「住民税非課税世帯」に該当すると、医療や介護の負担が軽くなったり、給付金の対象になったりと、家計へのメリットは小さくありません。
ところが、仕組みを正しく理解していないために「自分は年金があるから対象外だ」と思い込んで確認をやめてしまう人もいます。逆に「少しでも多く稼ごう」とパートの時間を増やした結果、ボーダーラインをわずかに超えて、かえって世帯全体の手取りが減ってしまうこともありえます。
本記事では、住民税非課税世帯で受けられる5つの優遇制度と、住民税が課されない条件、そして給与収入・年金収入それぞれのボーダーライン(目安)を確認していきます。
なお、住民税非課税世帯の優遇制度や収入基準に関する詳しい解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。
- 住民税非課税世帯になると、国民健康保険料・介護保険料の減額から高等教育の修学支援まで、5つの優遇制度が使える
- 非課税のボーダーラインは世帯人数と収入の種類で変わる。単身なら給与100万円・65歳以上の年金155万円が目安
- 遺族年金や障害年金は非課税所得のため、いくら受け取っていても判定の数字には含まれない
1. 【住民税非課税世帯】まず押さえたい5つの優遇制度
一定の所得水準を下回る世帯は「住民税非課税世帯」として扱われ、さまざまな公的支援の対象になる可能性があります。支援は給付金だけではありません。社会保険料の軽減や教育費の支援など、長期間にわたって使える制度も整備されています。
代表的な5つの制度は、「【住民税非課税世帯】給与・年金の収入基準《ボーダーラインはいくら?》知っておきたい5つの優遇制度」から要点を引用して確認してみます。
- ◆国民健康保険料(応益割)の減額:応益分保険料(均等割・平等割)の「7割・5割・2割」のいずれかを減額
- ◆介護保険料の減額:第1号被保険者(65歳以上)が対象。減額される金額は自治体ごとに異なる
- ◆国民年金保険料の免除・納付猶予:全額免除・一部免除・納付猶予のいずれか
- ◆保育料の無償化:0歳から2歳までの保育料が無償化され、0~5歳までの保育料が無料になる
- ◆高等教育の修学支援新制度:授業料・入学金の免除または減額、返還を要しない給付型奨学金により、大学、短期大学、高等専門学校、専門学校を無償化
出所:【住民税非課税世帯】給与・年金の収入基準《ボーダーラインはいくら?》知っておきたい5つの優遇制度
保険料の軽減は毎年の負担に、教育費の支援は数年単位の支出に効いてきます。一度の給付金よりも、こうした継続的な軽減のほうが家計へのインパクトが大きい場合もあります。
住民税非課税世帯を対象とした優遇措置の全体像についてはこちらの記事でくわしく解説しています。あわせてご参考ください。
「住民税非課税世帯」を対象とした「優遇措置」8選 《年金・給与》年収いくらで該当するのか境界線も見ておこう 年金155万・給与110万が分かれ目?
2. 【住民税非課税世帯】住民税の2層構造と、課税されない3つの条件
2.1 住民税は「均等割」と「所得割」の2つでできている
住民税は都道府県や市区町村に納める地方税で、個人に課される部分は次の2つで構成されています。
- 均等割:所得に関係なく一律に課税される部分
- 所得割:所得に応じて税額が決まる部分
出所:【住民税非課税世帯】給与・年金の収入基準《ボーダーラインはいくら?》知っておきたい5つの優遇制度
この2つがいずれも発生しない状態が「住民税非課税」です。そして世帯全員が住民税非課税である場合、その世帯が「住民税非課税世帯」に該当します。所得割だけが非課税になるケースもありますが、支援制度の対象になるかどうかは自治体ごとに異なるため、詳細は居住地の自治体に確認してください。
2.2 住民税が課されない3つの条件
課税されない条件についても、「【住民税非課税世帯】給与・年金の収入基準《ボーダーラインはいくら?》知っておきたい5つの優遇制度」から要点を引用して確認してみます。
- 生活保護を受給している
- 障害者、未成年者、寡婦(夫)、ひとり親で、前年所得が135万円以下
- 前年所得が自治体の定める基準額を下回る
出所:【住民税非課税世帯】給与・年金の収入基準《ボーダーラインはいくら?》知っておきたい5つの優遇制度
1と2は全国共通のルールです。一方、3の所得基準は自治体ごとに設定されているため、具体的な金額は住んでいる地域によって変わります。
3. 【住民税非課税世帯】給与100万円・年金155万円——収入のボーダーライン
ここでは兵庫県神戸市の例をもとに、非課税となる基準を確認します。
35万円×(本人+同一生計配偶者(※)+扶養親族数)+10万円+21万円
※21万円は、同一生計配偶者または扶養親族がいる場合のみ加算されます。
※同一生計配偶者とは、生計を一にし、前年の合計所得金額が48万円以下の配偶者を指します。
ここでいう所得とは、収入から各種所得控除を差し引いた後の金額です。この基準を実際の収入額に置き換えると、次のようになります。
3.1 単身世帯(合計所得金額45万円以下)
- 給与収入のみで収入金額が100万円以下
- 年金収入のみで収入金額が155万円以下(65歳以上)
- 年金収入のみで収入金額が105万円以下(65歳未満)
出所:【住民税非課税世帯】給与・年金の収入基準《ボーダーラインはいくら?》知っておきたい5つの優遇制度
3.2 同一生計配偶者か扶養家族が1名いる場合(合計所得金額101万円以下)
- 給与収入のみで収入金額が156万円以下の方
- 年金収入のみで収入金額が211万円以下の方(65歳以上)
- 年金収入のみで収入金額が171万3333円以下の方(65歳未満)
単身世帯であれば、給与収入のみなら年収100万円以下、65歳以上で年金収入のみなら155万円以下が一つの目安です。配偶者や扶養親族がいる世帯では、この非課税ラインが引き上げられます。65歳以上の夫婦世帯で年金収入のみの場合、年収211万円程度まで非課税となる可能性があります。
税負担の有無は世帯構成と収入の種類で変わります。平均や一般論ではなく、自分の世帯構成に当てはめて確認することが大切です。
3.3 【試算】扶養家族が1人増えると、非課税ラインはいくら上がる?
神戸市の計算式をもとに、単身世帯と扶養家族が1名いる世帯の差を計算してみます。あくまで神戸市の基準に基づく試算であり、自治体によって金額は異なります。
- 所得ベース:45万円 → 101万円(+56万円)
- 給与収入ベース:100万円 → 156万円(+56万円)
- 年金収入ベース(65歳以上):155万円 → 211万円(+56万円)
扶養家族が1人増えると、非課税ラインは所得ベース・給与ベース・65歳以上の年金ベースのいずれでも56万円、月あたりにすると約4万7000円上がる計算です。これは計算式の「35万円×人数」と「21万円の加算」が効いているためです。なお65歳未満の年金収入だけは+66万3333円と幅が異なり、公的年金等控除の差が表れています。世帯の人数が変わるライフイベント(子どもの就職、親との同居など)は、非課税ラインが動くタイミングでもあるということです。





