2026年8月から2027年2月にかけて、日本年金機構から公金受取口座の登録を促す「意向確認書」の簡易書留が届き始めています。年金を受け取るすべての方に関わる話であるにもかかわらず、実際にいくら受け取れているのか、他の受給者と比べてどうなのかを知らないまま過ごしている方も少なくありません。

本記事では公的年金の「2階建て」の仕組みと支給日、厚生年金・国民年金の平均年金月額、そして「月10万円未満」と「月20万円以上」どちらの受給者が多いのかを確認していきます。なお、意向確認書の届く人・届かない人の条件についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

神田 翔平
公的年金は、老後の生活を支える土台となる制度です。ご相談を受けるなかでも、「自分の年金額が他の人と比べて多いのか少ないのか分からない」という声をよく耳にします。まずは平均的な受給額のデータを知ることが、ご自身の年金額を客観的に見つめ直すきっかけになると感じています。

なお、公的年金の平均年金月額や受給額分布に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。

【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説
【2026年最新・年金早見表】厚生年金・国民年金はいくらもらえる?平均受給額一覧と手取りのリアル!社会保険料・税金が引かれる「天引き」まで徹底解説
ココがポイント
  • 公的年金は国民年金と厚生年金の「2階建て構造」で、偶数月の15日(原則)に支給される
  • 厚生年金(国民年金部分を含む)の平均年金月額は15万289円、国民年金は5万9310円
  • 厚生年金受給者のうち「月10万円未満」は19.0%、「月20万円以上」は18.8%と、少額層の方がやや多い

1. 公的年金の「2階建て」の仕組みと支給日

日本の公的年金制度は「2階建て」1/3

厚生年金と国民年金の仕組み

出所:日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」等を参考にLIMO編集部作成

公的年金は、原則として2カ月に一度、偶数月の15日に支給されます。ただし、15日が土日祝日の場合は、直前の平日に前倒しで振り込まれます。

日本の年金制度は、「国民年金(基礎年金)」と「厚生年金」の2層構造です。国民年金は年金のベースとなる性格から「基礎年金」ともいい、加入対象の働き方や立場は問いません。厚生年金は、会社員や公務員など、企業や官公庁などに雇用される人が、国民年金に上乗せして加入する年金です。各制度のあらましを、整理しておきましょう。

1.1 国民年金(1階部分)

  • 加入対象:原則として、日本に住む20歳以上から60歳未満の全員
  • 年金保険料:全員一律(※1)
  • 老後の受給額:40年間(480カ月)欠かさず納めれば満額受給(※2)
  • 被保険者:第1号~第3号(※3)

※1 国民年金保険料の月額:2026年度 1万7920円
※2 国民年金(老齢基礎年金)の月額:2026年度 7万608円
※3 第1号被保険者は農業者・自営業者・学生・無職の人など、第2号被保険者は厚生年金の加入者、第3号被保険者は、第2号被保険者に扶養されている配偶者

1.2 厚生年金(2階部分)

  • 加入対象:会社員や公務員、またパート・アルバイトで特定適用事業所(※4)に働き一定要件を満たした人が、国民年金に上乗せで加入
  • 年金保険料:収入に応じて決まる報酬比例制(※5)
  • 老後の受給額:年金加入期間や納付済保険料によって、個人差が出る
  • 被保険者:第1号~第4号(※6)

※4 1年のうち6カ月間以上、適用事業所の厚生年金保険の被保険者(短時間労働者は含まない、共済組合員を含む)の総数が51人以上となることが見込まれる企業など
※5 保険料額は標準報酬月額(上限65万円)、標準賞与額(上限150万円)に保険料率をかけて計算される
※6 第1号は、第2号~第4号以外の、民間の事業所に使用される人、第2号は国家公務員共済組合の組合員、第3号は地方公務員共済組合の組合員、第4号は私立学校教職員共済制度の加入者

次章では、国民年金・厚生年金それぞれの平均年金月額を、厚生労働省の一次資料を参考に確認していきましょう。

神田 翔平
年金は2カ月に一度、偶数月の15日にまとめて支給される仕組みです。給与のように毎月入ってくるわけではないため、年金生活に入る前に家計管理のリズムを見直しておくことをお勧めします。

2. 【シミュレーション】厚生年金の平均月額を70歳まで繰り下げたらいくらになる?

