貯蓄の話になると、気になるのが平均額ではないでしょうか。二人以上の世帯の平均は2059万円、一方で貯蓄保有世帯の中央値は1264万円。総務省統計局が2026年5月19日に公表した家計調査(貯蓄・負債編)2025年平均結果の数字です。2つの差は795万円あります。

平均の2059万円を見て「うちはそんなにない」と感じた方も少なくないと思います。実際、平均を下回る世帯は66.1%と、およそ3分の2を占めていました。

平均と中央値の差は、世帯主が65歳以上の世帯でも787万円でした。65歳以上の平均は2564万円で、二人以上の世帯全体より505万円多いにもかかわらず、平均と中央値の開きはほとんど動いていません。

なぜ差が縮まらないのでしょうか。今回は貯蓄額や老後の毎月の家計収支を詳しくみていきます。

1. 【みんなの貯蓄】二人以上の世帯は平均2059万円と中央値1264万円で「差795万円」

家計調査(貯蓄・負債編)でいう貯蓄現在高とは、預貯金や生命保険、有価証券などを合わせた額です。2025年平均で、二人以上の世帯の1世帯当たり貯蓄現在高は2059万円でした。これは貯蓄現在高がゼロの世帯も含めた平均値です。

一方、貯蓄保有世帯の中央値は1264万円でした。中央値とは、世帯を貯蓄の少ない順に並べたとき、ちょうど真ん中に位置する世帯の額を指します。平均2059万円と中央値1264万円の差は795万円になります。

2つの数字がこれだけ離れるのは、貯蓄の分布が上に偏っているためです。貯蓄が非常に多い一部の世帯が平均を引き上げる一方、中央値はその影響を受けません。同じ調査では、貯蓄現在高が平均値の2059万円を下回る世帯が66.1%と、およそ3分の2を占めていました。前年は67.0%です。

働いている世帯だけを取り出すと、額はもう少し身近になります。二人以上の世帯のうち勤労者世帯では、平均が1717万円、貯蓄保有世帯の中央値が1015万円でした。こちらの差は702万円です。世帯の種類を変えても、平均と中央値のあいだには700万円台の開きが残ることになります。

つまり、平均額だけを見ていると、自分の位置を実際より下に感じてしまいます。中央値1264万円と平均2059万円は、必ずセットで見る必要があります。多くの世帯の実感に近いのは、中央値ではないでしょうか。

2. 貯蓄額別の世帯の割合と、それより多い世帯は何%いるか

家計調査は、貯蓄現在高を19階級に分けて世帯の分布を公表しています。第8-30表の実数を上から積み上げると、自分の貯蓄額が上からどのあたりかが分かります。

1000万円の場合、それより多い世帯は55.3%です。1000万円という区切りに届いても、まだ半分より下ということになります。

上半分に入るのは1200万円からで、ここで上に49.5%となります。平均の2059万円までくると上に34.8%、3000万円で22.6%、4000万円以上は15.2%でした。中央値の1264万円は、この並びの中で1200万円台の階級に位置します。

階級ごとの世帯数でみると、いちばん多いのは4000万円以上で84万9465世帯、次いで100万円未満の56万5946世帯でした。総数は560万1073世帯です。真ん中あたりの階級はどれも20万世帯前後で、両端のほうが厚いかたちになっています。

平均2059万円と中央値1264万円が795万円も離れるのは、この分布のかたちがそのまま表れたものです。

図1 貯蓄額別の世帯の割合と、それより多い世帯が何%いるか(二人以上の世帯・2025年)1/2

図1 貯蓄額別の世帯の割合と、それより多い世帯が何%いるか(二人以上の世帯・2025年)

出所:総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)2025年(令和7年)平均結果」第8-30表をもとに作成

図1は、19の階級ごとの世帯割合を棒で、その額より多い世帯の割合を折れ線で並べたものです。

折れ線が50%を横切るのが1200万円のところで、ここが上半分と下半分の境目にあたります。中央値の1264万円は、その少し右にあります。棒のほうは右端の4000万円以上が突き出ており、左端の100万円未満がそれに次ぐ高さになっています。

平均と中央値のどちらが正しい、という話ではありません。平均は世帯全体が持っている貯蓄の総量を世帯数で割った数字で、中央値は順番に並べたときの真ん中の世帯の数字です。見ているものが違います。

自分の位置を知りたいときは中央値と分布をみるといいでしょう。

3. 【世帯主が65歳以上の貯蓄額】平均2564万円と中央値1777万円で差787万円

基本的には年齢が上がれば貯蓄は増える傾向にあります。

世帯主が65歳以上の世帯でみると、平均は2564万円、貯蓄保有世帯の中央値は1777万円でした。二人以上の世帯全体と比べると、平均は505万円、中央値は513万円多くなっています。

