日本の空き家は、いまや900万戸を超え、過去最多を更新しています。
総務省の「令和5年住宅・土地統計調査」によれば、2023年時点で全国の空き家数は900万2000戸、空き家率は13.8%と、5年前から51万3000戸も増えました。
その多くは、かつて誰かの「実家」だった住まいですね。
お盆に帰省したついでに、誰も住まなくなった実家に立ち寄り、久しぶりに庭をのぞいて言葉を失った——そんな経験はないでしょうか。
膝丈まで伸びた雑草に、庭全体が覆われている「草ボーボー」の状態。
実家が空き家がちになる背景はさまざまです。相続によってすでに所有者が変わっているケースもあれば、親が介護施設に入所したり入院が長引いたりして、誰も住まないまま庭だけが荒れていくケースも少なくありません。
金融経済教育推進機構(J-FLEC)の調査によれば、60歳代・二人以上世帯の金融資産保有額は平均2683万円、中央値1400万円にのぼります。
一見すると老後の備えは十分にも思えますが、この虎の子の貯蓄を静かに目減りさせかねない「実家の管理コスト」は、多くの家庭で見過ごされがちです。
本記事では、庭の放置がまねく固定資産税の増税リスクと、2026年4月に施行された登記の新ルールについて整理します。
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60歳代・二人以上世帯の金融資産保有額は平均2683万円、中央値1400万円にのぼる
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実家の庭を放置し「管理不全空家」に指定されると、固定資産税が最大6倍、都市計画税も最大3倍になりうる
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解体して更地にしても住宅用地の特例は失われ、税負担は同水準まで上がってしまう
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2024年開始の相続登記(過料10万円以下)に続き、2026年4月には住所等変更登記も義務化された
1. 60歳代の貯蓄、平均2683万円の内訳と「実家」という盲点
金融経済教育推進機構(J-FLEC)が実施した「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」によれば、60歳代・二人以上世帯(有効回答1022世帯)の金融資産保有額は、平均2683万円、中央値1400万円という結果でした。
一見すると老後資金の備えは十分にも映りますが、この数字には「実家」というもうひとつの資産、そして負債になりかねない存在は加味されていません。
平均:2683万円
この「平均2683万円」に占める、具体的な金融商品の種類別内訳は以下の通りです。
- 預貯金:1087万円(うち定期性 584万円/その他 503万円)
- 株式:629万円
- 生命保険:282万円
- 投資信託:270万円
- その他(個人年金・債券など):415万円
中央値:1400万円
60歳代の金融資産は、平均値で見ると2683万円という潤沢な大台に達しているように見えます。しかし、より実態に近い「ちょうど真ん中」の世帯を示す中央値は1400万円にとどまっており、世帯ごとのばらつき(格差)は決して小さくありません。
平均値は一部の富裕層によって大きく引き上げられるため、この「1200万円以上ものギャップ」は、十分な備えがある世帯とそうでない世帯との間で「資産の二極化」が進行している現実を物語っています。
もちろん、この中央値レベルの貯蓄すらすべての世帯が確保できているわけではありません。
そして、せっかく準備した大切な老後資産が、実家の維持管理という「見えない支出」によって、静かに、しかし確実に削られていくおそれがあります。
実家の管理コストが家計の致命傷になるかどうかは、それぞれの貯蓄状況によって大きく異なりますが、特に実家が遠方にある場合、この「見えない支出」は数字として非常に意識されにくいものです。
帰省のたびにかかる往復の交通費、遠出してお庭の手入れをするための時間や労力、そして万一放置してしまった場合の重いペナルティまで含めて、一度きちんと棚卸し(コストの見える化)をしておくことが、老後の貴重な貯蓄を守る第一歩になります。
では、実際に実家の庭を放置してしまった場合、具体的にどのようなリスクや経済的負担が生じるのでしょうか。次の章で詳しく見ていきます。
2. 筆者からのコメント
「実家の庭は、帰省したときに自分で刈ればいい」——そう考えている方も少なくないでしょう。
しかし遠方の実家ほど、気づいたときには手がつけられない状態まで進んでしまうケースが目立ちます。
真夏の草刈り作業は熱中症のリスクも伴い、無理をして体調を崩してしまっては本末転倒です。
資産形成の相談では、預貯金や株式の配分にはこだわる一方で、実家のような「使っていない不動産」の管理コストは家計簿に計上されていないケースをよく見かけます。
貯蓄を取り崩す段階に入る前に、実家の管理コストという「固定費」を一度棚卸ししておくことも、世帯によっては結果的に老後資金を守る近道になるかもしれません。


