5. 2025年年金制度改正のポイント:遺族年金の見直し

2025年6月に成立した「年金制度改正法」の大きな狙いの一つは、働き方や家族構成の多様化に応じた年金制度の整備です。

今回の改正では、いわゆる「106万円の壁」撤廃に関連する社会保険加入要件の拡大のほか、遺族年金に関する見直しも盛り込まれました。

5.1 遺族厚生年金における男女差解消への動き

遺族厚生年金の見直し8/8

遺族厚生年金の見直し

出所:厚生労働省「遺族厚生年金の見直しについて」

現在の遺族厚生年金のしくみでは、受給者の性別によって下記のような男女差がありました。

現行の遺族厚生年金の仕組み

  • 女性
    • 30歳未満で死別:5年間の有期給付
    • 30歳以上で死別:無期給付
  • 男性
    • 55歳未満で死別:給付なし
    • 55歳以上で死別:60歳から無期給付

こうした男女差の解消に向けた見直しは、2028年4月から施行される予定です。

2028年4月から施行予定の新しい仕組み

「原則5年間の有期給付」の対象となるための要件が、男女ともに詳細に定められました。

  • 女性:施行直後(2028年4月)に原則5年間の有期給付の対象となるのは、「18歳年度末までのこどもがいない、2028年度末時点で40歳未満の方」です。(※既に遺族厚生年金を受給している方や、2028年度に40歳以上になる女性は見直しの影響を受けません。)
  • 男性:新たに5年間の有期給付を受けられるようになるのは、「18歳年度末までのこどもがいない60歳未満の方」です。
  • こどもがいる場合:18歳年度末までのこどもがいる場合は、こどもが18歳年度末になるまでは現行制度と同じであり、見直しの影響はありません。こどもが18歳になった後、さらに5年間は増額された有期給付および継続給付の対象となります。

5.2 有期給付・継続給付の拡充内容

配慮が必要な場合の給付についても、金額や要件が具体化されています。

  • 有期給付の増額:有期給付には新たに「有期給付加算」が上乗せされ、現在の遺族厚生年金の額の約1.3倍となります。
  • 継続給付(5年目以降の給付継続)の要件:5年間の有期給付終了後も、障害状態にある方や収入が十分でない方は、引き続き増額された遺族厚生年金を受給できます。単身の場合、就労収入が月額約10万円(年間122万円)以下の方は継続給付が全額支給され、概ね月額20~30万円を超えると全額支給停止となります。

なお、今回の改正では「遺族基礎年金」の見直しも盛り込まれました。

同一生計にある父または母が遺族基礎年金を受け取れなかったケースでも、2028年4月からは、こどもが単独で「遺族基礎年金」を受け取れるようになります。

5.3 在職老齢年金の緩和

一方で、働きながら年金をもらうと年金が減額される「在職老齢年金」の仕組みについては、就労意欲を阻害しているとの批判から、減額される基準額が65万円に引き上がりました。

村岸 理美
国は財源不足を背景に、自助努力での就労を求めています。「定年になったら国から年金や給付金をもらって悠々自適に暮らす」というのは難しいでしょう。今後は、複雑な給付金を「つなぎの資金」として賢く利用しながら、自身の健康寿命を延ばし、NISAやiDeCo等の私的年金でカバーしていくハイブリッドな老後戦略が重要となります。

6. 著者からひとこと:上手く制度を活用して物価高を乗り切ろう

本記事ではシニア世代の公的なお金について紹介してきました。

現在ある制度や新たな制度についても確認しておく必要がありますので、普段から少しずつでも情報収集をしておくようにしましょう。

特に今回紹介したものについては、申請が必要なものですので申請漏れのないように気を付けましょう。

その上で老後生活の基盤となる年金、今回紹介していない地方自治体独自の制度なども活用することで物価上昇が続いていく今、少しでもゆとりある暮らしができるように上手く制度を活用していきましょう。

7. よくある質問(FAQ)

7.1 Q. 退職後、失業手当をもらっている間は、配偶者の社会保険の扶養に入れますか?

A. 失業手当(基本手当)の「日額」によります。失業手当は非課税のため所得税の計算には入りませんが、健康保険の扶養審査では「収入」として厳格にカウントされます。60歳未満なら日額3612円(年収換算130万円未満)、60歳以上なら日額5000円(年収換算180万円未満)を超えている場合、手当を受給している期間中は配偶者の扶養に入れず、自分で国民健康保険に加入して保険料を支払う必要があります。

