偶数月の15日に振り込まれる公的年金。2026年度(令和8年度)は4年連続のプラス改定となりましたが、物価の上がり方には追いつかず、家計の実感は厳しいままです。
その年金、受け取る額には「住む地域」でも差が出ています。厚生労働省の最新データでは、都道府県で月4万円を超える開きがありました。この記事では、厚生年金の全国平均と都道府県ランキング、そして「なぜ差が出るのか」を確認します。あわせて、額面から引かれる「天引き」で手取りがどう変わるかも整理しておきましょう。
なお、公的年金の仕組みや平均受給額に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。
- 厚生年金の全国平均は月約15万円。ただし国民年金を含む金額で、加入状況によって個人差が大きい
- 都道府県別では最高の神奈川と最低の青森で月4万円超(年50万円超)の格差
- 額面から介護保険料・住民税などが「天引き」され、手取りはさらに下がる(10月に額が変わる)
1. 厚生年金は平均で月15万円台|男女差は約5万8000円
地域による差を見る前に、いまの受給水準を数字で押さえておきましょう。
厚生年金の平均年金月額は〈全体〉15万289円、〈男性〉16万9967円、〈女性〉11万1413円(いずれも国民年金の金額を含む)。国民年金は〈全体〉5万9310円、〈男性〉6万1595円、〈女性〉5万7582円です。年金の受給額はこれまでの加入状況によって決まるため、人によって大きな差が生じる点には注意が必要です。
出所:【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説
全体で月15万289円、男性16万9967円に対して女性は11万1413円と、男女でおよそ5万8000円の差があります。これは国民年金部分を含んだ金額で、厚生年金の「2階部分」だけを見ているわけではありません。受け取れる額は、現役時代の報酬の高さと厚生年金の加入期間の長さで大きく変わります。
女性の平均が低いのは、結婚・出産などで働き方が変わり、加入期間が短くなりやすいことが一因です。「平均」はあくまで全体をならした目安。自分がどの水準になりそうかは、ねんきんネットで見込み額を確認しておくと安心です。この全国平均を出発点に、次は地域による差を見ていきましょう。
2. 住む地域で月4万円超の差?厚生年金が「多い県・少ない県」
同じ厚生年金でも、都道府県ごとの平均額には無視できない開きがあります。厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」の数値を、多い順と少ない順に並べて見ていきます。
2.1 平均が多い上位5都県一覧表。神奈川県は月17万457円
神奈川県:17万457円
千葉県:16万5103円
東京都:16万3892円
奈良県:16万2292円
埼玉県:16万1752円
出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
上位は神奈川・千葉・東京・埼玉と首都圏が並び、そこに奈良県が入りました。トップの神奈川県は月17万457円で、全国平均の15万289円より2万円ほど高い水準です。年間にすると24万円ほどの差になり、旅行や医療費の備えに回せる余裕が変わってきます。
もっとも、この金額は住んでいる場所で決まるわけではありません。あくまで、その地域に住む受給者の現役時代の働き方をならした結果です。勤務先と住まいが別の都府県という人も少なくないため、地域の名前そのものに意味があるわけではない、と受け止めておきましょう。
2.2 平均が少ない下位5県一覧表。青森県は月12万8129円
青森県:12万8129円
沖縄県:12万8819円
宮崎県:12万9224円
秋田県:12万9503円
山形県:13万1169円
出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
下位には青森・沖縄・宮崎・秋田・山形が並びました。最も低い青森県は月12万8129円で、全国平均を2万円あまり下回ります。上位との差が生まれる背景には、賃金水準の違いや、自営業・農林水産業など国民年金だけの働き方の比率、共働きの多さといった地域ごとの事情が考えられます。
ここで大事なのは、平均が低い県に住んでいるからあなたの年金も低くなる、という話ではないことです。年金額はあくまで一人ひとりの加入記録で決まります。平均は地域の姿を映す鏡であって、自分の見込み額そのものではありません。
2.3 47都道府県の平均年金月額一覧表
北海道:14万1069円
青森県:12万8129円
岩手県:13万2943円
宮城県:14万4920円
秋田県:12万9503円
山形県:13万1169円
福島県:13万6880円
茨城県:15万2963円
栃木県:14万9631円
群馬県:14万8666円
埼玉県:16万1752円
千葉県:16万5103円
東京都:16万3892円
神奈川県:17万457円
新潟県:13万8683円
富山県:14万4644円
石川県:14万1792円
福井県:14万787円
山梨県:14万4665円
長野県:14万4668円
岐阜県:14万9910円
静岡県:15万1960円
愛知県:16万766円
三重県:15万1949円
滋賀県:15万4456円
京都府:15万1483円
大阪府:15万6272円
