4. 2026年4月、在職老齢年金の支給停止基準額が「51万円」から「65万円」に

公的年金だけに頼れない時代だからこそ注目したいのが、2026年に予定されている年金制度の見直しです。

日本年金機構の発表によると、働きながら厚生年金を受け取る60歳以上の人を対象とした「在職老齢年金制度」について、年金の一部または全部が支給停止となる基準額が、2026年4月から月51万円から月65万円に引き上げられます。

これまでは、給与と年金の合計が月51万円を超えると年金が減額される仕組みだったため、「働くと年金が減ってしまう」ことを理由に、就労時間を抑える高齢者も少なくありませんでした。

基準額の引き上げにより、より長く、より多く働いても年金が減りにくくなるため、健康なうちは仕事を続けて収入を厚くしたいと考える人にとっては、老後資金を自分で積み増す選択肢が広がる改正といえます。

5. 働ける間の収入を、老後の備えにどう回す? iDeCoの拠出上限も2026年12月から拡大

在職老齢年金の見直しで「長く働く」選択肢が広がる一方、その収入を効率よく老後資金へ回す仕組みも、同じタイミングで拡充されます。

厚生労働省の資料によると、個人型確定拠出年金(iDeCo)は2026年12月から制度が改正され、拠出限度額が引き上げられるほか、加入を続けられる年齢の上限が広がり、70歳未満まで拠出を続けられる「第5号加入者」区分が新設されます。

具体的には、自営業者などの第1号加入者は月6万8000円から7万5000円へ、企業年金のない会社員(第2号加入者)は月2万3000円から6万2000円へと、拠出できる上限額が大きく引き上げられる見通しです(専業主婦・主夫にあたる第3号加入者は月2万3000円のまま変更ありません)。

実際の適用時期や加入区分ごとの詳細な上限額は今後の公的な発表で確定していくため、iDeCoの利用を検討する際は、金融機関や厚生労働省の最新情報を必ず確認するようにしましょう。

6. まとめにかえて|「平均」ではなく「自分の数字」で老後に備える

厚生年金の受給額は、平均だけを見ていると実態を見誤りがちです。

男女や働き方によって受給額には大きな幅があり、月25万円以上を受け取れる人はごくわずかにとどまります。

その一方で、高齢夫婦世帯の家計は平均して毎月4万2434円の赤字となっており、公的年金だけで老後の支出すべてをまかなうことは、多くの世帯にとって容易ではありません。

老後にいくら準備すればよいのかは、家族構成や住居形態、望むライフスタイルによって当然個人差があり、「これだけあれば全員安心」という絶対的な基準はありません。

だからこそ、まずは「ねんきん定期便」でご自身の将来の受給見込み額を確認し、平均像ではなく自分自身の数字をもとにライフプランを考えることが、ゆとりある老後への近道になるはずです。

7. 監修者からのコメント

熊谷 良子

今回ご紹介した在職老齢年金やiDeCoの改正は、いずれも「働きながら、あるいは自分の手で、年金を厚くする」ための選択肢を広げる制度変更です。

あわせて知っておきたいのが、公的年金そのものを増やせる「繰下げ受給」という仕組みです。

日本年金機構によると、年金の受け取り開始を65歳から遅らせると、1カ月あたり0.7%ずつ年金額が増額され、75歳まで繰り下げた場合の増額率は最大84%にのぼります。

いったん繰下げを選んだ後で、やはり早く受け取りたいと考えても、増額前の金額に戻すことはできません。

健康状態やほかの収入の見込みなど、繰り下げには検討すべき条件も多いため、安易にすべての方へおすすめできるものではありません。

ただ、「何歳まで働き、何歳から受け取るか」という選択肢が広がっている今だからこそ、ご自身やご家族のライフプランに合わせて、一つひとつの制度を具体的に検討してみる価値はあるでしょう。

参考資料

池上 翠