スーパーのレシートを思わず二度見してしまう――そんな場面がすっかり日常になりました。

日々の物価高が家計を圧迫するなか、世代を問わず多くの人の心に重くのしかかっているのが「老後資金への漠然とした不安」です。
将来必要になる生活費へのハードルが高く感じられる一方で、頼みの綱である年金は「平均額」だけを鵜呑みにすると、実態を見誤りかねません。

今回は、厚生年金受給のリアルな現在地と、目前に迫る年金やiDeCoのルール変更を掛け合わせながら、いま私たちが知っておくべき「老後のお金との賢い向き合い方」をすっきりと整理していきます。

ココがポイント
  • 厚生年金の平均月額は15万289円。しかし女性の49.53%は月10万円台にとどまり、男女差は歴然

  • 男性の最多層は「15万円台」だが、月25万円以上を受給できる人は男性でもわずか3.35%にすぎない

  • 高齢夫婦世帯の家計は毎月4万2434円の赤字。2026年に迫る年金・iDeCoの制度改正を踏まえた備えが必要に

1. 厚生年金、平均は月15万289円 でも「ボリュームゾーン」は男女で対照的

まず、厚生年金の受給額の月額を、男女別にみていきます。

2025年12月に厚生労働省年金局が公表した最新資料「令和6年度 厚生年金・国民年金事業の概況」によると、老齢厚生年金(国民年金部分を含む)の平均年金月額は15万289円(男性16万9967円・女性11万1413円)でした。

女性の平均受給額は男性よりおよそ6万円低く、過去の賃金格差やライフイベントによるキャリアの中断が影響していると考えられます。

厚生年金 年金月額階級別老齢年金受給権者数(男性・女性)1/2

厚生年金 年金月額階級別老齢年金受給権者数(男性・女性)

出所:厚生労働省年金局「令和6年度厚生年金・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

  • 【男性】15万円以上~20万円未満:441万4218人(41.33%)でボリュームゾーン
  • 【男性】20万円以上~25万円未満:257万8659人(24.15%)
  • 【男性】25万円以上~30万円未満:33万9320人(3.18%)
  • 【男性】30万円以上:1万8801人(0.18%)
  • 【女性】10万円以上~15万円未満:267万7242人(49.53%)でボリュームゾーン
  • 【女性】5万円以上~10万円未満:189万2228人(35.00%)
  • 【女性】15万円以上~20万円未満:57万3593人(10.61%)
  • 【女性】20万円以上:9万893人(1.68%)※20万円以上の全階級の合計

男性は「15万円台」が全体の4割超を占める一方、女性は「10万円台」が半数近くを占め、月15万円以上を受給できている女性は全体の約12.4%にとどまります。

厚生年金は現役時代の収入(標準報酬)がそのまま反映される仕組みのため、この男女差は今後も急には縮まりにくいとみられます。

2. 月25万円超は「ごく一握り」 年金だけでは埋まらない家計の赤字

同資料から、厚生年金を毎月25万円以上受給している人の割合をみると、男性で全体の約3.35%(35万8121人)、女性は全体の約0.13%(7155人)にとどまります。

さらに「30万円以上」の層に絞ると、男性で約0.18%(1万8801人)、女性は約0.009%(482人)まで割合は下がります。

働き方の多様化が進むなかで、フリーランスへの転身やセカンドキャリアへの転職といった選択肢が増えた一方、現役時代の平均年収が下がるリスクとも隣り合わせです。

60歳まで会社員として厚生年金に加入し続けたとしても、右肩上がりの昇給が保証されているわけではありません。

総務省の「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」によると、65歳以上の高齢無職夫婦世帯(2人世帯)の1カ月あたりの家計収支は、実収入25万4395円に対して実支出が29万2783円(消費支出26万3979円、非消費支出2万8804円)でした。

差し引き毎月4万2434円の赤字(不足額)が発生しており、この分は現役時代の貯蓄を切り崩して補うことになります。

J-FLECの同調査では、70歳代のシニア世帯の87.7%が家計に「ゆとりがない・苦しい」と感じており、その最大の理由に「物価上昇」を挙げています。

公的年金だけで老後を乗り切るのが難しいと感じる人が増えるなか、若いうちから「自分自身の手で備える」ことの重要性は、これまで以上に高まっているといえるでしょう。

3. 監修者からのコメント

熊谷 良子

今回のデータからもわかる通り、厚生年金の受給額には現役時代の働き方による個人差が大きく、「平均額」だけを目安にすると、ご自身の見込み額を見誤ってしまう恐れがあります。

そこでおすすめしたいのが、厚生労働省が提供する「公的年金シミュレーター」です。

毎年届く「ねんきん定期便」に記載された二次元コードを読み込むだけで、生年月日や年収の推移などをもとに、将来受け取れる年金の目安額をその場で試算できます。

働き方や受給開始年齢を変えた場合の試算も手軽に行えるほか、今後の年収の見込みを入力すれば、将来のライフプラン変更を織り込んだ試算も可能です。

あくまで目安ではあるものの、漠然とした不安を抱えたままにせず、まずはご自身の数字を具体的に把握することから始めてみてください。

平均値との比較だけでなく、「自分自身の現在地」を知ることこそが、老後の資金計画の第一歩になるはずです。