兵庫県:15万9086円
奈良県:16万2292円
和歌山県:14万5933円
鳥取県:13万3459円
島根県:13万3918円
岡山県:14万6429円
広島県:15万745円
山口県:14万8166円
徳島県:13万4131円
香川県:14万4026円
愛媛県:14万301円
高知県:13万2202円
福岡県:14万5822円
佐賀県:13万4191円
長崎県:13万6825円
熊本県:13万2740円
大分県:13万6507円
宮崎県:12万9224円
鹿児島県:13万3343円
沖縄県:12万8819円
その他:13万3788円
出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
一覧で並べると、1位の神奈川県17万457円と47位の青森県12万8129円の差は月4万2000円台。年間では50万円を超えます。老後の家計にとって、この差は決して小さくありません。
ただ、上から下まで眺めてみると、多くの県が13万円台から15万円台に収まっていることもわかります。極端に高い県・低い県があるというより、都市部と地方でゆるやかな傾斜がついている、という見え方です。ご自身の都道府県の数字を確認したうえで、次は「なぜこの差が生まれるのか」を押さえておきましょう。
3. 厚生年金額の決まり方は?地域差の正体は現役時代の働き方
そもそも厚生年金は、住んでいる場所で額が決まるわけではありません。カギは、現役時代の報酬(給与・賞与)と加入期間です。この2つで一人ひとりの受給額が変わるため、個人差が大きく出ます。
具体的には、厚生年金の「報酬比例部分」が次の式で計算されます。
A(2003年3月以前):平均標準報酬月額×7.125/1000×2003年3月までの加入期間の月数
B(2003年4月以降):平均標準報酬額×5.481/1000×2003年4月以降の加入期間の月数
式を見ると、報酬(平均標準報酬月額・平均標準報酬額)と加入期間の月数を掛け合わせる形になっています。つまり、給与が高かった人、長く厚生年金に加入していた人ほど受給額が増えるしくみです。地域差の正体は、この「働き方の差」の積み上がりだと考えるとわかりやすいでしょう。
都市部は賃金水準が高い傾向があり、自営業(国民年金のみ)の比率や共働きの割合も地域によって異なります。そうした現役時代の違いが、都道府県ごとの平均額の違いとして表れているわけです。引っ越しても年金額そのものが変わることはない、と押さえておきましょう。
4. 国民年金は地域差が小さい。納めた月数で決まる
いっぽう国民年金(老齢基礎年金)は、報酬に連動しません。保険料を何カ月納めたかで額が決まるため、厚生年金にくらべて個人差・男女差・地域差はぐっと小さくなります。
どのくらい小さいのか、こちらも都道府県別の数字で確かめてみましょう。
4.1 国民年金の平均月額は5万〜6万円台に集中
北海道:5万8435円
青森県:5万7137円
岩手県:6万720円
宮城県:5万9532円
秋田県:5万9147円
山形県:6万827円
福島県:5万9922円
茨城県:5万9395円
栃木県:5万9544円
群馬県:6万564円
埼玉県:5万9007円
千葉県:5万9354円
東京都:5万8313円
神奈川県:5万9342円
新潟県:6万1957円
富山県:6万2989円
石川県:6万1923円
福井県:6万2290円
山梨県:5万9275円
長野県:6万2030円
岐阜県:6万1248円
静岡県:6万1150円
愛知県:6万34円
三重県:6万1403円
滋賀県:6万1172円
京都府:5万8206円
大阪府:5万7122円
兵庫県:5万9138円
奈良県:5万8961円
和歌山県:5万7784円
鳥取県:6万1502円
島根県:6万2287円
岡山県:6万1564円
広島県:6万991円
山口県:6万1120円
徳島県:5万8797円
香川県:6万1718円
愛媛県:5万9792円
高知県:5万7926円
福岡県:5万8300円
佐賀県:6万1084円
長崎県:5万8617円
熊本県:5万9907円
大分県:5万8397円
宮崎県:5万9234円
鹿児島県:5万9659円
沖縄県:5万4217円
その他:3万785円
出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
並べてみると、どの都道府県も5万円台から6万円台に収まり、全国平均は月5万9431円。厚生年金で見たような4万円規模の開きはありません。納めた月数で決まるという、しくみの違いがそのまま表れています。
裏を返せば、国民年金だけで老後の生活費をまかなうのは、どの地域に住んでいても簡単ではないということです。とくに厚生年金の上乗せがない自営業やフリーランスの方は、国民年金基金やiDeCoなどで自分年金を育てておくと、選択肢が広がります。あわせて厚生年金と国民年金で月15万円以上を受け取る人の割合も見ておくと、自分の立ち位置がつかみやすくなります。
ここまで、厚生年金の全国平均や都道府県差、受給額の決まり方を見てきました。地域差の正体は、住んでいる場所そのものではなく「現役時代の働き方と賃金」でしたね。
ただ、ここまでの数字はあくまで「額面」です。実際に受け取れる手取りは、ここから介護保険料や住民税などが差し引かれます。
次の章では、その「天引き」の中身と、10月に手取りが変わる理由を整理しておきましょう。


