4. 差が開くのは昇進の階段の長さが違うから
同じ仕事をしていても金額が違う、という単純な話ではありません。年代とともに開いていくところに、この差の性質が表れています。
4.1 役職の段数と定期昇給の積み上がり
規模の大きい企業ほど組織の階層が多く、役職の段数もあります。昇進のたびに賃金が上がる仕組みがあれば、年数を重ねるほど差は開いていきます。
20歳代でほとんど差がないのに50歳代後半で13万円開くのは、初任給の差ではなく、その後の積み上がり方の差だということです。
4.2 60歳で指数が戻るのは水準が下がるから
60〜64歳で指数が88.4まで戻りますが、これは小企業が伸びたからではありません。大企業の賃金が46万5900円から35万7700円へ大きく下がるためです。
5. いまの金額より、この先の傾きを見る
5.1 30歳代で比べると差が見えない
30〜34歳の時点では、大企業34万4600円に対して小企業28万6500円で、指数は83.1です。この年代で転職を考えると、目先の提示額だけで判断してしまいがちです。
ただ、この差は40歳代で75.6まで開きます。いまの金額が同じでも、10年後に違う場所にいる可能性があります。生涯で受け取る額で考えると、判断材料が変わってきます。
5.2 賃金が上がる時期は年金にもつながる
老齢厚生年金の報酬比例部分は、現役期の平均標準報酬額と加入期間で決まります。50歳代の賃金が高いほど、その期間の分だけ将来の年金も増える仕組みです。
規模による差は、現役期の手取りだけでなく老後の受給額にも影響します。ただし標準報酬月額には上限があり、いまは月65万円で頭打ちです。この上限は2027年9月に68万円、2028年9月に71万円、2029年9月に75万円へ段階的に引き上げられる予定です。
6. 役職者だけの数字でも、賞与込みの数字でもない
今回の数字を自分に当てはめるときの注意点を挙げておきます。
6.1 役職者だけの数字ではない
今回の企業規模別の賃金は、その年代の一般労働者全体の平均です。管理職に限定した数字ではありません。同じ調査の役職別の表とは別の集計ですので、掛け合わせて「大企業の部長級は何円」と読むことはできません。
6.2 所定内給与に賞与は含まれない
いずれも残業代や賞与を除いた月額です。賞与の水準は企業規模で差が出やすい部分ですので、年収で比べると差はさらに広がる可能性があります。
6.3 同じ人を追いかけた数字ではない
年齢階級別の賃金は、同じ時点で各年代を横に並べたものです。いま30歳代の方が20年後にこの金額になるという意味ではありません。
7. 確かめておきたい3つのこと
平均と比べるより、自分の位置を出すほうが先です。
7.1 自分の所定内給与を同じ条件で出す
給与明細から残業代を除いた金額を確認します。そこに年齢と勤務先の規模を添えて、今回の数字と並べてみてください。
7.2 10年後の見込みを勤務先の制度で確認する
昇給や昇格の仕組みが就業規則や賃金規程に定められていますので考えてみるといいでしょう。、
7.3 年金の見込額とあわせて見る
ねんきんネットや50歳以上の方に届くねんきん定期便で、将来の年金見込額を確認できます。現役期の賃金がどう反映されるかが見えると、準備すべき金額も具体的になります。
8. まとめにかえて
賃金は大企業38万5100円、中企業32万6200円、小企業30万5600円で、小企業は大企業の79.4%でした。前年の82.1%から下がっており、差は拡大しています。
年代別では55〜59歳で最も開き、大企業46万5900円に対して小企業33万5100円と13万800円の差がありました。男性に限れば16万7100円です。
20歳代では9割近くまで近い水準です。差は入口ではなく、その後の積み上がり方で生まれています。いまの金額と10年後の傾きを、分けて見てみてください。
参考資料
宮野 茉莉子