで含めれば、物理的な「お墓」を持たない選択も十分に現実的です。
ただし、「お墓が要らない」ことと「何もしなくていい」ことは同じではありません。永代供養や合祀にも、費用や将来お参りできる場所の有無といった違いがあります。選ぶ際は値段だけでなく、その後の管理の仕組みまで見ておくと安心です。
加えて、葬祭費や未支給年金は、家族側から動かない限り受け取れないお金です。秋のお彼岸という節目に、「お墓を持つか、持たないか」も含めて、こうした手続きとあわせて家族で話しておきましょう。
6. 【筆者コメント】
筆者自身、同年代の友人の中では比較的早くに実家のお墓を引き継ぎました。お盆やお彼岸のたびに「そろそろどうしようか」と話題にはなるものの、いざ話し合うと費用の話が先行し、肝心の「どんな形で送りたいか」「誰にどこまで頼みたいか」が置き去りになりがちです。
樹木葬にしても永代供養にしても、正解は一つではなく、家族の事情によって最適な形は変わります。ただ、「永代供養」という言葉には安心感が先行しがちですが、実際には合祀までの年数や管理料の有無など契約ごとに中身が異なります。大切なのは、元気なうちに希望をすり合わせ、契約内容まで確認したうえで、それを言葉にして伝えておくことです。
今回取り上げた葬祭費や未支給年金のように、知っているかどうかで手元に残るお金が変わることもあります。お墓参りの帰り道や食事の場など、ふとした一言から始めてみてください。小さな会話の積み重ねが、いざというときの家族の負担を減らしてくれるはずです。