ところが、平均と中央値の差は787万円です。全体の795万円と比べて、8万円しか縮まっていません。貯蓄が500万円ほど積み上がっても、平均と中央値の開きはほぼそのまま残るということです。

この年代の分布もみておきます。世帯主が65歳以上の世帯では、貯蓄現在高が2500万円以上の世帯が36.3%と約3分の1を占めます。一方で、300万円未満の世帯も14.9%ありました。いちばん上の4000万円以上の階級には21.1%が入っています。

65歳未満と比べると向きがはっきりします。世帯主が65歳未満の世帯では、2500万円以上が21.4%、300万円未満が24.5%です。65歳以上では上の階級のほうが厚く、65歳未満では下の階級のほうが厚い、という逆の形になっています。

年齢とともに増えるのは貯蓄額そのものであって、世帯間のばらつきではありません。平均2564万円と中央値1777万円を並べて初めて、その姿が見えてきます。

図2 平均と貯蓄保有世帯の中央値の差(二人以上の世帯・世帯主が65歳以上・勤労者世帯/2025年)2/2

図2 平均と貯蓄保有世帯の中央値の差(二人以上の世帯・世帯主が65歳以上・勤労者世帯/2025年)

出所:総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)2025年(令和7年)平均結果」をもとに作成

図2は、3つの区分について平均と中央値を並べ、その差を帯の長さで示したものです。3本の帯の長さがほとんど変わらないことが読み取れます。平均の位置は右にずれていくのに、帯の長さは動きません。中央値のほうも1015万円、1264万円、1777万円と素直に上がっていきます。

4. 【65歳以上の世帯】その貯蓄額で、毎月いくら足りないのか

貯蓄額だけを見ていても、多いのか少ないのかは決まりません。平均2059万円も中央値1264万円も、その額で暮らしが成り立つかどうかまでは答えてくれないためです。同じ家計調査の家計収支編で、老後の毎月の収支を確かめます。

65歳以上の夫婦のみの無職世帯(夫婦高齢者無職世帯)の2025年平均をみると、実収入は月25万4395円、消費支出は月26万3979円でした。税や社会保険料を差し引いた手取りにあたる可処分所得と消費支出を比べると、毎月4万2434円の不足となっています。

65歳以上の単身無職世帯(高齢単身無職世帯)では、実収入が月13万1456円、消費支出が月14万8445円で、毎月2万9980円の不足です。

この不足分を貯蓄で埋めると考えると、年数のイメージがつきます。夫婦高齢者無職世帯の不足4万2434円を12倍すると年50万9208円です。世帯主が65歳以上の世帯の中央値1777万円をこの額で割ると約35年分、平均2564万円なら約50年分になります。

もちろん、不足額がこの先ずっと同じであるとは限りません。物価も医療費も、世帯のかたちなども変わりゆくものです。それでも、貯蓄額を「何年分か」に置き換えてみると、平均2564万円と中央値1777万円の差が、暮らしの上でどれくらいの重さを持つのかが見えてきます。

5. 元証券会社社員の執筆者コメント

今回いちばん意外だったのは、平均と中央値の差がどの区分でもほとんど変わらなかったことです。

二人以上の世帯全体で795万円、世帯主が65歳以上で787万円、勤労者世帯で702万円。中央値も1015万円、1264万円、1777万円と区分ごとに動いているのに、平均との開きだけは動きませんでした。どの世帯であってもそれだけの世帯差がみられるのです。

自分の位置を確かめるなら、平均と比べるより中央値や金額帯別などと見比べるほうが分かりやすいと思います。平均のニュースは貯蓄以外でもあるものですが、その実態を詳しく見ることが大切でしょう。

老後資金を考える上では、先ほど見たように老後の生活費の不足額と、それが何年分かを計算すると、「老後の生活費だけでいくら貯蓄が必要か」が具体的にわかります。それに生活費の補填以外の旅行やレジャー、車や家電の買い替え、リフォーム、税金の支払い、病気や介護費用…などを考えることで目標となる老後資金額を定めることができます。

貯蓄額を知ることは、自分の現在地を知り、また目標金額を考える参考にもなります。その後大切なのが、「何で、毎月もしくは毎年いくら貯めていくか」を考えること。こちらに関してもしっかりと情報収集をした上で、メリットデメリットを洗い出し、自分がとれる選択をしていくことになります。

なかには資産運用を取り入れることで、リスクを抱えることもあります。一方で物価が上がる中では、何もしないこともリスクになります。資産形成の正解はないものですが、わが家の最適解を考えて見てくださいね。

参考資料

宮野 茉莉子