目安の試算として、後述する厚生年金(国民年金部分を含む)の平均月額15万289円を基準に、繰下げ受給による増額率(1カ月あたり+0.7%)で計算してみます。

  • 70歳まで繰下げ(60カ月×0.7%=42%増額):15万289円×1.42=約21万3410円
  • 75歳まで繰下げ(120カ月×0.7%=84%増額):15万289円×1.84=約27万6532円

繰下げ受給は月々の年金額が増える一方、受け取り始めるまでの期間は年金収入がなくなります。健康状態や貯蓄状況、他の収入源とのバランスを踏まえて検討する際の、あくまで一例としてご参照ください。

3. 厚生年金・国民年金の平均月額はいくら?

厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」から、厚生年金と国民年金の平均年金月額を見ていきましょう。

※この記事で紹介するのは、会社員など民間の事業所で雇用されていた人が受け取る「厚生年金保険(第1号)」の、国民年金の月額部分を含む年金額です。

厚生年金・国民年金の平均年金月額(2024年度末現在)2/3

厚生年金・国民年金の平均年金月額

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」

3.1 【全体・男女別】厚生年金の平均月額はいくら?

  • 男女全体:15万289円
  • 男性:16万9967円
  • 女性:11万1413円

※ここでは、会社員など民間の事業所で雇用されていた人が受け取る「厚生年金保険(第1号)」の年金月額を紹介しています。

3.2 【全体・男女別】国民年金の平均月額はいくら?

  • 男女全体:5万9310円
  • 男性:6万1595円
  • 女性:5万7582円

国民年金の保険料は一律なので、将来もらえる年金額にも大きな差は出にくく、平均して男性は月6万円台、女性は月5万円台となっています。国民年金だけで月10万円以上を受け取るのは現実的には難しいといえるでしょう。

一方で、厚生年金は国民年金に上乗せして支給される仕組みです。保険料が収入に応じて決まるため、もらえる年金額には大きな差が出やすいのが特徴です。公的年金の平均額を踏まえると、公的年金収入だけで老後の生活を維持できるのかが気になるところです。

世帯に一人でも年金月額が20万円以上の人がいれば、年金収入だけで生活費の大部分をカバーできる可能性は高まるでしょう。一方、国民年金のみで生活費をすべて賄うのは現実的に厳しいケースが少なくありません。その中で、1人あたり「月10万円」程度の年金収入があれば、公的年金を中心に生活を組み立てるための一つの目安になると考えられます。では、実際に厚生年金(国民年金を含む)の受給者のうち、「月10万円未満の人」と「月20万円以上の人」のどちらが多いのでしょうか。

神田 翔平
厚生年金は加入期間や収入によって受給額に大きな個人差が生じます。平均額だけを見て「自分は少ない」「多い」と判断せず、ねんきんネットなどでご自身の見込み額を確認しておくことが大切です。

4. 「月10万円未満」と「月20万円以上」、多いのはどっち?

厚生年金の受給額は、加入期間の長さ、およびその間の収入により大きな個人差が出ます。ここからは厚生年金(国民年金部分も含む)の年金月額分布を見ていきましょう。

厚生年金の受給額ごとの受給権者数3/3

厚生年金の受給額ごとの受給権者数

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

4.1 【厚生年金】「受給額ごとの人数」を確認

  • 1万円未満:4万3399人
  • 1万円以上~2万円未満:1万4137人
  • 2万円以上~3万円未満:3万5397人
  • 3万円以上~4万円未満:6万8210人
  • 4万円以上~5万円未満:7万6692人
  • 5万円以上~6万円未満:10万8447人
  • 6万円以上~7万円未満:31万5106人
  • 7万円以上~8万円未満:57万8950人
  • 8万円以上~9万円未満:80万2179人
  • 9万円以上~10万円未満:101万1457人
  • 10万円以上~11万円未満:111万2828人
  • 11万円以上~12万円未満:107万1485人
  • 12万円以上~13万円未満:97万9155人
  • 13万円以上~14万円未満:92万3506人
  • 14万円以上~15万円未満:92万9264人
  • 15万円以上~16万円未満:96万5035人
  • 16万円以上~17万円未満:100万1322人
  • 17万円以上~18万円未満:103万1951人
  • 18万円以上~19万円未満:102万6888人
  • 19万円以上~20万円未満:96万2615人
  • 20万円以上~21万円未満:85万3591人
  • 21万円以上~22万円未満:70万4633人
  • 22万円以上~23万円未満:52万3958人
  • 23万円以上~24万円未満:35万4人
  • 24万円以上~25万円未満:23万211人
  • 25万円以上~26万円未満:15万796人
  • 26万円以上~27万円未満:9万4667人
  • 27万円以上~28万円未満:5万5083人
  • 28万円以上~29万円未満:3万289人
  • 29万円以上~30万円未満:1万5158人
  • 30万円以上~:1万9283人

