2. 手続きが必要な「4つの例外」
マイナ保険証で原則不要となった今も、以下の4点は認定証の申請が必要になったり、窓口でいったん支払う必要が生じます。それぞれの内容を確認していきましょう。
2.1 1|住民税非課税世帯が入院時の食事代の減額を受ける場合
住民税非課税世帯の方が入院時の食事代(入院時食事療養費の標準負担額)の減額を受けるには、「限度額適用・標準負担額減額認定証」の申請が必要です。自己負担限度額の情報はマイナ保険証で自動的に共有されますが、食事代の減額はこの認定証がないと適用されません。
2.2 2|オンライン資格確認未対応の医療機関
医療機関側にオンライン資格確認システムが導入されていない場合、マイナ保険証を持っていても認定証提示が必要になります。訪問診療の一部や、小規模な診療所ではまだ未対応のケースが残っています。
2.3 3|90日を超える長期入院の追加減額
住民税非課税世帯の方で、申請月以前の12か月に90日を超える入院がある場合は、食事代の標準負担額がさらに下がります。この追加の減額を受けるには、入院日数を証明する書類を添えて加入医療保険に申請する必要があります。
2.4 4|国民健康保険料の滞納がある場合
国民健康保険料に滞納がある場合、認定証が交付されないことがあります。この場合は窓口でいったん支払い、後から高額療養費の支給申請をする流れになります。心当たりがあるときは、受診前に市区町村の窓口で相談しておくと安心です。
3. 高額療養費制度、令和8年8月改定の年間上限
令和8年8月から、高額療養費制度に年単位の上限額が新たに設けられました。医療費が長期化する方にとっては、実質的な負担軽減の効果があります。
3.1 所得区分ごとに設けられた年間上限
令和8年8月から、所得区分ごとに年単位の自己負担上限が新たに設けられました。住民税非課税に該当する区分では29万円または18万円、70歳未満の上位区分では最大168万円です。ここでいう年間は8月から翌年7月までを指し、上限を超えた分は加入医療保険に申請することで還付されます。
3.2 申請と還付の流れ
年間上限に該当する場合、加入医療保険から申請書が送付される、または本人が申請することで還付が受けられます。自動的に還付されるわけではないため、医療費が長期化している方は加入医療保険の案内を確認しておくと安心です。
高額療養費制度は毎年改定される可能性があります。加入医療保険の最新案内を確認したうえで、マイナ保険証の登録と例外4類型の理解を組み合わせておくと、突然の医療費でも慌てずに対応できます。
4. 【FPの視点】高額療養費制度を家計計画に組み込む
FP1級・CFP®の立場から、高額療養費制度を家計計画にどう組み込むかを整理していきます。制度を知っておくことで、医療保険や貯蓄の設計が変わってきます。
4.1 自己負担限度額を先に把握
70歳未満の一般所得区分の場合、1ヶ月の自己負担限度額は「8万100円+(総医療費−26万7000円)×1%」で計算されます。総医療費が100万円のケースでは自己負担限度額は約8万7000円で、実際に支払う額はこの水準に抑えられます。
70歳以上や住民税非課税世帯は、さらに低い区分が適用されます。加入医療保険の案内で自分の所得区分を確認しておくと、家計の医療費リスクが具体化します。
4.2 多数回該当で自己負担がさらに下がる
直近12ヶ月で高額療養費に3回以上該当した場合、4回目以降は自己負担限度額がさらに低い水準(多数回該当区分)に切り替わります。がん治療など長期の高額医療になった場合、この多数回該当が家計負担の軽減に大きく効いてきます。
5. 【落とし穴】マイナ保険証利用登録と限度額情報の確認
マイナ保険証によるオンライン資格確認は便利な制度ですが、いくつか見落としやすいポイントがあります。
5.1 マイナポータルで保険証利用登録を確認
マイナンバーカードを持っていても、保険証利用登録がされていないと使えません。マイナポータルにログインして、保険証利用登録が「登録済み」になっているかを確認しておく必要があります。
5.2 限度額情報の共有に同意しているかを確認
オンライン資格確認で医療機関に限度額情報を共有するには、初回受診時に「限度額情報の提供に同意」する必要があります。同意していないと、限度額情報が医療機関に伝わらず、通常の自己負担額を支払う流れになります。
6. 【対応策】マイナ保険証と加入医療保険の窓口を両輪で活用
高額療養費制度をもれなく活用するには、マイナ保険証の利用登録と、加入医療保険の窓口対応を組み合わせるのが実務的です。次の3ステップで整えていきましょう。
6.1 ステップ1|マイナ保険証の登録と同意設定
マイナポータルにログインして、保険証利用登録と限度額情報の共有同意を確認します。まだ登録していない場合は、マイナポータルまたは医療機関の顔認証付きカードリーダーで手続き可能です。
6.2 ステップ2|加入医療保険で所得区分と例外4類型を確認
加入医療保険(協会けんぽ・組合健保・国民健康保険・後期高齢者医療など)の窓口またはウェブサイトで、自分の所得区分と、年間上限・多数回該当の運用を確認します。書面で保管しておくと、いざというときの手続きがスムーズです。
6.3 ステップ3|長期医療の可能性がある場合はFP相談
がん・慢性疾患など長期医療の可能性がある方は、高額療養費制度と民間医療保険の組み合わせをFPと相談すると、家計の見通しが立てやすくなります。制度で軽減される部分と、貯蓄・保険で備える部分の切り分けが判断の出発点です。
7. まとめにかえて
限度額適用認定証は、マイナ保険証があれば原則不要となりました。ただし、入院時の食事代の減額・90日を超える長期入院・医療機関のオンライン資格確認未導入・国民健康保険料の滞納という4点は認定証の申請が必要です。
令和8年8月改定を含む制度は毎年見直される可能性があります。加入医療保険の最新案内を確認したうえで、マイナ保険証の登録と4つの例外の理解を組み合わせて、突然の医療費でも慌てず対応できる備えをしておくと安心です。
参考資料
- 厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
- 厚生労働省「高額療養費制度」
- 厚生労働省「マイナンバーカードの健康保険証利用について」
- デジタル庁「マイナポータル」
- 全国健康保険協会「限度額適用認定証」
村岸 理美

