3. 「草ボーボー」を放置すると何が起きる?固定資産税6倍のリスク

実家の庭が「草ボーボー」のまま数年放置されると、単なる見た目の問題では済まなくなります。

2023年12月13日に施行された改正空家等対策特別措置法により、市区町村が「管理不全空家」を指定できる仕組みが新設されました。

指定を受けても、直ちに増税されるわけではありません。まずは自治体からの助言・指導が行われ、それでも改善が見られない場合に「勧告」という段階に進みます。

それでも固定資産税等の賦課期日(毎年1月1日)までに改善が確認できない場合、住宅用地の特例(200平方メートル以下の部分で固定資産税を6分の1、都市計画税を3分の1に軽減する仕組み)の対象から外れ、固定資産税は最大6倍、都市計画税(課税される地域の場合)も最大3倍まで、それぞれ跳ね上がる可能性があります。

裏を返せば、「勧告」の段階までに庭の手入れを再開すれば、増税は回避できるということでもあります。雑草を放置し続けること自体が、税負担のリスクを積み上げる行為だといえるでしょう。

庭の手入れそのものを負担に感じている場合は、雑草の生えにくいグランドカバー植物を取り入れるなど、省力化の工夫も選択肢のひとつです。

国土交通省が実施した「令和6年空き家所有者実態調査」によれば、空き家所有者のうち相続によって取得したケースは58%にのぼり、建物に腐朽・破損がある割合も約66%に達します。

それにもかかわらず、こうした空き家が売却や解体などによって実際に解消される割合(空き家解消率)は、調査期間中でわずか18%にとどまっています。

「そのうち何とかしよう」と先送りしている間に、建物の傷みだけが進んでいく実家は、決して少なくないということです。

もっとも、「それなら家を解体して更地にすればいい」という単純な話でもありません。建物を取り壊すと、その時点で住宅用地の特例そのものが失われ、固定資産税は結局同じ水準まで上がってしまうためです。

さらに、更地にした土地を手放そうにも、国が引き取る「相続土地国庫帰属制度」は、建物が残る土地はそもそも申請の対象外とされています。

更地にしたうえで申請しても、審査手数料(1筆あたり1万4000円)に加え、承認後には10年分の管理費用相当とされる負担金の納付が必要です。

宅地や農地であれば原則として1筆あたり20万円程度が目安とされていますが、市街化区域内の宅地など一部の区分は面積に応じて算定され、境界や地形の条件によっては審査そのものが通らないケースもあります。

草刈りや登記といった「今すぐできる備え」を整理する一方で、実家を手放すこと自体に高いハードルがあるという現実も、あわせて押さえておきたいところです。

4. 見落とされがちな「登記」の義務化——過料は最大10万円

庭の管理と並んで見落とされがちなのが、「登記」に関するルール変更です。

ここで紹介する相続登記は、親などの所有者が亡くなり、相続が発生したあとに関わってくる手続きです。

親が介護施設に入所している、あるいは入院が長引いているといった段階では、所有権はまだ移っていないため、相続登記そのものはまだ対象になりません。

2024年4月1日には、相続登記の申請が義務化されました。相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記を申請しなければならず、正当な理由がないままこれを怠ると、10万円以下の過料の対象になります。

さらに2026年4月1日には、住所や氏名の変更登記も新たに義務化されました。

引っ越しや結婚などで所有者の住所・氏名が変わった場合、変更の日から2年以内に登記を申請する必要があり、正当な理由なく怠ると5万円以下の過料が科される可能性があります。

なお、施行日より前の変更分も対象となり、その場合の期限は2028年3月31日までとされています。

こちらは所有者本人の住所・氏名の変更が対象になるため、親が存命でも、施設入所などにともなって住民票を移していれば、親自身がこの義務の対象になりうる点には注意が必要です。

実家の名義が亡くなった親のままだったり、相続人の住所が古いまま放置されていたりするケースは珍しくありません。

庭の手入れとあわせて、登記情報が最新かどうかも一度確認しておきたいところです。

なお、相続人どうしの遺産分割協議がまとまらず、期限内に相続登記が難しい場合には、「相続人申告登記」という簡易な制度も用意されています。

自分が登記簿上の所有者の相続人であることを、戸籍謄本などを添えて登記官に申し出るだけで、ひとまず義務を履行したことになる仕組みです。

ただし、この申告はあくまで義務を果たすための応急的な手続きであり、不動産を売却したり担保に入れたりする際には、あらためて正式な相続登記が必要になる点には注意が必要です。

5. まとめにかえて|「気づいたときには手遅れ」にしないために

実家の管理は、庭の手入れだけにとどまる話ではありません。放置する期間が長引くほど、思わぬ税負担や手続き上の見落としにつながるおそれもあります。

60歳代の金融資産は平均2683万円にのぼるとはいえ、実家の管理コストという見えない支出が積み重なる場合、その貯蓄は静かに目減りしていきかねません。

気になる点があれば、法務局や自治体の窓口、専門家への相談も検討してみてはいかがでしょうか。

6. 筆者からのコメント

熊谷 良子

登記や税金の話は、つい「そのうち対応すればいい」と後回しにされがちです。

しかし相続登記も住所等変更登記も、過料の対象となるまでには、法務局からの催告といった段階を踏むしくみになっています。

逆に言えば、通知が来た時点で速やかに対応すれば、過料そのものは回避できる可能性が高いということでもあります。

また、相続人が複数いる実家ほど、登記や庭の管理は「誰かがやるだろう」と後回しにされやすいものです。

「早めにきょうだいで話し合っておくべき」というのは簡単ですが、それができれば誰も苦労しない、というのが実情でしょう。話し合いが「貧乏くじの押し付け合い」になり、かえって関係がこじれる家庭も少なくありません。

それでも、通知や催告が届いてから慌てて連絡を取り合うよりは、多少気まずくても早い段階で一度話題に乗せておいたほうが、後々の負担は小さくて済むはずです。

参考資料