3. 【FPの視点】年金だけで暮らす世帯は4割を超える
赤字が続くという話の前に、そもそも収入がどれくらい年金に偏っているのかを見ておきます。
3.1 高齢者世帯の総所得の61.3%が公的年金・恩給
厚生労働省の2025年国民生活基礎調査によると、高齢者世帯の平均的な所得構成は、公的年金・恩給が61.3%、稼働所得が25.9%、財産所得が5.8%でした。
ただしこれは全体の平均です。公的年金・恩給を受給している世帯に絞ると、見え方が変わります。
3.2 収入のすべてが年金という世帯が41.3%
総所得に占める公的年金・恩給の割合別に世帯構成を見ると、100%の世帯が41.3%を占めます。以下、80%から100%未満が17.1%、60%から80%未満が14.1%、40%から60%未満が13.6%、20%から40%未満が9.7%、20%未満が4.2%です。
年金受給世帯の4割以上が、公的年金だけで生活していることになります。80%以上まで広げると58.4%で、6割近くが年金に大きく依存している形です。
先に見た赤字は、この構造の上に生じています。収入を増やす余地が小さいぶん、支出と貯蓄の取り崩しで調整するほかない世帯が相当数あるということです。
4. 【落とし穴】平均額をそのまま自分に当てはめない
ここまで平均値を並べてきましたが、扱い方には注意が必要です。
4.1 年金額の個人差は大きい
日本年金機構によると、2026年度の年金額の例は国民年金の老齢基礎年金が月7万608円、厚生年金が夫婦2人分で月23万7279円です。
ただし厚生年金は加入期間と報酬によって決まるため、個人差が大きくなります。国民年金も40年間の納付で満額に届く仕組みなので、未納や免除の期間があれば減ります。
なお昭和31年4月1日以前に生まれた方の老齢基礎年金の満額は、月7万408円です。生年月日によって金額が分かれる点も押さえておきたいところです。
4.2 貯蓄の平均と中央値も開きがある
貯蓄額についても、平均値だけを見ると実態から離れることがあります。
この点については、LIMOの記事「【全世代(20~70歳代)比較】貯蓄額の平均・中央値はいくら?単身・二人以上世帯で比較すると見えた「お金がある人・ない人の差」」から要点を引用します。
貯蓄額の統計データを調べると「平均値」と「中央値」の金額に大きな開きがあり、戸惑う方も少なくありません。大切なのは、一部の富裕層に引き上げられた平均値に惑わされず、現実の実態を正しく把握した上で自分に合った貯蓄ペースを作ることです。
出所:【全世代(20~70歳代)比較】貯蓄額の平均・中央値はいくら?単身・二人以上世帯で比較すると見えた「お金がある人・ない人の差」
5. 【対応策】年代ごとに金額を置き換えて考える
最後に、数字の使い方を整理しておきます。
5.1 1つの金額で30年分を計算しない
65歳から30年間を1つの支出額で計算すると、実態からずれます。60歳代後半の34万1397円をそのまま75歳以上に当てはめれば多すぎますし、逆に28万23円で通せば60歳代後半が足りなくなります。
年代ごとに違う金額を置いて積み上げるほうが、必要額の見通しは立てやすくなります。
5.2 まず自分の年金見込み額を確かめる
支出の側を年代で分けたら、次は収入の側です。ねんきんネットやねんきん定期便で、ご自身の見込み額を確認してみてください。
平均との差が分かれば、赤字がいくらになるかも具体的に出せます。判断に迷う場合は、年金事務所やファイナンシャルプランナーに具体的な条件を伝えて相談してみてください。
6. まとめにかえて
65歳以上の無職世帯の家計収支は、夫婦世帯で月4万2434円、単身世帯で月2万9980円の赤字でした。いずれも実収入より支出が上回っています。
年齢で3つに分けると、支出は60歳代後半の34万1397円から75歳以上の28万23円まで下がり、その差は6万1374円です。一方で社会保障給付はどの年代も21万円前後で大きく変わりません。
公的年金を受給している世帯のうち、収入のすべてが年金という世帯は41.3%を占めます。平均額をそのまま当てはめず、ご自身の年金見込み額と年代ごとの支出で組み立て直してみてください。
参考資料
- 総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2025年(令和7年)平均結果の概要」
- 厚生労働省「2025(令和7)年 国民生活基礎調査の概況」
- 日本年金機構「令和8年4月分からの年金額等について」
- 日本年金機構「老齢年金ガイド 令和8年度版」
村岸 理美