厚生年金(国民年金を含む)の受給権者(男女全体)における年金額の分布は、以下の通りです。

  • 月額10万円未満:19.0%
  • 月額20万円以上:18.8%

つまり、高額受給者である「20万円以上」の人よりも、「10万円未満」の受給権者の方が多いのです。公的年金のみで老後を暮らす場合、現役時代と比べて収入は大幅に少なくなるのが一般的です。年金生活が始まってから慌てることがないよう、具体的な資金計画を、ゆとりを持って立てておくことが大切になるでしょう。

【参考データ】厚生年金(男女全体)の受給額分布

  • 10万円未満の割合:19.0%
  • 10万円以上の割合:81.0%
  • 15万円以上の割合:49.8%
  • 20万円以上の割合:18.8%
  • 20万円未満の割合:81.2%
  • 30万円以上の割合:0.12%

ここで紹介した割合は、厚生年金(国民年金を含む)を受給している人に限ったデータです。これに国民年金のみを受け取っている人々を含めて全体の受給権者で考えると、「月10万円未満」の割合はさらに増え、逆に「月20万円以上」を受け取っている人の割合はさらに減ることが推測されます。月15万円(年180万円)以上を受け取る人の割合についても、あわせてご確認ください。

神田 翔平
「月10万円未満」の受給者が「月20万円以上」の受給者より多いというデータは、公的年金だけに頼った資金計画のリスクを示しています。若いうちから焦って資産運用を始めるのではなく、まずはご自身の年金見込み額を把握したうえで、無理のない範囲で準備を進めることが大切だと感じています。

5. 監修者コメント:平均だけでなく「分布」で家計の実感を確かめる

熊谷 良子

年金の話をするとき、平均額だけを見て「自分はそれより多いから大丈夫」「少ないから不安」と一喜一憂しがちですが、実際に大切なのは分布のどこにご自身が位置しているかです。厚生年金の受給者のうち、月10万円未満の方が19.0%、月20万円以上の方が18.8%と、実は少額側の方がわずかに多いというデータは、平均像だけでは見えてこない実態を教えてくれます。

厚生年金は現役時代の収入と加入期間で決まる仕組みのため、非正規雇用の期間が長かった方や、扶養の範囲内で働いてきた方は、平均を下回るケースも珍しくありません。国民年金だけの方が月5万円台〜6万円台にとどまることも、あわせて押さえておきたいポイントです。

こうしたデータを踏まえると、公的年金だけで老後の生活費すべてを賄おうとするのは現実的ではない場合もあります。ねんきん定期便やねんきんネットでご自身の見込み額を確認したうえで、不足が見込まれる部分は、NISAやiDeCoなどを活用した資産形成であらかじめ準備しておくと安心です。

年金は2カ月に一度まとめて支給される点も、家計管理では見落としやすいポイントです。毎月の生活費とのタイミングのずれを踏まえて、無理のない資金計画を立てていただければと思います。

6. 【シミュレーション】「月10万円未満」と「月20万円以上」、25年間の受給総額でどれだけ差がつく?

あくまで一例として、月10万円の受給者と月20万円の受給者を比較し、65歳から90歳までの25年間で受給総額にどれくらいの差が生まれるかを試算してみます。

  • 月額の差:20万円-10万円=10万円
  • 年額換算の差:10万円×12カ月=120万円
  • 25年間累計の差:120万円×25年=3000万円

これはあくまで単純化した試算であり、実際の受給額は加入期間や社会保険料・税金の天引きなどによって変わります。ご自身の見込み額は、平均や分布上の位置にとらわれず、ねんきんネットなどで確認することをお勧めします。