高齢化に伴う認知症への関心がいっそう高まっています。お盆を終え、久しぶりに帰省してご家族と過ごした方も多いこの時期。ご家族が顔をそろえる機会だからこそ、「親の相続やお金の管理についてそろそろ考えなければ」と感じた方もいるのではないでしょうか。

椿 慧理
実際に、筆者が銀行員として働いていた頃も、お盆明けの時期は「そろそろ相続の準備をしておきたい」というご相談が増える傾向にありました。また、窓口で高齢のお客さまと接する中で、「通帳や印鑑の保管場所が分からなくなった」といったご相談を受けることも少なくありませんでした

認知症は決して特別な家庭だけの問題ではなく、誰の家族にも起こり得る身近な出来事です。本記事では、親が元気なうちから知っておきたい「2つの口座凍結」の注意点と、3つの事前対策について解説します。

ココがポイント
  • 認知症による口座凍結と、死亡時の口座凍結の違い
  • 親が亡くなった直後にATMでお金を引き出してはいけない理由
  • 上限150万円の払戻し制度と、生前にできる3つの具体的な対策

1. 認知症と「生前の口座凍結」65歳以上の約3人に1人が直面する課題?

厚生労働省の推計(2022年時点)によると、65歳以上の高齢者約3603万人のうち、認知症の人は約443万人、軽度認知障害(MCI:認知症の前段階とされる状態)の人は約559万人とされています。合わせると約1000万人に上り、65歳以上の約3人に1人が認知機能に関する何らかの症状を抱えている計算になります。

65歳以上の高齢者における認知症の現状(令和4年(2022年)時点の推計値)1/2

65歳以上の高齢者における認知症の現状(令和4年(2022年)時点の推計値)

出所:政府広報オンライン「知っておきたい認知症の基本」

認知症の進行により判断能力が低下すると、金融機関は預金者の大切な財産を保護する目的で口座を凍結することがあります。

筆者も銀行員時代、「通帳を紛失したので再発行してほしい」というお手続きを短期間に何度も繰り返すお客さまや、ご家族から認知症であるとお申し出があったケースで、口座凍結の対応をとった経験があります。

一度口座が凍結されると、原則として成年後見制度(認知症などで判断能力が不十分な方を法的に保護し支援する制度)を利用しなければ、お金を引き出すことが難しくなります。この制度は家庭裁判所を通じた手続きが必要となり、時間や費用がかかる点に注意が必要です。