7.2 Q. 役所から給付金の案内が何も来ないのですが、対象外ということですか?

A. そうとは限りません。年金生活者支援給付金のように親切にハガキが来るものもありますが、加給年金、高年齢雇用継続給付、失業手当などは、すべて「自己申告(申請主義)」です。条件を満たしていても役所から案内は来ません。自分で年金事務所やハローワークに出向き、「自分は対象になりますか?」と手続きのアクションを起こす必要があります。

7.3 Q. 特別支給の老齢厚生年金と失業手当、どちらをもらった方が得ですか?

A. 個別の「年金額」と「失業手当の日額・給付日数」を比較計算しないと正解は出ません。現役時代の給与が高く失業手当の日額が高い人はハローワークで手続きをした方が得になり、逆に給与が低めで年金加入歴が長い人は、失業手当を受けずに年金をもらい続けた方がトータルの受取額が多くなる場合があります。退職前に最寄りの年金事務所で年金見込額を出し、ハローワークの失業手当計算ツール等でシミュレーションするといいでしょう。

8. 40代・50代に多い「何をどう比べればいいのか分からない」への不安。ファイナンシャルアドバイザー・筒井亮鳳が伝えたいこと

日頃のご相談では、加入している保険の内容をご自身で説明できない、という方に数多くお会いします。勧められるままに入り、そのまま何年も経っているケースです。

8.1 40代・50代に多いお悩み相談は「内容を知らないまま払い続けている」

保険は、加入した時期の事情で決まることが多いものです。付き合いで入ったもの、就職時に勧められたもの。内容を確認しないまま保険料だけが引き落とされ続け、必要な保障が入っているのかも分からなくなります。次のような声を耳にします。

40代(ご相談者)
正直なところ、保険の内容はまったく分からないまま、付き合いで入ったものがそのままになっています。保険料が下がって保障もよくなるのであれば見直したいのですが、何をどう比べればいいのかが分かりません。

見直すかどうかを決める前に、まず今の中身を知る。順番はここからです。

8.2 【ファイナンシャルアドバイザー・筒井亮鳳が回答】加入中の保険の内容を把握するための3つの解決策

筒井 亮鳳
保険の見直しと一概に言ってもいくつかの種類があります。保険料をなるべく安くしたいのか、掛け捨てではなく貯蓄型がいいのか、保険の内容を今よりも最新のものに変更したいのか様々です。特に最近では一生涯保険料が変わらないタイプもあるので、自分自身の保険が更新型で保険料が変わるタイプなのか確認してみてもいいかもしれません。「何をどう比べればいいのか分からない」と迷う前に、まずは保障の内容と期間を確認し、保障と積立の機能を分けて考え、公的制度でまかなえる範囲と照らし合わせることが、無理のない保険の見直しの第一歩になります。

把握の作業は、保険証券を集めるところから始めます。ご相談のなかでは、次の三つの順序でお話しすることが多くあります。

8.3 ポイント1:保障の内容と期間を確認する

一つ目は、「保障の内容と期間を確認する」ことです。何に対して、いくら支払われるのか。いつまで続く契約なのか。終身なのか更新型なのかによって、将来の保険料は大きく変わります。

8.4 ポイント2:保障と積立を分けて考える

二つ目は、「保障と積立を分けて考える」ことです。一つの契約に保障と貯蓄の機能が混ざっていると、どちらの目的で払っているのかが見えにくくなります。分けて捉えると、必要な部分と見直せる部分がはっきりします。

8.5 ポイント3:公的制度でまかなえる範囲と照らす

三つ目は、「公的制度でまかなえる範囲と照らす」ことです。医療費には自己負担の上限を定める制度があります。公的な部分を踏まえたうえで、民間の保障をどこまで持つかを決めると、保険料の適正な水準が見えてきます。

なお、公的な給付や制度の多くは申請しなければ受け取れず、要件も個別に異なります。対象になるかどうかは、加入している健康保険組合やお住まいの自治体にご確認ください。保険の解約・減額は健康状態によっては元の条件に戻せない場合があり、解約返戻金が払込額を下回ることもあります。

9. まとめにかえて

60歳・65歳以上が対象となる公的給付金は、加給年金や老齢年金生活者支援給付金、雇用保険関連の3つの手当、医療・介護の軽減制度と多岐にわたります。共通するのは、そのほとんどが「申請主義」であり、条件を満たしていても自分で手続きをしなければ受け取れないという点です。

こうした公的な制度でどこまでまかなえるかが分かると、民間の保険にどこまで頼るべきかも見えてきます。加入中の保険は、保障の内容と期間を確認し、保障と積立を分けて捉え、公的制度でまかなえる範囲と照らし合わせる。この順番で整理すれば、必要な保障を残しながら無理のない見直しにつなげられます。

参考資料

筒井 亮鳳